圧勝


開店間もなく、鬼のような形相で一心不乱に俺の方へ
歩いてくるお客さんがいました。

「ちっ!今日はついてねえな!」

などと呟きながらも、いつもどおりの営業スマイルでお客さんをおで迎え。

「いらっしゃいませ〜、どういたしました?」
「どうもこうもせんわ!おまえんとこは客にこんな不良品売りつけるんか!」

最近クレーム処理係となりつつある俺にとってはこんな罵声なんのその
逆に闘志が沸いてきます。
落ちついて事情聴衆開始。

「とりあえず、どのような事か教えてくださいませんか?」
「この電卓スイッチ入れてもつかへんのや!不良品や!」

ほうほう、なるほど確かにスイッチ入れてもうんともすんとも動かないですな〜
ここで俺の頭に二通りの選択肢が浮かんできました。

俺は後者を選びました。
よく見ると、電池のフタのよこから透明な薄いフィルムが顔を覗かしていました。

よっしゃ!俺の勝ちや!

「お客さん、このフィルムを抜かないと、いくらスイッチ押しても動きませんよ」
「そんなアホなことあるかい!」

実際にやってみせようとしましたが
久々にお客さんに対してマウントポジションをとれた喜びに
もう少し浸っていたかったので、もう少し泳がすことにしました。

「ですから、このフィルムが電池と電極板の間に挟まっているから電源が入らないのですよ」
「そんなん素人にはわからへんわ!」

わはははははははははははは!
めっちゃ気分いいですわ〜

さらに調子にのってこんなこともやってみました。

「お客様、ちゃんと説明書読みましたか?」
「何度も何度も読んだわ!」

バーカ!
その商品、説明書なんてついてねえんだよ!
嘘つくんじゃねえよ!

もう少し泳がせたかったのですが、お客さんの顔色が
赤黒くなってきたのでトドメを刺すことにしました。

「それじゃ、実際やってみますね」

フィルムを抜きスイッチを押した瞬間
液晶パネルにみるみる色が付いてきましたが
お客さんの顔はみるみる色が抜けていきました

「うっぐ・・・・」

事実を見せつけられた事にお客さんは絶句。
すかさず俺は

「まあ、確かに分かりずらいですね」

と、優しくお客さんをフォローしてさしあげましたが、心の中では


バーカ バーカ バーカ バーカ


とエコーしっぱなしでしたけどね。
久々の圧勝でした。