自閉症について


★自閉症については、「日本自閉症協会」のホームページや他の県支部のホームページに掲載されている解説がたくさんありますので、そちらもご参照願います。

★このページには、「日本自閉症協会」作成のパンフレット【自閉症の手引き<改訂第二版・平成28年2月1日改訂>:自閉症を知っていますか? 望むのはあなたの「心のバリアフリー」からの引用を掲載させて頂きます。このパンフレットがご必要でしたら、「三重県自閉症協会」役員もしくは事務局または「日本自閉症協会」までお申し込み下さい。


 


1.自閉症って何だろう

 自閉症のある人は自ら閉じこもっているのではありません。また、乳幼児期に適切な養育がなされなかったために、心を閉ざしてしまったというような状態でもありません。

 自閉症の原因は、まだ確定されていません。「親の養育態度が一次的な原因ではない」ことは明らかになってきました。

 現在のところ、「先天的に中枢神経系の働き(主として認知の機能)に問題があり、そのために情報伝達がスムーズにいかないことによる社会的・対人的な認知やコミュニケーション能力など広汎な領域における発達の偏りや遅れ」と考えられています。「いくつかの遺伝子の配列異常と、何らかの他の原因が複雑に絡み合って、中枢神経系の働きに障害が起きているのではないか」と考えられています。

 近年、自閉症の特徴の表れ方は多様であることがわかってきました。知的障害のない自閉症は「高機能自閉症」と呼ばれます。言葉の遅れがないタイプは、「アスペルガー症候群」と呼ばれます。表面に見られる行動特徴は多様でも根底には共通する認知特性があることから、これらを含めたグループは「広汎性発達障害(PDD)」と呼ばれてきました。最近の診断分類では、グループではなく全部を1つにまとめて「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)」と呼ぶことが提唱されています。 PDDまたはASD全体でおおよそ20〜40人に1人(約2.5〜5%)は存在する可能性が指摘されています。男女比は3対1前後です。注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)を伴っている場合もあります。

 自閉症のある人は、一生この特性と付き合っていかなければなりません。とはいえ適切な子育てや療育、適切な教育や周りの理解・支援あるいは自分自身の特性理解によって、状態が改善されていきます。たとえば、言葉がないお子さんでも、適切な関わりで何らかのコミュニケーション手段を獲得することはできます。


2.自閉症の特徴は

 自閉症のある人には次のような特徴が、さまざまな程度の組合せでみられます。ただし、ひとりの人がこのような特徴をすべて持っているとはかぎりません。一人ひとり違います。また、発達段階に応じて現れ方は違います。

【対人関係の困難さ】
 相手の気持ちに気づきにくい、周囲の人と共感的な関係を築くことが大変困難、集団行動をとれない、友だちの中に入りにくいこともあります。
 乳児期では、抱いても寄りそってこない、人見知りをしない。幼児期では、興味を共有しようとする指差しをしない、呼びかけに振り返らない、相手と視線が合わないなどの特徴に気づかれることがよくあります。

【コミュニケーションの困難さ】
 言葉だけでなく、身振りや表情などを含めたコミュニケーション全体にわたって困難さがみられます。話し言葉がほとんどない人もいます。言葉を正しく使えない、特異な言葉の使い方をする(例えば「オウム返し」)、自分の興味あることだけを一方的に話す、突然その場に関係ないことを話すなどの特徴がみられます。

【行動・動作の特徴】
 手をひらひらさせる、ひもを振る、上半身を前後にゆする、その場でくるくる回るような反復的な動作(感覚遊び)を繰り返すなどの特徴がよくみられます。

【活動や興味の範囲が狭い】
 ミニカーなどを横一列に並べる、水道の水を出しっぱなしにして水に触れる感覚に没頭するなど、活動が狭く独特なことに集中し、他のことや活動に興味や関心がなかなか広がりません。

【変化に対する不安や抵抗】
 物を置く位置、道順、手順、生活のスケジュールなどについて、決まったやり方にこだわり、いつもと違うことに対して強い不安や抵抗を示します。

【想像力が弱い】
 幼児期では、例えば「ままごと遊び」などの、見立てやごっこ遊びが苦手です。
 人の気持ちを察することや、その場の雰囲気を読むことも大変難しいのです。また、次に何か起きるか見通しが立てられないと不安になります。

