アビエイター(2004/米)

 ハリウッドと航空事業で一代の財を成し遂げた大富豪、ハワード・ヒューズの生涯をディカプリオ主演で描いた超大作です。3時間近い長さで前評判もあまり良くなかったのでどうしようか迷っていたのですが、いざ見てみると、確かに長すぎて疲れはしますが、全体的にはしっかり作られた作品だと感じました。

 では何が不評なのかというと、主人公であるハワード・ヒューズそのものに感情移入しづらいのが原因ではないかと。ハワード・ヒューズという名前自体、映画業界か航空業界によほど古くから従事していないと聞いたことが無い人のほうが多いのではないでしょうか?
 そして本人は生まれながらに大金持ちで性格もかなり我侭で極度の潔癖症で好色。感情移入すること自体が難しい人を伝記の主人公に選んでいるのではないでしょうか。

 アメリカ人なら誰でも知っているのかもしれませんが、日本人はおそらく大部分の人が知りません。日本で親しまれる「伝記」は若い頃にとても苦労して、晩年に花が開いて評価されるというパターンが多いのですが、今作の彼は生まれつき大富豪でお金を思いつきだけで運用しているかのごとく湯水のように使います。
 そしてそれらの事業が成功しているようにはとても画面上からは感じられないんですよね。「地獄の天使」はプレミア(試写会)では喝采を受けていましたが、、その後「叩かれた」といった台詞が出てくるので「興行良くなかったのかな?」と感じてしまいますし、航空事業も大口契約を取りまとめた描写といったものが無く、ピンチの場面しか出てこないので「転落一方なのにどうしてお金が尽きないんだろう・・・?」と何度か疑問に感じてしまいました。
 実際はそういった描写もあったのかもしれませんが、展開が速く密度も濃いので字幕を追うので精一杯という問題もありますね。普段字幕で見ている人は自分では細かいところまで見てるつもりでもどうしても見落としがあるのが辛いところです。

 とはいえ結構楽しめたのも事実です。ディカプリオとケイト・ブランシェットの演技は巧かったし(後半のドア越しの会話が良かったです)、劇中に数度出てくる「新機種での初飛行」のシーンが毎回とても綺麗な風景とダイナミックなカメラワークでドキドキしました。ラスト間際になって疲れてきた頃に始まった公聴会もハワードの皮肉タップリの反論が楽しかったです。ある意味ここが一番の見せ場だったのかもしれません。
 ラストはいきなりプチっと終わってしまって「あれ?」と思いましたが、あれ以上続いても困るのでまあいいです(笑)。

 主人公が観客である「一般庶民」との共通点が全く無いので、見ていて感情移入は全く出来ないのですが、話自体はしっかりまとまっているので「伝記」としては楽しめると思います。後半のサイコっぽい精神状態の描写は「彼の転落」とも見られますが、彼の普段の精神にかかる重圧などを推測すると、彼が飛びぬけて強い精神力を持っていたからあの程度で済んだのだと受け止めることも出来ますね。

 ただまあ、本なり映画なりで伝記を見たときの「ああ、この人はなんて立派なんだ、俺も見習おう」という月並みな感想が全く沸いてこない伝記というのも不思議な作品ではありますね。

評価:☆☆☆

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