れいめい塾のホームページ 三重県津市久居 学習塾 れいめい塾
DEAD END

2002年10月第三週


10月20日

寛水流空手の全国大会が塾のすぐそば、久居市体育館で開催される。
全国大会が久居で? 奇異な感も否めないが、現在館長を務める世古氏が久居近郊の嬉野町在住ということが大きい。なにしろ町の給食センターに勤めながらの二束の草鞋、オーストラリアにも支部があり全国大会には外国人選手が大挙来日。その世話を肝っ玉母さんを彷彿させる奥さん共々、一手に引きうけている。到底東京や大阪で開催とはいかない。しかし、こんな片田舎まで創始者の一人であるアントニオ猪木は毎年必ず姿を見せる。
アントニオ猪木が、知名度の点で今一歩及ばないジャイアント馬場に追いつけ追い越せとばかりに、あえて『実力日本一』を標榜していた時期があった。「腕に自信がある奴は誰でもかかって来い!」とタンカを切ったまではよかったが、名古屋在住の空手道場の館長、水谷氏が挑戦。マスコミからは昭和の巌流島と揶揄されながらも、二転三転。実現目前にまでこぎつけたものの、結局はご和算に終わった。しかしこの過程で、当初いがみ合っていた両雄はいつしかお互いに尊敬の念を抱くに至り、その結果旗揚げしたのがフルコンタクトの寛水流空手である。寛水流というネーミングもまた猪木寛次と水谷からそれぞれ一字ずつ取って命名された。
これ以後、全国大会になると壇上ではアントニオ猪木が「いち・に・さん、ダー!」と気合を入れるのが恒例の風景となった。

津西高2年のナオツグは、この館長の息子である。

ナオツグがウチの塾に入った小5の時からずっと俺はナオツグの試合を見続けている。5年前のウチの広告に俺と娘がアントニオ猪木と撮った写真がある。これはその年の寛水流全国大会でのスナップだ。

例年ケガ人が出るウチの塾のカラオケ大会。ナオツグが津西に合格した当日夜の大会では俺がナオツグにケンカを売った。お母さんから「先生のことやから今日は空手の試合しよやってからんでくると思うけど、酔っぱらいを相手にしたらアカンよ」と厳命を受けていたにもかかわらず、しつこい塾の先生のインネンに業を煮やしナオツグ登場。当然、俺はメチャクチャにどつかれアバラ骨に亀裂骨折を負う羽目に・・・。

