j-sanc1.jpg (92338 バイト)  山茶(さんちゃ)を楽しむ
(松阪市にて 2014.8.31)

 茶の木は平安京の内裏にも植えた記録があるようにかなり昔から、日本で飲用されてきました。 記録としては中世に中国から僧が茶の種と喫茶法を日本に輸入したとなっていますが、もともと茶の木は日本に存在して喫茶法が中国から輸入されたとの説もあります。 遺伝的に辿っていくと、全ての茶の品種は中国雲南省あたり(シーサンバンナ)から遺伝子を変えながら世界に広がったようですが、いつから日本に存在するのは定かではありません。
 山茶は四国(特に高知県)に多く分布して独特の製法や文化があります。 それでは、三重県に無いのかというとそういうことはありません。 山歩きすると、時々ぽつりぽつりと生えてます。しかし、ビシャコやヤブツバキのように群落を作っているのはほとんど見たことがありません。 高密度で茶の木が山にあるのは、私の経験上茶畑のちかくまたは、かつて茶畑があった近く、または神社内の林(多分過去に神社で栽培されていた痕跡)など、人が意識的に高密度で栽培したと思われる場所です。

 茶は、昔は山仕事の人が山の中の茶の木を採って、火で炙ってヤカンに放り込んで湧かし、仕事の合間に喫茶したりしたはずです。 また、採ってきた茶を茹でて天日で乾かしたひなびた茶もあります。 製茶機械を持っていない農家は茶の葉を蒸してむしろに広げては揉んで乾かして茶を作ったと聞きます。 そのような茶は現在の緑色ではなく本当に茶色の茶であった思われます。 そこで、採取された茶はその土地にあった在来の遺伝的にばらばらな品種だと思われます。 現在、栽培されている茶はほとんどが戦後普及した栄養繁殖品種「やぶきた」です。 昔から飲まれてきたひなびた山茶を楽しむのに「やぶきた」では趣がありません。 山から採るか、あるいは古い神社あたりの下草を探すと、昔からその土地に延々と飲まれてきた茶が採れるはずです。

 先ずは、松阪市内の古い大きな神社を探してみたところ、広い林の一角に茶の木が高密度で散見されるポイントがありました。 おそらく、神社の氏子がその場所でいつかの時代に栽培した歴史があるのでしょう。 しかし、ことごとくそこにある茶の木は低く刈り取られて、柔らかい新芽ばかりです。 多分、今の氏子は茶の木を下草として管理する為毎年草刈り機に刈り取られているのでしょう。 それで、新芽ばかりなのだと思われます。 予定では採ってきた茶をぐつぐつ煮るので、新芽では都合が悪いので、この時点でもう1カ所探してみることにしました。
j-sanc2.jpg (95862 バイト)  これが、神社から採取した茶の枝です。 とりあえずキープです。
j-sanc3.jpg (97475 バイト)  過去に山の中で、茶の木を見た記憶を辿ると、松阪市天花寺城跡(戦国時代の山城あと)の堀切に茶の木があったのを思い出しまして、やってきました。

