手堅い映画を作ることで定評があるロン・ハワード監督作品ということでかなり期待していた作品です。
ラッセル・クロウ演じるジム・ブラドックは世界恐慌の時代に必殺の右ストレートで負け無しのボクサー。しかし腕の負傷や事故などで負けが込み、資格も剥奪されて赤貧の生活に家族ともども堕ちていきます。
そんな彼にヘビー級ボクサーのかませ犬としての依頼があり、皆が負けると思っていた試合になんと勝利し、再び栄光への道を登り始める、という事実を基にしたストーリーです。
この映画の主人公であるジムは、今までのボクシング映画の主役たちとはかなり雰囲気が違います。映画にありがちの「アメリカンドリームを掴んでやるぜ!」というノリでボクサーズロードを突き進むというわけではなく、ただ「家族のために」自分にとって一番稼ぎのいい職業だからボクシングを選ぶという現実的な理由で彼はリングに立つのです。
そんな彼が主人公なので、話も彼の家族を重点的に描いてました。恐慌で貧困に喘ぐ子供たちの食費を稼ぐために骨折を隠し通してリングに立ち、光熱費を払うために自分を見限ったプロモーターにプライドを捨てて無心に行く。そんなジムの純粋さ、家族を思う気持ちには胸を打たれました。 そしてそんな彼が傷つくのを見ていられない奥さん、自分の家財道具を売ってまで彼をバックアップするプロモーターのジョー(彼を演じたポール・ジアマッティが良かった!名優ですね彼は)とその奥さん、彼の戦う姿を必死に応援し勝利を祈る労働者仲間たち。明日の糧にも困る恐慌時代の厳しさを描きつつ、その時代で必死に生きていく人たちの姿を「家族」という単位で見せてくれる作品でした。
そうして話自体は非常に重いのですが、地味地味になりがちな展開に華を添えてくれたのがボクシングの試合シーンでした。
カメラワークが格好よく、迫力があります。本当にボクシングの試合を観ているかのような気にさせてくれました。実際、試合中は身を乗り出している人が観客に結構いましたよ。
気になった点も無くはないです。
ボクサーの年齢…ジムが実際に復帰した年齢は分かりませんが、ちょっとラッセル・クロウでは老けすぎてはいませんか?たとえかませ犬としての人選だったとしても引退した40代のボクサーを実際にプロモーターが連れてくるとは思えません。ラッセル・クロウは格好よかったけれど、せめて30代の俳優にすべきなのでは?
疲れない主人公・・・この時代ってフルラウンド15Rもあったのですか?30分ってことですよね?出戻りの選手が30分戦い詰めで最終ラウンドになっても全く足がふらつかないのはどうして?普通にボクシング見てると3Rあたりで足元が怪しくなってくる選手もいますよ?
ふくよかな奥さん…奥さんを演じたレネー・ゼルウィガーという女優の演技はなかなか名演技で印象的だったのですが、電気もミルクの配達も止められて、暖をとるために薪を盗んでくるような生活状況なのに、奥さんあまりやつれてなかったのはどうしてかしらん?
とまあ、全体的な出来からすれば些細な点ですが、気になったので挙げておきますね。
試合以外の話が暗く地味な話でイマイチメリハリがありません。特筆すべきポイントも少ないですし、長く感じる人もいるかもしれませんが、ロン・ハワードらしいといえばらしいです。「バック・ドラフト」や「アポロ13」で見せた監督の作風が好きな人なら、きっと気に入ると思います。
評価:☆☆☆☆