【感覚の過敏さと鈍さ】
 触覚、味覚、痛覚、嗅覚などが極度に過敏な人や逆に鈍い人がいます。例えば、体に触れられることを嫌う(敏感)のに痛みには平気(鈍感)なことがあります。
 物の見え方にも独特な特徴があり、全体の中の一部分しか見えていない人もいます。
 聴覚が鋭敏で、ある特定の音を嫌がる人もいます。騒がしいところでは、話しかけてくる人の声を選択して聞き取ることが困難という人もいます。味覚が敏感であれば、極端な偏食になる場合もあります。

【アンバランスな能力】
 自閉症のある人の中には、記憶力など一部の機能が優れている人がいます。例えば、音楽、手芸、絵画、ジグソーパズル、神経衰弱ゲームなどに優れた能力を発揮する人もいます。


3.自閉症の診断

 専門医は、生育歴と発達の経過を聞き、行動を観察し、必要な諸検査をして、自閉症かどうかを診断します。

【「自閉症は、次の3つの行動的特徴で診断されます。】
 1)社会的相互交渉の質的な障害(対人関係の困難さ)
 2)コミュニケーション機能の質的な障害(コミュニケーションの困難さ)
 3)活動と興味の範囲の著しい限局(こだわりと興味の狭さ)

 言葉の遅れが目立たない人の場合は、学齢期を過ぎてから診断されることかあります。その場合も、幼児期や児童期の発達の経過を聞き、何回か診察を重ねてから診断します。

【もし自分は自閉症かなと思ったら】
 最近、相談機関に「自分は高機能自閉症かアスペルガー症候群ではないか」と相談に訪れる人が増えています。
 他人から、自分の言動がおかしい、対人関係がうまくいかない、と指摘されても、何かどのようにおかしいのか自分では理解できず、「どうして自分にはそのようなことがたびたび起こるのか」と悩んで相談に訪れた人にとって、診断と障害認知は大変意味のあることです。悩み続けてきたことが、実は障害ゆえであったとわかって、安堵感をもち、その後の家庭生活や就労に活かせたという人がたくさんいます。
 「自分から自閉症を取り除いたら、自分自身ではなくなってしまう」と、自閉症であることを誇りに思い、肯定的に堂々と生きる人さえいます。
 自分の特性を知ることで、得意な部分を伸ばし、苦手なことに関してコントロールするための工夫や練習ができるようになります。


4.まずは早めに相談・受診を

【お子さんの様子が気になったら】
 「イナイ、イナイ、バーに関心を示さない」「対人関係が気になる」
 「親がいなくても平気」「よく迷子になる」
 「なかなか寝つかない、すぐに目が覚める」
 「言葉が増えない」「言葉の発達の遅れ」
 「友だちと遊べない、遊ばない、関心がない」「集団行動から外れている」
 「同じ遊びを飽きすに延々と続けている」(こだわり、狭い興味)
 「しょっちゅう、走り回っている」「多動、周囲の状況がわかっていない」
 「呼び止めても止まらない」「返事をしない」「多動」「指示が通らない」・・・

 「何か変だ…」と感じたら、ひとりで悩まないで、医療機関、発達についての相談機関、発達障害に関する相談・療育センター、お住まいの地域の自閉症協会などに相談してみましょう。

【医師の診断を受けるとき】
 ひとりだけでなく、複数の家族で医師の説明を聞くことが大切です。できればおじいちゃん、おばあちゃんも一緒に聞くことで、家族の共通理解が得られやすくなります。疑問に思ったことは、遠慮なく医師に聞くようにしましょう。
 持参するもの:母子手帳、育児日記、聞きたいことをメモしたもの

【障害受容…正しい障害の理解と関わり】
 まず、その子どもの障害を理解し受け入れることから、療育が始まります。
 その際、今現れている問題だけをなくそうとするのではなく、その子どもの周囲の刺激に対する反応や認知、行動の特性をよく観察し理解することが療育の基本です。そして成長するスピードが周囲の人に比べてたとえ遅くても、適切な関わりで必ず成長し、少し変わった子であっても、その子らしい豊かな人間性をはぐくめることを、長期的な展望としてもっておきましょう。
 全国の自閉症協会には、自閉症のある子どもの子育てをしてきた先輩や、その「障害受容の過程」を経験し、前向きに子育てに励んでいる先輩の家族がいます。その話を聞いてみましょう。子どもの成長には適切な育児と教育が大切です。

【「家族」への継続的な支援を】
 特にこの時期、家族は子どもの行動に振り回され、「しつけがなってない」という冷たい視線を受けたり、将来への不安もあって、心身ともに疲れてしまいます。時には親の休養も必要です。
 社会資源(ショートステイ〈一時預かり〉など)、相談機関などの支援を利用しましょう。

