『誤解』


SIDE HISASHI&JIRO

「ねぇHISASHI君、やっぱあの二人付き合ってんのかなぁ・・・」

JIROが遠目にTAKUROとTERUを眺めながら言った。


「・・・・・」


HISASHIも二人を見て険しい表情になる。


『そんな事、あるわけ・・・・ない』

自分に言い聞かせるように心の中で否定するHISASHI。


そして互いに想い人を見つめていた。


世間でプライベートは殆ど接触がないと疑われているこの二人が、事実こうして互いの胸の内を

(ってゆーかJIROが勝手に語っている)のはとある酒の席がきっかけだった。

「ひ〜さしく〜ん、飲んでるぅ?」


ハイになったJIROがHISASHIに絡んできた。


「うっせーな、飲んでるよ!」


まだ自我のはっきりしているHISASHIは鬱陶しそうにJIROを見る。


その傍らでかなりの量の酒を煽るTERUを眺める。


「・・・心配?」


突然JIROが聞いてきた。


一瞬ドキッとしたが表情には出さず平然と答える。
「何が?」


「まぁ〜た〜、とぼけちゃってぇ〜」


ケラケラ笑いながら言うJIROにムッとするHISASHI。


「今もTERU君の事見てたでしょー」


「なっ・・・」


図星を指されたことに頬を赤くする。


「バレてないとでも思った?」


隣に腰掛け言葉を詰まらすHISASHIにおもしろそうに言うJIRO。


「TERU君飲み過ぎだよね〜明日も仕事あるのに。・・・・・でもTAKURO君いるからダイジョブだよね」


後半の方は妙にトーンが低いことにHISASHIはJIROの顔を覗き込んだ。


するとJIROは目尻に涙を浮かべていた。


「じ・・JIRO?」


そんなJIROに戸惑うHISASHI。


「TAKURO君てさ誰にでも優しいけど、TERU君に接してる時だけなんか違うんだよね・・・」


一人で語りはじめるJIRO。


「ほら、TAKURO君とTERU君って小学校から一緒じゃない。だからお互い信頼しあってるし、一番理解してんだろうし。

・・・それに比べたら僕なんか年下だしGLAYに入ったのだって東京出てきてからだし、

いつもわがまま言ってTAKURO君の事振り回してるし。

・・・TAKURO君はちゃんと接してくれてるけどホントは心の中じゃムカツク奴とか思ってるかもしれない・・・」


そこまで言うと瞳から涙がこぼれた。


「おいっ・・・JIRO?」


突然泣き出したJIROにどう接したらよいか解らずにいるHISASHI。


「僕・・・ここにいてもいいのかなぁ」


酒のせいもあるだろう、思考回路がマイナスへマイナスへと向かうJIRO。


「何言ってんだよ、いいに決まってんだろ!」


「TAKURO君もそう思ってるかな・・・・・・・」


そう言ったきりJIROがおとなしくなった。


「おいJIRO?」


横を向いた時HISASHIの肩に重さが加わった。


JIROはHISASHIの肩に頭をもたれさせ寝入っていた。


「ったく、一人言いたい放題言いやがって」


自分の気持ちを勝手に打ち明けて勝手に寝てしまったJIROを横目にHISASHIはため息を付いた。


『まさかコイツにバレてるとはな・・・それよりお前こそバレバレだぞ、JIRO』


自分としてはこの想いを微塵も表に出してたつもりはなったのだが・・・。


そう思いつつも視線は常にTERUを追っている自分に気づかないHISASHIだった。

この時以来JIROは何かあるたびHISASHIにくっついて不安を吐き出しているのだった。


SIDE TERU&TAKURO

「ねぇTAKURO、最近HISASHIとJIRO仲いいよねー・・・」


ため息交じりにTERUが言った。


TAKUROもかなり気にはなっていたが意識すると自分の気持ちに歯止めがきかなくなりそうで、意識しないようにしていた。


