■ 和楽題 ■





春之抄

一、初空 (はつそら / 元旦の大空)
二、紅梅 (こうばい / 紅色の花を咲かせる梅)
三、海市 (かいし / 蜃気楼に同じ)
四、淑気 (しゅくき / 新春の気)
五、清明 (せいめい / 万物清く陽気になる時期という意)
六、疾風 (はやて / はやく吹く風)
七、踏青 (とうせい / 野遊び)
八、夕桜 (ゆうざくら / 夕方に眺める桜)
九、春宵 (しゅんしょう / 春の宵)
十、朧月 (おぼろづき / 輪郭がはっきりせず仄かにかすんだ月)


夏之抄

十一、緑陰 (りょくいん / 木陰)
十二、入梅 (にゅうばい / 梅雨の季節になること)
十三、漣 (さざなみ / 小さな心の揺れや争いごとのたとえ)
十四、薫風 (くんぷう / 初夏、若葉の香りをただよわせて吹いてくる爽やかな南風)
十五、白雨 (しらさめ / 夕立のこと)
十六、夕轟 (ゆうとどろき / 恋情などが、夕暮れ時に心を騒がせること)
十七、星祭 (ほしまつり / 七夕に同じ)
十八、白昼夢 (はくちゅうむ / 目が覚めているときにおこる、夢のような現実性を帯びた空想)
十九、夕涼 (ゆうりょう / 夏、夕方の涼しくなったころ)
二十、宵宮 (よいみや / 本祭の前夜の祭り)


秋之抄

二十一、爽秋 (そうしゅう / さわやかで心地のよい風)
二十二、星月夜 (ほしづくよ / 星の光で、月夜のように明るいと感じる夜)
二十三、花薄 (はなすすき / 穂の出た薄)
二十四、明月 (めいげつ / 清く澄んだ月)
二十五、野分 (のわき / 秋から冬にかけて吹く強い風)
二十六、月白 (つきしろ / 月が出ようとするとき、空が白んで明るくなること)
二十七、狭霧 (さぎり / 霧に同じ)
二十八、白露 (はくろ / 光って白く見える露)
二十九、月影 (つきかげ / 月の光、または月の光で照らし出されたものの姿)
三十、 末枯 (うらがれ / 秋の末、草木の枝先や葉刃先が枯れ始めるさびしい様)


冬之抄

三十一、凩 (こがらし / 初冬に吹く強い風)
三十二、薄氷 (うすらい / 薄く張った氷、美しく脆いもの)
三十三、風花 (かざはな / 初冬の晴れた日に、わずかに舞う小雪)
三十四、氷輪 (ひょうりん / 冬空にかかる凍えるほどの月)
三十五、雪見 (ゆきみ / 雪の降るさまや、雪景色を眺め賞すること)
三十六、寒椿 (かんつばき / 寒中に咲くツバキ)
三十七、雪白 (せっぱく / 精神や行動が雪のように汚れがないこと)
三十八、垂氷 (たるひ / つららに同じ)
三十九、六花 (りっか / 雪の異称)
四十、冬銀河 (ふゆぎんが / 凍て付く冬の夜空に鏤められた、美しい星群)


花之抄

四十一、夢見草 (ゆめみぐさ / サクラの異称)
四十二、心の花 (こころのはな / 人の心の移ろいやすさや美しさをたとえた言葉)
四十三、花逍遥 (はなしょうよう / 花を見ながらのそぞろ歩き)
四十四、紫の縁 (むらさきのゆかり / ひとつの関わりから愛情がほかにもおよぶこと)
四十五、大和撫子 (やまとなでしこ / 奥ゆかしさのたとえ)
四十六、笹の露 (ささのつゆ / 酒の異称)
四十七、風樹 (ふうじゅ / 風に揺れる木)
四十八、蓮の露 (はすのつゆ / 清浄の象徴)
四十九、月下香 (げっかこう / 夜間に咲き、芳香を放つ白い花)
五十、帰り花 (かえりばな / 小春日和に誘われた花が、季節外れに咲くこと)


