4,5歳の頃の記憶。
  お盆に母方のおばあちゃんの家に行くといつも
  井戸の中にスイカが冷やしてあった。
  それを引き揚げて,ざっくりと切り,ひんやりとした土間で食べる。
  「スイカには塩やに。塩つけな。」農作業で腰の曲ってしまった
  小柄でおせっかいやきのおばあちゃんが言う。
  塩は精製塩のような辛いだけの塩ではなく,
  少し苦味のきいたものだった。
  あのスイカの甘さ,みずみずしさ。それを引き立てる塩。
  ほっぺたをスイカに埋めてかぶりつく瞬間のシャクッという食感。
  あぁぁ,じゅるじゅる。

  スイカは上品に一口サイズなんかに切っちゃぁいけませんぜ。
  スイカで大切なのは,食感ですよ。極端な話,しぼってジュースにして
  飲んだらスイカの魅力はなくなってしまうし。

  あ〜の食べ方は,果汁を余さず口に入れ,ほっぺたもよごさないという,
  これぞ実に上品な,理想的なスイカの食べ方なのだっ。
  カエルみたいだけど。