『TERUは覚えてないかもしれないけど、あの二人が親しげに話すようになったのは確か・・・』

スタッフの誕生日を祝うため、皆で集まりパーティーをしていた日の事だった。


初めのうちはそれなりにワイワイやっていたが、酒が入り始めると収集が付かなくなってきていた。


そんな中HISASHIが隅っこで飲んでいるところにJIROが話しかけた。


内容は聞こえなかったが何やらJIROがケラケラ笑っていた

その光景をじっと見つめるTAKURO。


「TAKURO何やってんのー?もっと飲もーよー」


TERUがTAKUROのグラスにビールを注ぎ足す。


「TERUあんま飲むと明日に響くぞ」


そう言って飲み過ぎなTERUのグラスを取り上げる。


「まだ平気だよ〜。ほらTAKUROももっと飲んで」


自分のグラスを奪い返し、さらにTAKUROのグラスにビールを注ぐTERU。


「明日二日酔いになっても知らねーぞ」


諦めたようにグラスのビールを飲むTAKURO。


そして再びHISASHIとJIROへ視線を向ける。


するとHISASHIの肩に頭を預けて寝入っているJIROの姿が目に入った。


「・・・・・・・」


そのまま睨むようにHISASHIの方へ視線を向けていると、HISASHIと視線がぶつかった。


だがそれは一瞬のことでどちらからともなく視線を逸らした。

TERUが何やら話しているのを聞いているのかいないのか、TAKUROはぼんやり少し前の飲み会を思い出していた。


『確かあん時からだよな・・・やっぱHISASHIと付き合ってんのかな・・・』


そこでTAKUROもため息を付いた。


そんなお互いを監視するかのような視線を交わし合いながら一ヶ月ほどが過ぎた。


それは決して居心地がいいものじゃなくて・・・。・・・・が、このままじゃ気の済まない男が約二名。


今日こそハッキリさせようと決心し、家を出た朝。


偶然にもスタジオの駐車場でバッタリ会ってしまったHISASHIとTAKURO。


「よぉ」


HISASHIが先に声をかけた。


幾分声に刺があるように感じたTAKURO。


そして睨むような視線。


「おはよう、HISASHI」


HISASHIの視線を真っ向から受けてTAKUROが挨拶をする。


『どうしたんだ今日のHISASHI。俺、何かしたっけ?・・・もしかして告ろうとしてんのバレた?!やっぱ付き合ってんのか?』


『ライバルなんだから、こんくらい威嚇してもいいよな・・・』


お互いの思考は噛み合わないまま一緒に楽屋へと向かう。TAKUROがドアを開けた。


中にはJIROの姿しかなく、TAKUROが笑顔でJIROに挨拶をする。


「おはようJIRO」


背を向けて座っていたJIROは、入ってきたTAKUROとHISASHIを振り返って挨拶を返した。


「TAKURO君、HISASHI君おはよー」


「JIRO、TERUまだ来てないの?」


HISASHIは姿の見えないTERUについて尋ねる。


「TERU君ならさっきタバコ持って出てったけど」


「そっか・・・サンキュ」


短く礼を言うと荷物を放り投げて足早に楽屋を出ていった。


そんなHISASHIを見てクスッと笑うJIROだった。


SIDE HISASHI&TERU

今日こそはTAKUROとの関係を聞いて、自分の想いを告げると心に決めていたHISASHIは、着いて早々にTERUを探してスタジオ内を走り回っていた。


『喫煙所にはいなかったな・・・屋上か?』


HISASHIは屋上へと続く階段をかけ上った。


屋上へ出るドアを前に一度深呼吸をしてドアを開けた。


『ビンゴ』


開けた途端目に入ったTERUの後ろ姿。


策にもたれかかるように肘を付いてタバコを吹かしていたTERUが、音に気付いて振り返った。


「あれ?HISASHIおはよー。どうしたの、こんなトコで?」


少し息を切らしたHISASHIを見てTERUが言った。


