仕事の前の静かな楽屋。
タクローのギターの音と、かたかたという俺が叩くキーボードの音だけが静かに流れている。
ジロウはというと、どうやらソファにもたれて眠っているようだ。そんな静寂を破るかのように、バタンと大きな音を立てて楽屋のドアが開けられる。
「とのぉー。おはよぉー。」
ぱたぱたという足音と共に、元気良く楽屋に入ってきたテルが、後から俺に抱き着いてくる。
「おう、てっこおはよ。なんかやけに遅かったけど何かあったの?」
そう言って俺がキーボードを叩きながら返事をすると、それが気に入らないらしく、さらにぎゅっと抱き着いてくる。
「うん。道が混んでたの。・・ねえ、との。ちゃんとこっち見て・・。」
てっこの可愛らしいおねだりに、俺が勝てるわけもなく、速攻で電源を落とすと、真正面からてっこと向かい合う。
たったそれだけの事なのに、てっこは本当に嬉しそうに笑ってきゅっと俺に抱き着いてくる。
か・可愛い・・。二人きりだったらすぐに押し倒せるのに!
俺のぶちきれそうな理性などには全く気付かずに、てっこはさらに猫のような仕草で俺の肩に頬を擦り付けてくる。
「えへへへ・・。との大好きー。」
「………てっこっ!!」
理性強制終了。
俺はてっこをソファに押し倒すと、その可愛い唇に熱い口付を落とそうとした、その時。ふっと俺の下からてっこが消えた。
あ、あれ?呆然とあたりを見まわしていると、頭上からタクローの低い声が響いてくる。
「・・なにしてんだ。お前は。・・一応人前だっつーの!!」
ふと見上げると、てっこはやつの手によって、まるで猫のようにひょい、と持ち上げられていた。
「てめえ、鼻の分際で・・。てっこを返せっ。」
俺のセリフにあろうことか、タクローはふん、と鼻をならす。
「そうはいくか。テルはこれから俺と雑誌の対談すんだから。もう時間だし、連れて行くからな。ほら、テル行くぞ。」
そう言うと、軽々とテルを持ったまま楽屋を出て行く。
「やーん。とのー。」
「てっこ!待て、鼻野郎!!」
二人を追いかけようとした俺の手を、がしっとジロウが掴んで邪魔をする。
「だめだよ。ヒサシくんは俺と対談するんだから。こっち、こっち。」
そうして、俺はてっことは反対方向へと引きずられていった。
しかし、俺とジロウの対談がそう盛り上がるはずも無く、いつもどうり俺達の方が早く終了する。
楽屋に帰り、何をする訳でもなく、ぼんやりと煙草を吸っていると、それが最後の一本であったことに気づく。
時間もあるし、自販行くついでに、ちょっとてっこの様子でも見てくるかな。
そんな軽い気持ちで、そっと二人が対談してる部屋を覗く。
そこには、楽しそうに笑い合い、インタビュアーの質問に答えている二人がいた。なんとなく面白くない気持ちで、すぐに楽屋へと返る。
…なんだよ、てっこのやつ。楽しそうじゃん。
バタンと大きな音を立てて楽屋に戻ると、ジロウがびっくりしたように俺を見る。
「何?どうしたの、ヒサシ君。」
「・・別に。」
不機嫌にそれだけ答えると、ジロウはそれ以上は追求してこず、楽屋は静けさに包まれた。
俺は自分の気持ちを落ち着かせるため、煙草に火をつけ、深く紫煙を吸い込んだ。
にぎやかな声が廊下から響いてくる。タクローとテルが帰ってきたようだ。
「それでねー。その時、タッキーがこう言ったの!酷いよね!」
「あははは、それはテルが悪いってー。」
「えー…。そうかなあ。」
楽しく話を続けている二人の元に、かつかつと歩み寄る。
「お、ヒサシ、何か用か?」
タクローの質問を完全に無視して、てっこの手を取りずるずると連れてくる。
「え?との、何?」
驚いたようにテルが顔を覗きこんでくる。
そのままどすんとソファに座って、てっこを俺の膝の上に乗せる。そしてぎゅっと強く抱きしめた。
「…・とーの、どうしたの?」
てっこの優しい声が、耳に直接響いてくる。
「・・てっこが、タクローと楽しそうにしてるから・・。」
ぽそっと呟いた俺の言葉を聞くと、心配そうに歪められていたてっこの顔が、ゆっくりと笑顔に変わる。
「タクローに焼きもちやいたの?えへへ。との可愛い。」
「・・てっこ。俺の事好き?」
「うん!大好き!!」
「鼻野郎よりも?」
「当たり前だよ!!とのがいっちばん大好き!!」
あ、タクローがおもいっきりショックな顔してる・・。くくく、いい気味だぜ。俺からてっこを取り上げたりするからだ。よし!今度こそ!
