10月11日(木) 成田→パリ

2日目からはちょっと硬めの文章で旅行記を書くことにする。

6:30起床。前夜の雨もすっきりとあがり,晴天。
のんびり朝食をとってから皆で揃ってバスに乗り,成田空港第1ターミナルへ。
クロネコのカウンターでスーツケースを受け取り,荷物チェック。
テロのせいでいつもなら通さない手荷物もX線検査。
X線遮断袋に入れてあった30本のフィルムを確認させられる。

出発までラウンジで待つ。添乗員さんから両替えを依頼してあったフランスフラン
の現金とトラベラーズチェックをもらう。
初めて見るフランスフランの紙幣は子供銀行のおもちゃのお金のような感じ。
窓の外にはエールフランス275便が既にとまっている。

搭乗手続き,出国審査は簡単。12:30搭乗開始。
狭い通路を通って機内に入ると座席などインテリアは青を基調として
フランスのトリコロールカラー。さすがエールフランスだぁ。
ほぼ満席状態。座った座席番号は29K。右側の窓際から2つ目。
テロを心配する間もなく12:55離陸。主翼の真横なので下界は見にくい。
北極圏回りのAF275便は高度を上げながら新潟の方向に飛ぶ。

高度1万mを超え,時速900kmほどで巡行する。
あっという間に新潟を過ぎ,日本海を経てロシアに入る。
すべての雲の上を飛んでいるので,空気は澄んで空の青さが深い。
早速腕時計をヨーロッパ時間に合わせた。10月31日まではサマータイムなので
日本より7時間遅い。パリはまだ夜明け前だ。
機内を回ってきたフライトアテンダント(男)から白ワインの小ビンをもらい,
プラスチックカップに入れて飲む。

日本時間の午後2時ごろ昼食。フランス田舎風ランチ,白ワイン。
両側とも使えるつまようじは合理的だなー。
エンジン音がうるさいので青い耳栓をしてうとうとと眠る。暑い。
しばらくして目が覚めたら急に目の前が暗くなってきた。
これは小学校の時に経験してから絶えてなかった貧血の症状だ。
疲れているわけではないので気圧が低くなったせいなのか,ワインのせいなのか
と思いつつ,冷静にベルトを緩め,シートを倒して姿勢を横にして脈を見る。
脈拍は若干弱く,手足が少し痺れている。
深呼吸をしながら耐える。右隣に座っていた窓際の先生がトイレに立ったので
席をかわってもらい,少し涼しい窓際に移る。半時間もせずに回復。

眼下を覗くとシベリアの大地。
低い雲の間から見えるのは,うねった川,侵食された氷原,不毛の土地。
とても人間の入って行けないような地形が続く。まるで他の惑星の風景のようだ。

太陽に向って飛んでいるので,日本を昼過ぎに出発してから6時間は過ぎているのに
空の青さ,明るさにまったく変化がない。北側を見ているので太陽は見えないが,
太陽は南の空でほとんど動いてないのだろう。
まるで時間が止まってしまったような風景。

AF275の曵く飛行機雲の影が真っ白い雲に映っている。

画面右中央から左下に向ってのびる黒っぽい線が飛行機雲の影。
その先端が飛行機の位置。飛行機の周りには少し明るい小さな丸い虹が
二重に取り巻いている。線香の先端のよう。
右端の黒い影は窓ガラスについた氷。

下弦に近い月が10°ぐらいの高さにある。日本ならかなり傾いて見えるはずなのに
緯度が高いのでほとんどまっすぐに立っていて奇妙な感じがする。

ヨーロッパ時間の午後3時(日本時間は午後10時),まだ真っ昼間。けど夕食。
エコノミークラスの狭い席であまり立ち歩かずにいるので全然おなかは空かない。
しかし,きれいに平らげる。ワインは自重し,オレンジジュース。紅茶。

