津奇術グループ20周年によせて 講師 瀬島 順一郎

 今年から伊勢神宮は20年ごとの式年遷宮の準備に入っています。なんと8年かけて遷宮の準備をするそうです。それまでに山口祭からはじまり今年は7年前になりますので4月には御木曳始式がありますが、遷宮まで30もの儀式があるそうです。1300年も続いている神宮最大の神事だそうですが、何故そんなに手間と時間をかけて正宮を遷すのでしょうか。それはいつまでも新しさを保つという意味があるようです。20年というのは白木が美しく見えるぎりぎりの年月だそうです。そして宮を建てる技術と儀式を確実に伝承していくための20年ということです。1300年というものまったく変わることなく続いている式年遷宮という儀式が伝統を刻み、同時に伝承をつくるという知恵に、思わず私は頭を垂れました。今の日本は改革やイノベーションといった変えることばかりを考えているように思えてなりません。しかし、変えてはならない本質というのはあるのではないでしょうか。変えないことに意味があるということをこの式年遷宮が教えてくれているのではないでしょうか。
 このように考えると20年続いたクラブというものはすでに技術が伝承されていなければならないということになりますが、講師の私より若い人があまりいないということは問題です。しかし、多くの習い事では20年やると何とか人に教えることができるようになるものです。そういう意味では何名か講師ができる人が育ってきたことは成果でしょう。思い返しますと私も学生時代から考えますと20年マジックをやってきて津グループで教えるようになったのです。最初はどうなるかと思っていましたが、教えることは学ぶことですから勉強になりました。発表会も年々充実してきましたがこれも20年間の蓄積というものでしょう。津奇術グループは三重県ではもっともレベルの高いクラブであろうと思います。三重県ばかりではなく全国的にも高いレベルにあります。クロースアップができる会員がこんなに多くいるクラブはほとんどありません。会員の皆さんは自信を持ってください。私は恩師の風呂田政利師から多くのことを学びましたが、その伝統は石田天海師から受け継がれているものですからわれわれは2代のすばらしいマジシャンの流れを受けていることを自覚しなければなりません。伝承というものは完璧に同じものを受け継ぐだけではなく、その間に創意工夫が生まれるということがすばらしいことなのです。
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