「TERU探してた」


言いながらTERUの方に歩み寄る。


TERUもタバコを消してHISASHIの方に身体を向けた。


「何か用?」


「TERUに話しがある」


普段の和んだ表情ではなく、真剣な眼差しで見つめられドキッとするTERU。


「TERUさ・・・TAKUROと付き合ってんの?」


「なっ・・・何言ってんだよHISASHI!」


HISASHIの質問に吃るTERU。


「TAKUROは親友だよ。そういう風に見たことはないよ」


「そっか・・・」


ふーっと息を付くHISASHI。


『HISASHI・・・何でそんな事聞くんだろ』


HISASHIの質問に戸惑うTERU。


「あのさ・・・・・」


なかなか言い出せないHISASHI。


「ん・・・な、何?」


暫く沈黙が二人を包む。


「TERUっ!」


ようやくHISASHIが口を開いた。


「俺・・・TERUの事・・・好きだ」


TERUの瞳を真っ直ぐ見つめてHISASHIが言った。


『えっ・・・HISASHI・・・今なんて・・・』


驚いて何も言えずにいるTERU。


「・・・・ゴメン。それだけ」


振り返り屋上から出ていこうとするHISASHIを見て、やっとTERUが動いた。


『HISAHI行っちゃう・・・俺も言わなきゃっ』


HISASHIの背中に抱きついた。


「て・TERUっ?!」


今度はHISASHIが驚き、後ろを見ようと首を回した。


「HISASHI、JIROと付き合ってんじゃなかったの?」


しがみついたままTERUが言った。


「はぁっ?なんで俺がJIROと付き合うわけ?」


「だって・・・最近ずっと一緒にいるじゃん」


少しスネたような口調のTERU。


「あれは・・アイツが勝手に俺の横でグチってるだけ。俺はずっと・・・ずっとTERUの事しか見てない」


額を擦りつけるようにして自分の背中にしがみついてるTERUに、優しく囁く。


「ホント?」


顔を挙げてTERUが聞く。


「嘘ついてどーすんだよ」


HISASHIがそう言うとTERUは背中から離れた。


そしてHISASHIの前に回り込んで正面から抱きつく。


「俺も・・・HISASHIの事・・・好き」


「て・・・る?」


信じられなくて呆然とするHISASHI。


そんなHISASHIを見てTERUが恥ずかしそうに、そっとHISASHIの口唇にキスをした。


一瞬触れるだけのキスだったが、HISASHIを信用させるには十分な薬だった。


HISASHIはTERUをギュッと抱き締めて耳元で囁いた。


「夢みてぇ・・・」


「俺も・・・」


身体を離し顔を寄せ額をくっつける。


「俺達同じ誤解してたんだな」


「馬鹿みたいだね」


そう言ってクスクス笑い合う。


そして今度はHISASHIからそっと口唇を重ねた。


SIDE TAKURO&JIRO

HISASHIが出ていった楽屋にはTAKUROとJIROが取り残された。


TAKUROはJIROの隣にドカッと座った。


『どーやってきりだそう・・・』


『うわぁ〜TAKURO君とこんな側に・・・。ドキドキするよ〜』


互いに自分のことで頭が一杯で、暫くは会話もなくシーンとした空気が流れていた。


『ま、なるようになるかな』


そう思いTAKUROは口を開いた。


「なぁJIRO・・・・JIROってHISASHIと付き合ってんの?」


突然のTAKUROの言葉に声を張り上げるJIRO。


「何言ってんのTAKURO君!!!」


「いや・・・最近いつも一緒にいるし仲いいからさー」


JIROの反応に少なからずホッとしているTAKURO。


「HISASHI君とは・・・何て言うのかな。似た者同士っていうか・・・同じ悩み持った仲間みたいなもんで・・・。HISASHI君はちゃんと好きは人いるし・・・それに僕だって・・・」