【療育について】
 早期教育では、子どもが療育を受けるとともに、家族に対しても関わりの支援や悩みの相談が行われます。家族(特に親)は、共同療育者として専門の支援者たちと手を携えていくことが期待されます。

【ペアレント・トレーニング】
 家族支援のプログラムの一つにペアレント・トレーニングがあります。ペアレント・トレーニングは、親が子どもの行動や特性を理解し、上手な関わりができるように講義やロールプレイなどを使いながら楽しく学ぶことができます。


5.どのように育てたら

 一番困っているのはお子さん自身です。まず、お子さんがどんな「困難さ」を抱え、どんな「支援」が必要なのかを知ることが大切です。
 ステップ・バイ・ステップで細かく段階を踏んで、根気よく、丁寧に。

【「だめ」と叱らないで、「どう行動したらよいか」を具体的に教えます】
・自発的なコミュニケーション力を育てましょう
  自分から表現できる方法(絵、写真、実物、カードなど)を使って。
・ほめることで「その行動でよいのだ」と認め、やる気を出させましょう
  「座って食べてえらいね」とか。
・見通しが立つように環境を整えましょう
  出かけ先(保育園・幼稚園・小学校など)用のかばん・靴を見せるなど。
  日課表をはる。スケジュールの変更は早めに予告する。
・こだわりをうまく生活の中でいかすことを考えましょう
  水遊びのこだわりをいかして、食器洗い、風呂掃除などのお手伝いにつなげる。
  靴を揃えて家族にほめられている子、料理をして家族に感謝されている子、
  洗濯物をとりいれて、きっちりたたんで喜ばれている子。
・本人の興味や能力に合わせて運動や手遊びをうまく取り入れましょう
  山歩き、マラソン、ボール遊び、水泳、自転車、粘土遊び、折り紙など。
・人と付き合うときのルールを教えましょう
  例えば、人に話しかけるとき、いきなり自分の言いたいことを言ってしまうことが多いときは、「ちょっといいですか」と相手の了解をもらってから話し始めるように教えましょう。

【「困っている」と伝えられない子の感じ方や考え方を理解して】
・音が嫌なのかな?…苦手な感覚への配慮をしましょう
  その子の苦手な、音、におい、感触などを理解し、配慮しましょう。
・ボディイメージの育ちが幼いかも?
  例えば、入浴の時、からだを洗いながら身体の部位を教えてあげるのもいいでしょう。
・パニックや混乱は何のサイン?
  パニックや混乱には必ず原因があります。原因を考えて対処しましょう。
  例えば、どこかが痛い、体調が悪い、音に過敏になっている、本人の能力を超えた要求をされている、周りの関わり方がわかりにくい、などの理由が考えられます。

【生活習慣を身につけるには…あせらず、根気よく取り組んで】
 食事、衣服の着脱、排泄、睡眠などの生活習慣は、変えていくことができます。工夫しながら根気よく、あせらないで、一貫したやり方で働きかけましよう。

 困ったことがあったら、専門機関に相談しましょう。


6.幼稚園・保育所ては

 保育所や幼稚園は、子どもが初めて経験する集団生活の場です。大勢の子どもや先生と長時間ともに過ごす場は、刺激や変化が多いところです。
 自閉症のある子どもは、人に関心がないように見えますが、実は大変敏感で、周りの人に少しずつ接近しようとしています。

【集団に入るには】
 まず、保育者と子どもの一対一の関係をつけることから始めるのがよいでしょう。小集団に保育者とともに入って様子を見ながら大集団へ。集団に慣れるまで、保育者は「ベースキャンプ、安全基地」という存在として見守ってあげてください。
 手を添えて身辺自立(手洗い、排泄、着脱)をやっていき、他の子どもとの仲立ちになっていきましょう。

【就学にあたって】
 就学にあたっては、子どもの特性をよく知り、どのように育てたいのか、どのような教育の場を選択するのかを家庭でよく話し合いましょう。就学相談では、親の希望や心配をよく伝えましょう。実際に希望する学級や学校を見学して相談し、「体験入学」させることもよいでしょう。


7.学校での指導は

 「自閉症だからこうである」と決めつけないで、「その子の将来像を描いて、どう育てていくか」という視点が基本です。
 「自閉症のある子ども」といっても一人ひとりの個性は違います。まず、先生が子どもを受け入れることが大切です。保護者と協力して個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成します。担任の先生との話し合いの機会をたくさんもつことが大切です。