 この一帯は、古墳群があったり、白鳳時代は大伽藍を有した大きな寺があったり、戦国時代は山城があったり、、、現在はほとんど人は居ませんが、古代から人が沢山歴史を重ねた場所です。 このような、場所には茶の木がある気がします。
j-sanc4.jpg (91489 バイト)  代表的な常緑樹、ヤブツバキは人が居なくても山には沢山あります。久
j-sanc5.jpg (99569 バイト)  カクレミノもちょろちょろ・・
j-sanc6.jpg (100976 バイト)  ありました。これが茶の木です。 慣れると直ぐにわかるのですが・・・・・・
j-sanc7.jpg (82353 バイト)  葉の表側・・・
j-sanc8.jpg (70207 バイト)  葉の裏側・・
j-sanc9.jpg (93725 バイト)  かちかちに硬い茶の葉を適量採取しました。
j-sanc10.jpg (84397 バイト)  神社で採った柔らかい茶の木は、山師たちが山で楽しんだであろう、火で炙って煮出す飲み方を試すことにしました。 水分を抜くようにあまり焦げないように火で炙ります。
j-sanc11.jpg (68143 バイト)  5分ほど煮て、漉すと・・・
j-sanc12.jpg (66952 バイト)  いちおう褐色の色がついた液体ができました。 飲むと・・・うん?これは白湯??味が薄いです。。が、微かに焙じ茶の味がします。しかし、とても薄いので、白湯に香りがついた感じで、茶という感じはあまりしません。これでも山で飲むとそれなりに美味いのでしょう。
j-sanc13.jpg (71010 バイト)  次は、山城で採取した茶を水で良く洗って、茹で蒸ししました。
j-sanc14.jpg (70827 バイト)  なかなか、硬いので葉がゆであがりません。 20分ほど茹でて茶色っぽくなったところで茹で止めました。
j-sanc15.jpg (85907 バイト)  茹でた葉っぱは茶色っぽいです。
j-sanc16.jpg (58633 バイト)  少量のゆで汁は捨ててはいけません。 これから茶は天日干ししますが、少し乾いたらこのゆで汁をかけて再び干しますからとっておきます。
j-sanc17.jpg (84266 バイト)  奈良ではブルーシートの上で干すそうですが、ゴミ袋を使いました。 新聞紙を始めから使うと早く乾くと思いますが、多分ゆで汁とともに干していくのが大切な気がしますので、吸水性がないものを使いました。 葉が重ならないように丁寧に干していきます。
j-sanc18.jpg (83697 バイト)  少し乾いたら手で拡販して、また並べ直します。
j-sanc19.jpg (79066 バイト)  ゆで汁をかけて、また干して手で拡販します。。 ここで夕方になってきましたので、仕方なく新聞紙に変えました。夜は乾かないから・・・。
j-sanc20.jpg (78734 バイト)  い1日陰干ししたらこのように乾きました。
j-sanc21.jpg (86971 バイト)  売っている赤ちゃん番茶はもっと艶があってかりっとしている気がしますが、まあいいか・・。この状態で、手で潰しても粉々になるくらいは乾燥していないようです。
j-sanc22.jpg (76356 バイト)  これを5分ほど煎じると・・・
j-sanc23.jpg (74651 バイト)  やっと、ひなびた山茶ができあがりました。 少し茶色がかった山吹色と申しましょうか。。。味見です。
 お!ちゃんと濃度感がある番茶の味がします。少し苦みもしますから、煮て干す作業で揉まなくても液胞に存在するカテキンが抽出できたのだと思います。 
 番茶の味とひなた臭がします。 ボボライトですかね・・・日干ししたので当然なんですが、まあひなびた味です。なかなか風情があります。
j-sanc24.jpg (86011 バイト)  奈良ではこれを焙じたタイプも売っていましたから、から炒りしてみました。
j-sanc25.jpg (75517 バイト)  水分が抜けて粉々につぶせます。あんまり焦げないように仕上げました。焙じ茶の香りがするのかな?と思いましたが、そのような香りにはなってきませんでした。適当に焙じるのを止めて5分間煮出しました。
j-sanc26.jpg (67819 バイト)  褐色の液体ができました。 味は・・・あれ?濃度感や苦みがぐっと無くなってやけにあっさりしてますが、甘みが出てきていました。 これは・・・茶と言うより、フライパンで植物を炒ったときの共通した味です。 以前作ったクチナシの葉の焙じ茶にも似ています。 飲みやすいですが、茶を飲んだパンチが少なくなりました。
j-sanc27.jpg (74667 バイト)  今回、普段飲んでいる緑色の茶とは全く違う、山茶の世界を楽しみました。昔は、こういう鄙びた茶を飲んでいたんですねえ。。。