水之抄

五十一、水鏡 (みずかがみ / 万物を映す静かな水面)
五十二、蛍川 (ほたるかわ / 蛍がたくさん見られる川)
五十三、水簾 (すいれん / 簾に見立てた滝の水)
五十四、銀浦 (ぎんぽ / 輝く浦辺)
五十五、光露 (こうろ / 花火の異称)
五十六、心水 (しんすい / 生きた心)
五十七、縁の露 (ゆかりのつゆ / 縁のわずかなことのたとえ)
五十八、水天 (すいてん / 水平線のこと)
五十九、鏡花水月 (きょうかすいげつ / 目で見ることができず、手に取りにくいもの)
六十、落下流水 (らっかりゅうすい / 男女が互いに慕い合うことのたとえ)


宙之抄

六十一、朝影 (あさかげ / 恋にやせ細った姿のたとえ)
六十二、空悋気 (そらりんき / 根拠の無い嫉妬)
六十三、夕彩 (ゆうあや / 夕方の光の中で、ものが美しくみえること)
六十四、星影 (ほしかげ / 星の光、または星明りのこと)
六十五、天狼 (てんろう / シリウスの異称)
六十六、煌星 (きらぼし / 美しく輝く無数の星のこと)
六十七、月夕 (げっせき / 月が煌々と照っている夜のこと)
六十八、雨月 (うげつ / 実際に見ることの叶わぬもののたとえ)
六十九、月華 (げっか / 月の光、または月の光で明るいこと)
七十、空の雫 (そらのしずく / 涙)


幻之抄

七十一、黎明 (れいめい / ものごとの始まり)
七十二、悠久 (ゆうきゅう / はるかに長い時間)
七十三、玉響 (たまゆら / 暫しの間)
七十四、泡沫 (うたかた / 水に浮かぶ泡、はかなさの象徴)
七十五、星霜 (せいそう / 歳月のこと)
七十六、百夜 (ももよ / 多くの夜)
七十七、真澄鏡 (ますかがみ / くもりなく、よく澄んでいる鏡)
七十八、終夜 (よもすがら / 夜通しずっと)
七十九、浮橋 (うきはし / 現世とあの世との架け橋)
八十、永訣 (えいけつ / 永遠の別れ)


 

(以下、追加分)

 


彩之抄

八十一、杜若 (かきつばた / 赤みの強い紫。「かきつはた」は美人の形容に用いられる)
八十二、思ひの色 (おもいのいろ / 火色。「火」を「思ひ」にかけた、熱い情熱をたとえた色)
八十三、謂わぬ色 (いわぬいろ / 梔子で染めた色。「口無し」にかけた色名)
八十四、檸檬色 (れもんいろ / 鮮やかな緑みの黄色。レモンには「愛嬌のない女」という意味も)
八十五、月白 (げっぱく / 月の光の色)
八十六、時雨の色 (しぐれのいろ / 時雨に打たれて色づいた草木の葉の色)
八十七、緑青 (ろくしょう / くすんだ緑色。寺院の装飾や彫刻に用いられる)
八十八、勿忘草色 (わすれなぐさいろ / 浅い青色。美しい瞳の形容に使われる)
八十九、留紺 (とまりこん / 「これ以上、濃くならない」という意味の紺)
九十、漆黒の闇 (しっこくのやみ / 光のない真っ暗な闇)


奏之抄

九十一、竹露清響 (ちくろせいきょう / 夜露が竹の葉から落ちるときにかなでる澄んだ音)
九十二、妙音 (みょうおん / なんともいえない美しい音楽や声)
九十三、凍て哭き (いてなき / 樹の幹が霜割れを起こしてきしむ音)
九十四、神籟 (しんらい / 神の声、絶妙な音)
九十五、知音 (ちいん / かけがえのない無比の友)
九十六、眠耳 (ねぶりみみ / 睡眠中の耳が夢うつつに聞く音)
九十七、鼓翼 (こよく / 鳥のはばたき)
九十八、寂寂 (じゃくじゃく / 一切のものが動きを止め、音のしないさま)
九十九、和敬清寂 (わけいせいじゃく / 心を和(なご)して相手を敬い、澄んだ清らかな心で静寂を愉しむ心映えのこと)
壱百、無絃の琴 (むげんのきん / 心耳(しんに:心の耳)を澄ませて聞く音)