【実感がもてる学習を!】
 学校では、自閉症の特|生を配慮し、一人ひとりのニーズに応じた指導を行うことが大切です。コミュニケーションや認知などの1対1の課題学習、基礎的な教科学習、生活に役立つ学習、ルールやマナーを学ぶ学習など、スモールステップで自信がもてるような工夫が必要です。オープンクエスチョン(自由に答えさせるような質問)は苦手なことが多いので、選択肢を示してその中から選択させるなどの工夫をするとよいでしょう。

【分かりやすい環境を】
 学校では、自閉症の特徴を考え、子どもにわかりやすいように環境を整えることが大切です。例えば、次のようなことです。
 ・「この場所では何をするか」の提示(環境設定)
 ・1日のスケジュールの提示(時間、1日、1週間など)
 ・待ち時間の工夫(手持ち無沙汰な時間をなるべく作らないこと)
 ・興奮したときにその場を離れて気持ちを静める場所の設定
 ・「助けて」「わからない」「困っている」「手伝ってほしい」と言える手立て(コミュニケーションツールなど)

【言葉かけの工夫を】
 どのような行動を本人に要求しているかをわかりやすく伝えましょう。ちょっとした言葉かけの工夫で行動できるようになります。例えば、
 ・「みなさん」と呼びかけても、その中に自分が含まれていることがわかりません。「○○さん」と本人の名前を呼びかけてから、短く、穏やかに、具体的に伝えましょう。
 ・本人の視界に入っていることを確認し、自分への呼びかけであることをわかるようにします。
 ・「廊下を走らないで」⇒「廊下は歩きましょう」

【高機能自閉症やアスペルガー症候群の子どもへの理解を】
 高機能自閉症やアスペルガー症候群の児童生徒の特徴は、
 ・自分と他人との違いや自分に苦手なところがあることに悩んでいる。
 ・自分の能力を超えた高過ぎる目標を立てて頑張りすぎ、燃え尽きてしまう。
 ・冗談や比喩的表現などの「隠された意味」がわからない。
 ・そのため、いじめを受けることが多いが、抵抗できない。いじめられていることを他の人に伝えられない。
 ・場の雰囲気が読めず、周りの理解が得られない。
 ・休憩のとり方がわからない(休み時間にすることがわからすトラブルになる)。

 こういった特性のため、自信を失ったり、不登校になったりすることがあります。先生やクラスの子どもたちの「自閉症」への、正しい理解や支援の工夫が必要です。

【関係機関との連携を】
 学校内外での連携が重要です(教職員間、学校と家庭、専門家、療育機関、発達障害者支援センターなど)。
 その際、特別支援教育コーディネーターが重要な役割を果たします。

【「学校から社会へ」の移行期の支援を】
 高校、特別支援学校高等部を卒業したら、進学や就労などに関して、環境の大きな変化があります。できれば小学生の頃から本人の適性を考えて進路選択をすることが大切です。
 これまでに構築されてきた支援のあり方を、次の場所へ受け継ぐことが必要です。


8.思春期の人への支援

 思春期は大きく飛躍、成長する時期です。自閉症のある人の思春期は大変だといわれますが、思春期までの支援とその積み重ねによって、特に問題なく過ごす自閉症のある子どもも大勢います。
 思春期になると自閉症のある子どもも、自分のやりたいことや自分の気持ちを率直に表現するようになってきます。

【次のことを大切にしましょう】
・子ども扱いしない(生活年齢に応じた指導)
・自己主張への対応 ・ひとりで過ごせる時間も必要
・社会へ出ていくためのルールを再確認 ・性への対応
・家庭での役割を担うなど、あてにされ、感謝される経験を

【困ったときには、専門機関に相談しましょう】


9.大人になって…豊かな生活を

【いろいろなところで働き、暮らしています】
 就労している人、障害基礎年金とアルバイトで生活している人、グループホームや施設で暮らしている人、結婚している人もいます。また、会社、作業所などいろいろなところで仕事をしています。
 ただ、人との交流の困難さが残るので、「非常識」と思われたり、理解されにくいこともあります。上手に人と関われなかったり、自分の感覚や行動などにこだわり、生活場面が限られてしまうこともありますが、よき理解者の存在と環境が整えば安定して生活できるようになります。
 知的な遅れの有無に関わらす、実質的な生活上の困難さがあるのですから、生涯を通じて社会的支援が必要になります。