「・・てっこ。」
小さく名前を囁いて、てっこの可愛い唇にキスしようとしたその時。
バタンっ!!
大きな音をたてて、ドアが開けられる。そこに息を切らしながら立っていたのは、マネージャーのタッキーだった。
「テルさん!まだここにいたんですか!?この後ラジオの採りがあるから、急いでくれっていったじゃないですかー!!」
俺の腕の中でてっこが小さく「あ、やば。」と呟いた。
タッキーはつかつかと俺達の前まで歩いてくると、がしっとてっこの腕を掴む。
「さっ、行きますよ!テルさん。ジロウさん、今週のゲストでしたよね。一緒に来てください!それじゃ、タクローさん、ヒサシさん、お疲れ様でした。」
それだけ言うと、俺の腕からてっこをさらって行った。
「と、とのー、ごめーん。今日仕事終わったら、家に行くからー。」
タッキーに連れ去られながら、てっこが振りかえって言う。
呆然としている俺の横を、なんとなく気の毒そうな顔で、ジロウがすり抜けて、二人の後を追って行った。
ピンポーン。
「おじゃましまーす。とのー。」
玄関のチャイムとともに、てっこの声が響いてくる。慌ててネットを切断し、いそいそと玄関に向かう。
すると、玄関には俺よりも早くお出迎えに行っていた鮎を抱いたてっこが立っていた。
「ごめぇん。遅くなっちゃったよー。」
すまなそうな顔をして、てっこが謝ってくる。そんな顔も可愛くて、ついついいじめたくなってしまう。
「ほーんと。めっちゃ待ったよ。もう寝ようかと思ってたとこ。」
冷たく言い放つと、小さな顔が泣きそうに歪む。
そんなてっこを鮎ごと抱きしめて、そっとまぶたにキスをする。
「うそだよ。・・待ってたよ、てっこ。」
潤んだ目で見上げてくるてっこの、艶っぽい表情が俺の理性を壊して行く。
ここには邪魔者はいない。今度こそ・・。そっとてっこに口付ける。
「ん、・・あん。」
テルから色っぽい喘ぎ声がもれる。
えっ!俺何もしてないけど・・。
顔を覗き込んでみると、ぐんと身体を乗り出した鮎が、ぺろぺろとテルの唇を舐めている。
「・・やん、くすぐったいよ。あゆぅ。」
自分の飼い猫にまで邪魔されてるよ・・、俺。
俺の胸の中に、独占欲がむくむくと湧いてくる。
テルの腕の中から鮎を摘み上げると、居間のソファにひょいっと投げる。
「え・との何してるの?」
吃驚しているテルの腕を取って、強引に寝室へと連れて行く。
ぱたんとドアを閉めると、後ろ手で鍵をかける。
「急にどうしたの?」
途惑っているテルの肩をとん、と軽く押すところんとベッドに倒れこむ。
「きゃん。何するのー。」
「何って、決まってるでしょ。いい事すんの。」
そう言って、今度こそ、テルの唇に口付る。
甘いテルの舌を堪能するように、深く深く唇を重ねる。
「・・ふ・・あ・ん。」
一日中お預けをくったせいで、いつもより余裕が無い。
テルが俺だけのものだってしるしを、テルの身体中に刻み込みたい。
キスを首筋に下ろして、強く吸い上げる。
「・・あっ!・・だめえ。・跡つけないで。・・んっ!とのぉ。」
「だーめ。てっこは俺のものでしょ。ちゃーんと印つけとかなくちゃ。」
テルの首筋から鎖骨に掛けて無数の赤い花弁を散らしていく。
綺麗に色づいたそれは真っ白な肌にはえて、ぞっとするほど色気がある。
すっとシャツをめくって、ピンク色の胸の突起に口付ける。
