スチームボーイ(2004/日)
「AKIRA」で世界的に名を馳せた大友克洋の16年ぶりの最新作。
「面白かったか?」と聞かれれば素直に「面白かったよ」と答えるのですが、
大絶賛というにはちと厳しい・・・そんな印象でした。
発明好きな少年・レイとワガママでプライドの高いお嬢様・スカーレットが19世紀のイギリスで繰り広げられる冒険活劇。
巨大な力を巡って父と祖父の間で揺れ動くレイの心の変化がストーリーの中心になっていくのですが、
このストーリーとキャラクターの描写がイマイチでした。
父も祖父も、スカーレットにしても自分の考えや立場から全く動こうとせずに言いたいことだけを喋っているだけという感じのため、
ヒロインのはずのスカーレットでさえもその言動がレイに影響を与える訳でもなく、ただストーリー上「そこにいるだけ」というキャラクターになってしまっています。
各々のキャラクターの声の違和感もその「イマイチさ」を助長してしまってますね。
鈴木杏、小西真奈美、その他の面々のキャスティングも各方面で言われているほど「下手」ではありません。
小西真奈美などはスカーレットとよくシンクロしていたと思います。
しかし、プロの声優さんには遠く及ばないのは事実ですし、個々の役者さんたちが普段舞台などで話している時よりも
はるかにぎこちない演技になってしまっていたのも事実です。
何故、プロの声優ではなく俳優やタレントをキャスティングするのか?
そのあたりは大人の事情もあるのでしょうが、制作費24億円もかけておいて
この声のクオリティは落胆せざるを得ません。
対して、映像面のクオリティは流石に目を見張るものがありました。
細部まで描きこまれた歯車やケーブル、鋼鉄城の壮大なビジュアルは素晴らしいものでした。
先に「イノセンス」を観てしまっているため、正直なところ斬新さや新鮮さはありませんでしたが、
それでも画面いっぱいに描かれる存在感は流石ですね。
「映画」として見る分には確かにアラやツッコミどころが多い作品ではありますが、
今や質より量と化してしまって「絵的には今風のタッチで綺麗だが枚数が少なくて動かない」
という状態になってしまったTVアニメの市場を考え直す意味でもこの作品は視聴の価値があるのかもしれません。
「AKIRA」を見て衝撃を受けた人は、「AKIRA」というフィルターを通してこの作品を観てしまう為、
どうしても無意識にアラを探してしまうと思います。
しかし、今作が初めて大友作品に触れる機会となる人ならば、充分に衝撃を受けうる作品だと思います。
少なくても家庭用TVで「AKIRA」のDVDを観るよりは劇場で「スチームボーイ」を観てみるべきかと。
評価:☆☆☆