この日はデンちゃんが大阪から襲来。今回持参の難問は相似、恒例のごとく中3の阿鼻叫喚の様を眺めてはニタニタしている。午後4時前にナオツグの同級、菊山(津高2年)が雨の中を傘をさして歩いていく。「体育館か?」「ええ」「今年も優勝かな?」「たぶん」「そろそろ決勝か?」「さっき準々決勝やったから、あと少しで・・・」「俺も後から行くよ」
待ち人来たり! 塚崎(三重大学医学部4年)が姿を見せる。「花衣とアスカのことなんやけどな」 塚崎は今までのウチの講師とは雰囲気が違う。今風なのだ。今までがどちらかと言えば、やっと苦労して医学部に入れました!なんてタイプ。実際、二浪三浪の巣窟とも言える。三浪の末に後期英語1教科入試で入学した黒田君と話していると人生が切なくなってついつい正座してしまいそうになる。そんな修行僧軍団に対し、塚崎は刈谷東高の野球部でレギュラーを務め、夏の大会でベスト8まで進出。それから受験勉強を始めて本人の弁では「浪人するつもりだったんですが・・・なぜか、合格しちゃって」となる。風貌も茶髪でツンツンと、これまた今風の大学生。この初夏に開催した古野ドクター(伊勢市民病院勤務)の座談会。塚崎もそろそろ4年生、医師としての自覚を少しでも高めてくれればと、国家試験を控えた小田・高橋・黒田の6年組に塚崎を加え、怖くて楽しい古野先生の話を拝聴した。その古野先生、塚崎を見てひと言。「ジャーニーズ系やな。看護婦にもてるぞ」
花衣とアスカ、ともに各々の事情から理系なれど数学VCを切るかどうかの瀬戸際に追い詰められていた。俺の所見では心もとない。英語ならともかく、数学VCに関しては主治医は塚崎なのだ。
「単刀直入に花衣の数学の仕上がりどや? 今の段階で数学VCで突っ張れるやろか」 塚崎、この質問にはすかさず答えた、「まず、間に合わないと思います」「俺もな、無理やと思うねん。憧れだけの東京農工大獣医、今のレベルじゃ夢のまた夢。まあ、国公立獣医、どこだって超難関や。でも数学TAUBあたりで何度も途中下車してる花衣のこっちゃ。数学VCなんて到底辿りつけへんわ。となると岐阜大獣医一本やな。ここしかない」「アスカも切るって言ってるんですか?」「ああ、こっちは少々複雑や。夏休みにほとんどの時間をかけて数学と格闘したらしいけどモノにならんかった。こんな状況、数学に比重をかけすぎててはセンターで85%は到底無理やと言いよんねん」「志望変更ですか?」「いや、名古屋大学医学部理学療法は変わらん、けどセンター推薦を使うて言うねん」「センター推薦?」「ああ、俺も知らんかったけど、センター試験だけで後は成績書と面接や。定員は7名」「7名!」 塚崎の目が空をさ迷う。「でも王道の前期試験でも10名。どちらも同じようなもんや。けど、花衣とは違い、数学と格闘してきた分だけ数学VCで突っ張っても土壇場で仕上がる可能性もあるような気はすんねん」「確かに・・・」「でもさ、俺臆病なんや。アスカとは今まで何度もいろんなことでぶつかり話し合ってきた。アスカが流した涙はゆうに1リットル超えてるよ。だからさ、もうこれ以上は何もよお言わん。アンタに下駄を預けたよ」「わかりました」「それとこの時期にもなったことやし、今年の高3理系、だれが数学VCで勝負できるかな?」「祐輔と卓、あとはVCじゃないんですけど橋本、それ以外は・・・」 気が滅入ってきた。時計を見やる、午後5時を過ぎた。ナオツグのことを想った。

  

10月21日

南郊中と西郊中で中間試験が始まる。これで残りは1校、明日から始まる付属中で終了。

響平が英単語ターゲット1900の音読試験。ウチの塾の英単語プリントはB4サイズ1枚に180単語、これを俺が英単語を発音しすかさず日本語の意味を言っていく。1単語3秒(俺の発音1秒に加えて返答2秒)で3×180=540秒、つまり9分で1枚のプリントが終われば合格。これを響平、7分でクリアする。遅々として進まぬ卓を思う。「英語が時間内に終わりません」と泣きが入るものの、読解や文法など基礎はクリアしている。諸悪の根源はスピード、つまりはこのスピード、1単語3秒で記憶から単語の意味を取り出せればこの状況を打開できる。「響平、すげえな!」と誉めるものの、響平のテレのポーズか、そっぽを向いて壁とお見合いしてやがる。
この日から卓の英単語1単語3秒勝負が始まった。中3の教室の黒板には愛の字で『センターまであと90日』とある・・・。

