土 井   治 (どい おさむ)


尾鷲市の図書館では、土井治先生を講師にお迎えして、平成元年から平成6年12月まで、月に一度、「小説座談会」を開いておりました。平成7年の1月からは、「小説夜ばなし」と名前を変え、先生が引き続き講師をされました。毎回1つの作品ををテーマに座談会形式で先生に導かれながら、作品を深く掘り下げていくものでした。私は、小説座談会の頃、一度しかおじゃまできませんでしたが、先生は、ある時は、文学者として、またある時は、読者として、作品の細かな描写、作者の意図するところなどを客観的に分析し、理路整然とお話して下さいました。その内容といい、先生の持っておられる雰囲気といい、その格式の高さに圧倒されたことを覚えています。平成11年4月、先生が、お亡くなりになって、佐々木昭二氏が代表となり、会は、先生の精神を引き継ぐべく、存続されました。平成13年1月からは、開催時間を夜から昼に変更したため、「小説よもやま話」と名前を変え、今も小説を愛する方々の研鑚の場となっているとお聞きします。
「時代の風潮に同ぜず、流されず、一貫して独自の姿勢で作品を書き続けることが・・・如何にして可能であっただろうか?戦争勢力に与(くみ)することなく、品格を保ちながら、自らを持することがいかに困難であったか・・・。」など、土井 治先生の人物像は、堀田繁治氏が、著書「雑想雑考」の、「敬愛する郷里の大先輩」や「故土井治先生のこと」の中で、詳しく書いておられます。土井先生のことについてもっと知りたい方は、是非、堀田氏の本を読まれることをおすすめします。(kiho. 2002.4.16)
プロフィール
1915年1月尾鷲市に生まれる
1937年3月 旧制東京帝大英文科卒業
1938年4月より42年3月まで
独逸学協会中学校英語教員
1951年12月 尾鷲商工会議所会頭
1952年11月 尾鷲市教育委員長
1959年3月 同退職
1959年4月より共立女子大学家政学部講師・教授
1985年3月 同定年退職
元 南海日日新聞社取締役会長
1999年4月30日没 
著     書
ジョージ・エリオット「サイラス・マーナー」(岩波文庫)
アフラ・ベイン「オルノーコ・美しい浮気女」(岩波文庫)
ジョージ・ギッシング「三文文士」
(秀文インターナショナル)
その他短編の翻訳多数。
長編小説「季節風」(赤門書房)
随筆集「春夏秋冬」(南海日日新聞社)
短編集「青春」(近代文藝社)



   
   「三文文士」