ヨーロッパが近づくと雲の背が高くなる。
巨大な積乱雲がまぶしく輝く。飛行機はその積乱雲より上を飛んでいる。
絹雲の中に入った。雲が猛スピードで飛び去る。
雲から出たら,フランスの農村。広い畑の中に点在する集落。
日本のように街道沿いに家が連なってはおらず,集落と集落は数百メートル以上
離れているようだ。集落の近くにしか木は茂っていない。
家は白い壁に窓。屋根は茶色。
飛行機は次第に高度を下げる。
シャルル・ドゴール空港は畑地帯の中にあった。空港は3000haもあり,
成田の4倍。着地してからが長い。空港施設をぐるりと一周してから止まる。

午後5時半,パリは快晴。気温20°C。
成田を出てから11時間半。太陽はまだ高度を保っている。
入国審査はあっさり通過。17個のスーツケースをポーターが手荒く運ぶ。

バスでホテルへ向う。ようやく動き出した太陽は加速して沈んでゆく。
西日に向って高速道路をバスは進む。クルマはプジョーとシトロエンが大半。
日本車はほとんどない。バイクはホンダやスズキが多い。

バスの右手に大きなフットボール競技場。ワールドカップが開催された場所だ。
パリの市街地に入り,セーヌ川沿いを走る。
夕陽が沈んだ頃,ホテル着。ラ・デファンス地区のソフィテル・ホテル。
509号室。東に向いた窓からRERの列車が見える。

8時過ぎ,16人の先生達だけで外に出て,いきなり買い物をしに行く。
欲しかったものはミネラルウォーターと小銭。
ヨーロッパでは水は買うもの。水道の水はバス・シャワーとうがいぐらいに
しか使わない。そしてチップを渡すために小銭が要る。いちばん小さい紙幣でも
100フラン (日本円では約2000円) のものしか持っていない。

ラ・デファンスという地区はパリの西のはずれにある。20年ほど前から開発が
進んできた新しい地区だ。凱旋門からまっすぐ数キロメートル西にある。
そしてこのラ・デファンスには新凱旋門がある。
ホテルはこの新凱旋門のすぐ北側にあった。
ホテルを出て,エスカレーターと階段を上って,空中通路を通り,
新凱旋門前のだだっぴろい広場に出て,一同あたりを見回し,「ほー」とため息。
新凱旋門は普通のビルのようにシンプルなデザインだが,とにかくでかい。
バカみたいにでかい。古い方の凱旋門より大きくしようと意地を張ったのか。
この地区にはクルマの乗り入れは禁止されているので静かだ。
何もないコンクリートの広場を横切って新凱旋門南側にある
HYPERMARCHE AUCHANに行く。
ここはいわゆるスーパーマーケット。売り場の雰囲気は日本のものと
違わない。が,ワインコーナーだけは目を剥くほどの品揃え。
いちばん奥に目指すミネラルウォーターがあったが,ここもかなり充実している。
棚一面がペットボトルの水。いろんなメーカーのものがある。
フランスは消費税が20%近くあり内税であるが,水は安い。
食品には税金はかかっていないのかもしれない。
エビアン (500ccボトル) 6本セットで11.9フラン。アクエリアスもあったのでカゴに
入れる。こちらは500ccボトル1本が6.6フラン。

レジはこの店専用カードでしか受け付けないのとキャッシュのところがあって,
最初は間違ってカードレジに並んでしまい,黒人レジ係りに「場所が違うよ」
とかなんとか言われ (もちろんフランス語で) 別の列に並び直す。
レジ係さん,もう少しにこやかに対応しておくれよぅ。
レジは初めて見るベルトコンベヤー式のものだった。
なんとか支払いを済ませて,水だけぶら下げて,ホテルに戻る。

翌朝のベッドメーキングのチップのためにベッド横のテーブルに
10フラン硬貨を1枚置く。本当は5フランも置けば充分なのだが,手持ちの硬貨は
10フランのものしかなかった。
12時頃眠りにつく。普通より7時間長かった1日がようやく終わった。

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