「ひゃんっ。・・やっ。」
感じやすい身体がびくんとはねた。そのまま、片方を舌で、もう片方を指で愛撫すると、いやいやをしながら、俺の頭を抱え込んでしまう。
「やん、・・との、・・あ・・あん。」
執拗なまでの俺の愛撫に、テルが甘い声を上げる。
その甘い声に誘われるように、すっとテルの下半身に手を伸ばす。
すでに熱くなっているそこを、服の上から撫でると、テルの身体が大きく跳ねる。
「あっ!・・や、だめぇ・・。」
「そんな事言って、こんなに熱くなっちゃってるじゃない・・。だめじゃないでしょ。・・もっと、でしょ。ほら、ちゃんとおねだりしてごらん。じゃないずっとこのままだよ。」
そう言って、すっと手を引く。
辛そうに、ねだるような色っぽい視線を向けるテルを、無視してわざと腰や腿をなで上げる。
「・・や・・ん、とのぉ、触ってぇ・・。」
こらえきれずに真っ赤になったテルが、俺におねだりする。
潤んだ瞳はめちゃくちゃ色っぽくて、そして同時に俺の嗜虐心を刺激する。
ふっふっふ。もうちょっといじめてやろう。
「触るって、どこ?もう触ってるじゃない?」
「そんな・・言えないよぉ。・・とのぉ、いじわるしないで。」
「言えないの?しょうがないね、てっこは。じゃあ、どこを触って欲しいのか、俺の手をそこまで連れてってよ。それなら出来るでしょ。」
俺の言葉に最初は躊躇していたテルも、俺が自分から動く気がないのがわかると、おそるおそる俺の手を取る。そして、自分の熱くなった欲望に押し当てる。
「・・ここ、・・に触ってぇ。」
「はい、良く出来ました。御褒美、あげなくちゃね。」
そう言って、すばやくテルのズボンを下ろすと、直にそれに手を這わせ、下から上へと擦り上げた。
「ああん。・・とのぉ、もっとぉ。」
先端を爪で強く引っかくと、ひときわ高い声を上げながら、テルが達した。
快楽に溺れて、ぼんやりとしているテルに、深い口付けをおとす。
「ねえ、てっこ。気持ち良かった?」
そう聞くと、恥ずかしそうにコクンと頷く。
「じゃあさ、俺の事も気持ち良くさせて?」
そう言いながらそっと後の蕾に手を伸ばす。すると、びくん、とテルの身体が跳ねる。かまわずにテルの放ったもので濡れている指をそっと差し入れる。
「んっ・・ああ!」
苦しそうな様子のテルにちょっと胸が痛む。
「ちょっと我慢してね。・・すぐに気持ち良くなるから・・。」
そう言って、中で指をうごめかせる。
「ん、とのぉ・・ああ!!」
見つけた。ここだ。
探し当てた感じるポイントを、執拗に擦り上げる。
「あ・・ああん。・・も、だめぇ。」
しがみついてくるテルを宥めながら、指を2本、3本とすこしづつ増やしていき、蕾をほぐしていく。
準備が整い、蕩けだしそうなテルの蕾から、そっと指を引き抜く。
「てっこ、もういい?」
完全に欲望におばれているテルは、ぎゅっと俺にしがみついてくる。
「とのぉ、・・早く来て。とのが欲しいよぉ・・。」
こんな時のテルの声は、最高に色っぽくて、俺の下半身を刺激する。
「・・いくよ。てっこ。」
「ん・・ああぁぁぁっ!!」
テルの狭い入り口に、俺のものが飲み込まれて行く。
ゆっくりと最後まで進入すると、いったん動きをとめた。
「動くよ・・。いい?」
