文学のなかの薔薇   俳句

詩や短歌、俳句にうたわれた薔薇をご紹介します。


高澤晶子
名は晶子魂の名は赤い薔薇



阿部みどり女
ばら愛すごとわが生涯愛すかな



日野草城
冬の日の薔薇なれや往き隣人    
薔薇の辺にわが病むやまひ軽からぬ
薔薇の前もの食むわれやけものめく
寝がへりて薔薇と別るるさびしけれ
薔薇の花溲瓶に映るうたてしや
薔薇既にわがひげおもて見馴れけむ
夢に入りてたわやめとなる薔薇の花
わがいのちわれに戻りて薔薇果てぬ
秋薔薇のひとつ開きて含羞める
薔薇の香ありけふのいのちを眠らしむ
夏の雲かなしき家に薔薇咲けり



中尾白雨

薔薇きよら美しき神ここに住めり
薔薇一輪鏡に在りし美き朝
身に希ふあくがれありて薔薇を挿す
薔薇うらゝ生活の憂ぞこゝに認ざり



加藤三七子
逢ふことのためらひすこし冬薔薇
冬薔薇に寄せたる戀の一首かな
薔薇枕つくる横顔見せゐたり
ももいろの薔薇を咲かせて墓標とす
堕天使のごとくに薔薇を擁く


中村苑子
わがいのちわれに戻りて薔薇果てぬ


木下夕爾
散りし薔薇を見てをり壺の全き薔薇
薔薇の前にゐて思ひをるさみしきこと
青空の青ふかく薔薇傷みけり
潮風に薔薇惜しみなく香を放つ
波をのべてゐて飛ぶとなし薔薇の虫
心たる日の薔薇さはにひらきけり
蘂深く薔薇のゆるせる雲の影