最後の方は小さくてはっきり聞こえなかったが、TAKUROは聞き逃さなかった。


『・・・そっか・・・・・HISASHIと付き合ってなくても好きな人くらいいるよなぁ・・・失恋決定かな』


JIROは自分のさりげない告白に恥ずかしくて顔を赤くしてうつむき、TAKUROはそんなJIROの言葉に天井を仰ぎ見ているため、互いの表情なんて見ていなかった。


『今俺の想いなんか告げたら、JIRO・・困るよなぁ。困らせるくらいないっその事言うのやめよ・・・』


『TAKURO君、こんくらいじゃ気付いてない・・・よね。あーもう、なんでTAKURO君とこんな話してんだろ、僕・・・』


好きな人と好きな人について話す事に、心臓がバクバクいっているJIRO。自分の想いを抑えるのに必死である。


そんな時TAKUROがJIROの頭に手を置いた。
「TAKURO君?」


ちらりとTAKUROの方を見る。TAKUROはニッコリと笑って言った。


「・・・頑張れ」


その言葉にJIROの気持ちは抑えが効かなくなった。TAKUROに抱きつく。


「じ・・JIRO?!」


突然のJIROの行動に驚くTAKURO。


「好きっ!」


「えっ?」


初めはJIROの言ってる事が解らなかったが、理解した途端TAKUROも自分を抑えきれなくなり、JIROの顎に手を当てて上を向かせ口付けた。


「んっ・・・」


少し苦しそうにJIROが声を上げる。


口唇を割り舌を絡める。暫くしてようやくJIROを解放した。


「何・・・で?TAKURO君・・TERU君と・・・・・付き合ってるんじゃないの?」


荒い息のまま途切れ途切れにJIROが言った。


「まさか。なんで俺がTERUと」


「だってTAKURO君、TERU君に優しいもん」


スネた様に口唇を尖らせてJIROが言った。


「TERUとはね〜、付き合い長いからいつの間にか世話役みたいになっちゃってるんだよねぇ。それにTERUは親友だよ」


笑いながらTAKUROが言った。そして真剣な顔でJIROを見つめた。


「好きだよ、JIRO」


「・・・ホント?」


まだ不安そうな顔でJIROが言う。


「あれ、信じてくれないの?もっかいキスしよっか?」


そう言って微笑むTAKURO。


JIROは真っ赤になってうつむきながら呟いた。


「・・・苦しいのはヤダ」


「ハイハイ」


TAKUROは今度は触れるだけのキスをした。口唇を離し互いに見つめ合う。


「JIRO、俺がTERUと付き合ってると思ったんだ?」


「TAKURO君だって、僕がHISASHI君と付き合ってると思ったんでしょ?」


「とんだ誤解してたんだな」


「そうだね」


そして二人でクスクス笑い合った。


TERUとHISASHIが楽屋へ戻ると、TAKUROとJIROが何やら楽しそうに話をしていた。


「あ、HISASHI君。うまくいったの?」


TERUと仲良く入ってきたHISASHIにJIROが言った。


「あぁ、もしかしてお前らも?」


「うんっ」


返したHISASHIの言葉に嬉しそうにJIROが頷く。


『何だ、TAKUROってTERUの事好き何じゃなかったのか・・・』


今の今までTAKUROの好きな相手はTERUだと思っていたHISASHI。


「よかったなTERU」


TAKUROがTERUに言う。


「TAKUROもね」


TERUもTAKUROに返す。


「HISASHI君聞いてよ!あのねTAKURO君たら僕とHISASHI君が付き合ってると思ってたんだよー」


ちょっと膨れてJIROが言った。


「えっ、TAKUROも?実はTERUも俺達が付き合ってるって誤解しててさぁ」


HISASHIが笑いながら返した。


「そういうHISASHIだって俺がTAKUROと付き合ってるんじゃないかって言ってたじゃん!」


HISASHIの言葉にTERUが突っ込む。


「へぇ〜JIROと一緒じゃん。JIROも俺とTERUが付き合ってると思ってやきもち焼いてたんだよねー」


JIROのほっぺたをつつきながらTAKUROが言った。


「やいてないもんっ!!!」


ぷぅっと膨れてJIROが叫ぶ。


「何だ・・・皆して同じ誤解してたんじゃん」


HISASHIがぶっきらぼうに言った。


「そーだな・・・」


「バカみたいじゃん」


TAKUROが頷きJIROが突っ込む。


「あはははは」


TERUが笑い出したのをきっかけに、四人一斉に笑い出した。

終わり。


ユズルさん、どうもありがとー!!!!素敵なヒサテル&タクジロだわ!!!

水流としては一気にどっちも読めてマジでごちそうさまて感じDEATH。ありがとう!

なんかねー。ヒサシさんのキャラが好き☆あと、じろちゃんかわいすぎ!!!もうかわいい〜。じろきゅ〜☆

ああ、今日はじろちゃんが出てきそうな予感・・・。

たくろ〜くん(愛)大好きだよぉ〜。

オレもだよ?

もうテル君に必要以上に優しくしないでね?

わかってるよ!!!もうてるなんか、ゴミ箱に捨てちゃうって!

・・・タクロウ。オレって・・・ゴミ?

はうあ!

ああ・・・。たきゅ。今からヒサシさんに殺されるのね・・・。(哀)

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