俺の質問にコクコクと懸命に頷いているテルは、可愛らしくて、テルの中で俺自身がまた大きくなったのがわかった。
欲望のままにテルを突き上げる。
「あっ・・あぁっ・・あん。・・もう。・・だめぇ。」
繋がった部分が熱い。無意識に締め付けてくるのがたまらなくいい。
「・・て・・っこ。・・はっ。」
テルが達したのと同時に、きつく締め付けられて、俺もテルの中で達した。
シャワーをあびて、寝室に戻ってくると、やすらかな寝息を立てて、テルが眠っていた。くしゃくしゃになってしまった髪の毛をそっと撫でてやると、ごろんと寝返りを打つ。
「・・う〜ん。・・とのぉ、大好き。」
あまりにも可愛いテルの寝言に、俺の顔は真っ赤になってしまう。
「・・俺も、てっこのこと愛してるよ。」
そう言って、額に優しいキスを落とす。
そして、眠っているテルをそっと後から抱きしめ、自分も眠りに落ちていった。
「んんー―――。・・もう朝かあ。」
カーテンからこぼれてくる眩しい朝日に、テルが目を覚ます。
自分を抱きしめているヒサシの腕をどけて、立ちあがろうとした時、テルは自分の身体の異変に気付いた。
「やーん。何これ〜・・。ちょっと!!とのっ!!」
隣に眠るヒサシをたたき起こす。
「・・うー――。・・なんだよ、てっこー。」
「これー。もー、酷いよー!今日撮影もあるのにー!どうしたらいいの!」
怒り狂っているテルの身体には、首や胸、腕をとわず、全身に紅い所有の印が散らばっていた。
「・・あららら。派手についてるねえ。・・でもいいじゃん。てっこは俺のものなんだから。これくらい着いてないと安心できないよ。」
俺の言葉にテルが呆然としている。
「・・とのって・・とのって、めっちゃ我侭!!」
「あれ?知らなかったの?でもそんな俺が好きなんでしょ?」
テルが絶句して、ベッドにどさっと倒れこむ。
ふっふっふ。この勝負勝ったな。
「てっこ。返事は。」
テルを抱き寄せて、返事をせまる。
「・・とのなんて、大っ嫌い。」
ぽつっと呟かれた言葉に今度は俺が真っ青になる。
「なーんてうっそー。とのだーいすき!!」
がばっと置きあがってテルが言う。
「・・驚かすなよ―!絶対寿命縮まったぞ!!」
「へっへー。お返しだもん!」
そうやって、朝日の中でテルが満面の笑みを浮かべる。
こんな笑顔に誰が勝てるっていうんだ。
全く。テルがこんなだから、だれかにとられるんじゃないかって心配になっちゃうんだよな。
ああ、俺の受難の日々はまだまだ続くな。
もちろんそれは、俺にとってめちゃくちゃ幸せな受難だけど・・。
Fin
tomoちゃんにもらっちゃったよ。ヒサテルだよ!
もう、ヒサシさんのはがゆさ(笑)分かる気がする〜〜〜。邪魔者がかなりいるわねえ。
それでも、最後はいいこと出来てよかったよかった(愛)
tomoちゃんの、初えろ作品だったそうですが・・・。いやん。えろいじゃーん。
ほんと、蟻×拾です!!!
テルバにアップしてみました。・・・いつもありがとね。
まったく。人の恋路の邪魔ばっかしやがって・・・。
でも、てっこはかーわいいからなあ。しょうがないか。(でれっ)
ヒサシはずるいよなー。いっつもてっこ独り占め・・・!
しょうがないじゃん。てっこがオレのこと愛しちゃってんだもん。
・・・!もう何も言うまい。
のろけか。のろけなのか・・・。 ☆戻る☆