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必履修科目不足問題
履修科目不足問題が大きな社会問題になっているが、残念ながら現場のナマの声が反映されていないように思える。

この問題で書くには次の条件が必要である。
(1) カリキュラム(教育課程)編成に携わったことがある。
(2) いわゆる「進学校」に在籍し進学指導の経験がある。ここで進学指導とは教科書をはるかに超えた内容を指導することなどをいう。

・・現職の高校教師で上の条件を満たす人は意外に少ない。
まずカリキュラムは非常に複雑で、自分の教科・科目についてはわかるが全教科・科目について詳しい人は少ない。

また普通高校では殆どの生徒が進学するが、はっきり云って殆どの生徒が全国偏差値が50以下の大学などへ進学するような高校では、履修科目問題について深刻な問題はない。おおむね、偏差値55以上の大学などへ進学する生徒が多い高校をここでは「進学校」ということにする。こういう学校での経験がないと今回の問題について問題点を指摘することは難しい。

さらに、そういう現役教師は忙しくてネットなど見ることは出来ないだろうし、いわんや意見を書き込むなどということをしないだろう。実際現場(あるいは経験者)からの意見表明は多くはない。

現場で努力している多くの教師たちが誤解されたり、何か悪いことをしているように騒がれることに対し、私は弁護しておきたいと思う。

もとより現場を離れて数年たっていて状況が変わっているかも知れない。
また、現職の教師の気持ちを代弁できるかどうか自信はない。

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現在の履修科目詐称問題がよいわけはない。
しかし実情を知らずに、「違法だ」ということだけで断罪するのは現場の教師にはきつ過ぎると思う。
【1】学力の多様化に対応できないカリキュラム 
高校に入学してくる生徒の学力(厳密に定義することは困難。ここではいわゆる「学力」としておく)の差は非常に大きく、たぶん年々拡大していると思われる。
中学校程度は難なく習得し余裕で入ってくる生徒から、それこそ掛け算の九九が怪しいとか、アルファベットが満足にかけないとかいうレベルまで、非常に幅広い。

ここで「教科」と「科目」という言葉を使うが、教科というのは国語、数学、理科・・などで、たとえば理科には生物・化学・物理・地学などの「科目」がある・・という風になっている。

文部科学省は高校生にどの教科・科目をどの学年で、何時間をめどに教えるべきかの指針を作っている。
これが「学習指導要領」でこれに基づいて各学校で具体的な計画を立てるが、これを普通「カリキュラム=教育課程」とよんでいる。

今問題になっているのは各校のカリキュラムが学習指導要領に適合していないケース、つまり誤魔化していたケースがあったということだ。

直接のきっかけは世界史という科目が必履修になっているのに、履修させず別の科目を標準時間数(単位)より多めに学習させていたことが発覚したことである。
具体的な「手口」は、一例を挙げると本来「世界史2単位+日本史2単位」であるべきなのを、「日本史4単位」の授業をして世界史2単位+日本史2単位履修したと報告していた、というのである。
これは他の教科(情報処理など)でもあったようだ。

もちろん基本的には規則に違反していたことが悪いに決まっているが、もっと根本的には多様な学力の生徒がいる普通科高校に単一のカリキュラムを当てはめることに無理がある、ということである。

少し話がそれるが、授業時間数について考えよう。
【2】細切れの単位
今回問題になった「世界史」は2種類あって「世界史A」は2単位、「世界史B」は4単位である。
ここで問題になるのは2単位の世界史Aである。

「1単位」というのは年間を通じて週1時間(実際は50分)授業を受けて与えられる。
一年は52週だが、夏休み6週、冬休み2週、定期テスト年5〜6回で大体5週、そのほか休日、定期テスト、模擬(実力)テスト、その他学校行事などで35週を確保することは非常に難しい。
今年度月曜日について調べてみたが25間(コマ)しかなかった。
2単位だから(標準70に対し)60時間取れれば上等だろう。
私は2単位もので2ヶ月間全く授業がなかったことがある。

こういう「2単位」ものでは荒削りの授業しか出来ない。古代から現代まで満遍なく学習することは殆ど不可能で、17世紀で終わりということにもなりかねない。

そこで日本史2単位と世界史2単位を「誤魔化して」世界史4単位または日本史4単位とまとめれば効果的な授業が出来る。
私の実感では2単位と4単位とではまるで違う。

要するに「浅く、広く」でよい場合は文科省の指導通りでかまわないが、入試には役立たない。

もうひとつ大事なことは、週休二日になって週時間数が6×5=30時間であること、この中にはロング・HRが1時間含まれ、実質29時間、その上教科・科目がやたらと多いのである。

各教科と必履修単位は次の通り。必履修は3ヵ年の合計。
国語(2〜4単位)
社会(6単位以上)・・今は、地理歴史と公民に分かれている。
数学(2〜3単位)
理科(4〜5単位)
英語(2〜3単位)
保健体育(10単位)
芸術(2単位)
家庭(2〜4単位)
情報(2単位)

必履修単位は意外に少ないのである。
それでも合計すると30時間になり、29×3=87時間の残りは55時間(単位)になる。

しかし実際は、たとえば国語を例に取ると、必修のほかに現代文(4)、古典(4)はどうしても必要で、しかもほぼ3学年にわたる。
必履修の他に、少なく見積もっても15時間は必要である。

数学も数学T(3)では済まず、少なくとも4単位は必要で、文系で数学Uまで入れるとプラス5時間、理系になるとさらに少なくとも5時間は要る。

英語が2時間で済むわけはなく、プラス15時間は要求になるだろう。

これだけですでに35時間になり、残りは20時間しかない。
カリキュラム編成はきわめて困難なのである。(続く)