【充実した余暇を】
 余暇の豊かさは生活そのものの豊かさです。絵を描くこと、楽器の演奏、スポーツ(スキー、スケート、水泳、マラソン、スキューバダイビング、山歩きなど)、料理、生け花、カラオケ、刺しゅうなどを楽しんでいる人もいます。
 自分から楽しみを見つけることが難しい人も、本人と接している人(親、学校の先生、施設職員など)に協力してもらって、地域資源(デイサービス、ガイドヘルパーなど)を利用したりして、楽しみの「いとぐち」を見つけてほしいものです。


10.働く

 自閉症のある人にとっても、働くということは、とても大きな意味があります。働くことによって本人も成長し、人との関わり、地域とのつながりが生まれ、社会参加する意義を実感できるからです。
 「重度」といわれる人も環境を整えることでいきいきと働くことができます。
 また、繰り返す作業を嫌がらないことが多く、職場で貴重な戦力となっています。

【働く場では】
 ・作業内容を分かりやすく。工程、作業を具体的に提示する。
 例として、掃除…「どこまでやれば、きれいになったことになるか」わからない人の場合、ここまでふき取ったら終り」という形式にします。また、手先が不器用な人への配慮が必要です。
 ・コミュニケーションの工夫をする。
 「ちゃんと」などあいまいな言葉をやめて、本人のわかる示し方で。
 ・暗黙の了解のようなもの(出勤や終業時のふるまい方、同僚との会話、遅刻や欠勤の連絡など)は具体的に教える
 ・急な予定変更は苦手です。できるだけ早く具体的に知らせる。
 ・休憩時間への配慮をする。休憩時間は、自閉症のある人には、「何をしたらいいのかわからない」時間になってしまいがちなので、どう過ごすかの配慮が必要です。

【得意な仕事】
 ・形や量や手順がはっきり決まった仕事。自分だけで完結する仕事。部品の組立て、パンなどの成型、梱包、物品の仕分け、図書の分類、パソコン入力など。

【苦手な仕事】
 ・終わりや目的がわかりにくい仕事、臨機応変さが求められる仕事など。一見、簡単に思えることでも、自閉症のある人には、難しいことがあります。

【働く自閉症のある人への支援システム】
 自閉症のある人への理解と配慮をして、働きやすいように、ジョブコーチ(就労指導員)による就労支援や、自閉症のある人と直接関わる同僚からの支援が必要です。
 ハローワーク、地域障害者職業センターなどに相談しましょう

【「働いていても当たり前」の職場に】
 最近では、自閉症のある人は、その特性を発揮して、切り絵、陶芸、音楽、絵画、織物などの芸術的な分野で活動する人も出てきました。また、公務員、スーパーの店員、ホテルの従業員、IT関係でも働いています。


11.地域生活への支援

【支援システムを】
 自閉症のある人のライフステージに応じて、地域での支援を生涯にわたって継続していくことが大事です。
 ・ボランティアやヘルパーの活用
 ・行事や奉仕活動など地域社会に積極的に参加
 ・学習会などに参加して社会のルールやマナーを学ぶ
 ・障害のある仲間との交流など。

【施設サービスの活用を】
 施設(入所・通所・グループホームなど)が長年積み重ねてきた援助技術やプログラムが、ショートステイなど在宅支援に役立ちます。施設は自閉症支援の拠点の一つです。

【安全ネットワークを】
 地域生活のいろいろな場面でトラブルに巻き込まれることもあります。周りの人たちが、障害を正しく理解して、事が起きたときには、援助したり、家族に連絡できるよう、「安全ネットワーク」が必要です。
 災害のときにも、このネットワークが大きく機能するでしょう。


12.自閉症のある人に街で出会ったら

 自閉症のある人たちは、性格的に極めて純粋で、要求や感情をありのままに表す人たちです。付き合ってみると楽しい人たちでもあるのです。
 しかしときには、こだわりや癖が、おかしく見えることがあるかもしれません。でも、それは「理由がある」とご理解ください。

 街が自閉症のある人に慣れて、自閉症のある人も街に慣れて、「隣で暮らしていて当たり前」「隣で働いていても当たり前」の社会の実現を願っています。

【自閉症のある人が望むのは、「自閉症でもOK」という「心のバリアフリー」なのです】
 自閉症のある人には、その特性から、正しい理解と適切な支援が必要です。
 自閉症のある人が暮らしやすい社会は、どんな人でも暮らしやすい、豊かな社会となるでしょう。

 「隣で暮らしていて当たり前」「隣で働いていても当たり前」の社会の実現を願っています。