ニホンオオカミ外伝
〜絶滅動物と男のロマン〜


その日もいつもどおりに研究室に行ったのだが、

なにやらソワソワした雰囲気がそこには溢れていた。

N県の山奥から帰還したS君が何かを持ち帰ってきたらしい。

黒い飯盒のなかにその物体は入っているが

やたら厳重に閉めてある。

E.River:「中身は?」

S君:「たぶん、オオカミ。あんなとこに野犬はおらんからなあ。」

えっ、ニホンオオカミ!?

もう絶滅したんじゃないの?

これって大発見!!

頭の中を色々な考えがよぎる

が、しかし

鼻がおかしくなるほど臭い

重度の腐乱死体からアゴの骨だけほじくりだしてきた

と聞いた瞬間

"そんなもん入れた飯盒でまた飯を炊くのか?"

これだけが脳裏を埋め尽くし

ニホンオオカミのことは少しどうでもよくなっているうちに

パンドラの箱(飯盒)の開封作業に移った。

 

その日は運良く(?)鼻が詰まっていたので開封前は

そんなに気になっていなかったが

S君はだいぶ匂っているようだ・・・

いよいよ開封

確かに匂う

ん、かなり臭い

いや、どんどん臭くなってくる

なんじゃこりゃ〜

ひっ、ひいいぃ〜臭い〜

ザリガニが死んで腐った時以上の悪臭に

半分泣きそうになりながら取り出した

物体がこれ

犬歯のアップ

犬にしては牙がデカイような気がする。

どっかのサイトにあった

ニホンオオカミの骨格標本のアゴもこんな感じだ!!

あの死体も犬とはまったく別物だった。

見れば見るほどオオカミっぽい(・∀・)

 

なんか、こういうモノには少なからず

男の浪漫を感じてしまいますなあ。

確実に、今、ここの空間では

ニホンオオカミフィーバー

が起こっている。

ミンナ狂ってるよ・・・

 

"これが本物だったら、これからはオオカミの研究しよう♪"

"一躍、有名になってしまうなあ。どうしよう♪"

"大発見や!大発見や〜!!"

・・・

 

数々の超楽観的男のロマン

一身に背負い

数日後、謎の骨は鑑定に出されることになる。

 

 

 エピローグ 

哺乳類に詳しい先生に見てもらうことになった

"ニホンオオカミの骨"(素人推定

 

どうですかっ!!と勇んで見せた

次の瞬間

"うん、オオカミにしてはサイズが小さいねえ"

速攻、否定的コメント

しかし、男のロマンはそんなことでは消えません。

つかさず

"こ、子オオカミですか?"

と反撃するも

"タヌキじゃないかなあ・・・"

オオカミ説はもはや相手にされてません。

しばしの歓談の後、

"そうですか、ありがとうございました。"と言いのこし

儚くも夢ついえたオオカミ派は、とぼとぼと帰ってゆくのでした。

残念、残念。


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