高橋君(三重大学医学部6年)の数学を終えたナオツグが姿を見せる。「どやった、昨日」「はあ、なんとか」「今年も優勝しちゃった?」「はあ」「そりゃよかった。おめでとう」「いやあ・・・はは」「で、いつも決勝でぶつかっては名勝負やってた同じ道場のガタイの大きな子とはやったんかいな」「いや、高校からは軽量級と重量級に別れてるから・・・」「あ、オマエさんは軽量級やったな。でさ、昨日見に行けへんだんや。塚崎と話してた、花衣とアスカちゃんの数学VCを切るかどうかでや。申し訳ないがそっちの方が大切やった。結局は理系は一日でも早く受験生モードに突入せえってこと。花衣はともかくアスカちゃんはずっと受験生やった。でも結果的には数学VCを切ることになった。で、オマエや」 こと勉強の話に風向きが変わるとナオツグの表情、色香を失う。「今週末から大森先輩の古典の授業を受けろ」「古典ですか?」 ネタが数学だったはずなのによりによって古典とは・・・俺は理系やで!と顔に書いてあった。「古典や古典、とにかく理系やからこそ、高2のうちに英語と国語をつぶしておくんや。覚えるもんを今のうちに覚えておいて、高3になったら理系やからこそ数学・物理・化学なんかをひたすらする。問題はひたすらする時間があるかどうかや。今年の先輩みたいに国語や英語で時間を食われたら理系教科に十分な時間が割けない。ええか、来年3月までに古典の動詞・形容詞・形容動詞の活用、助動詞と助詞、それに古典単語、昔甚ちゃんが作ってくれた理系向きのあっさりしたプリント4枚、こんだけや。これを今週から3月までみっちりする。後はいい、高3になったら新しいことはせずに今言ったことだけを忘れないようにディフェンスする。週に1度、テストをしていく。最低限、その時間だけは捻出しろ。英語も同じや、とにかく3月までにセンターレベルを攻略する。後は週に1度、英単語や熟語、桐原2章なんかをテストしていく。わかったか」 ナオツグ、こヤツには珍しく神妙な顔で頷いた。ナオツグと菊山がウチの高2の理系。ナオツグは出戻り、高1の夏に先輩との軋轢から塾を辞めた。しかし半年後の高2に進学と同時に戻ってきた。そして菊山は高校入学後からずっと俺とは別居状態。塾を辞めないものの、俺の英語の授業を受けることはなかった、先週までは。菊山のことは稿を改めて書くつもり。ただ、生徒を育てるにはいろんな方法がある。お互いどうしが反目し合っていても育てることができればそれでいい。みんながみんな、仲良しこよしではその塾は腐っちまう。菊山とナオツグ、K1に衝撃的デビューを果たしたボブ・サップのようなもの・・・いや、キャラ的には新日本プロレスを凌駕する魔界軍団か? 最後に聞いた、「今年の大会にはアントニオ猪木先生、来んかったみたいやな」「ええ、ロサンゼルスの道場の方が忙しくって今年は来れないって電話ありました」「猪木から?」「ええ」「あんたの自宅に?」「ええ」

10月22日

先週来、高橋君が国家試験の参考書やら卒業試験の教科書やら持ち込んではウチの塾で篭城している。ここ1年以上も試験がなかったとかで受験生のリズムを忘れてしまったという。つまりは集中力に欠き、机で長く勉強できなくなったわけだ。こんな時はウチの講師、塾に自分の場所を築いては他者の視線を背中に感じながら勉強する。自分達が教えている生徒がいる、そんな生徒の前で無様なことできやしねえ。つまりは自分を勉強せざるをえない状況に負い込む。医学部の講師がウチに密航してきてから12年、高校生の合間で医学部の学生が勉強する・・・この時期のウチの塾特有の光景になっちまった。

「いやあ、マズイですよ」と高橋君。「アスカちゃんのとこで勉強してるんですけどね、僕がコーヒー飲みたくなって2度ばか席を外したんですけどね。その間、アスカちゃんずっと同じ姿勢で勉強してます。マズイですよ、僕負けてますよ」

圭亮(早稲田大学4年)が姿を見せる。「先生、お騒がせしましたがやっと合格しました!」

圭亮は鷲田清一という社会学の先生に触発、自分の生涯を社会学の研究に捧げようと決意した。ところが、こと社会学となると早稲田より立教の方がランクは上。このあたりの大学院ランク、大学入試とは別世界。進学指導にあたっては大学院ランクを頭に入れておく必要がある。ゆえに圭亮の本命は立教大学、そして安全牌として早稲田大学。試験は早稲田からスタートしたものの不合格。同じ大学の院に進学する場合、下駄をはかせてくれるのが常。しかしそんな安全牌の早稲田に落ちたことから、それまで圭亮の面倒を見てきた大西君の口調がキツクなる。「あいつ、英語やってへんからな。これで立教勝負か、きついな。立教は学内生も取るけど下駄をはかせへん。逆に言えば、こと社会学に関しては他の大学生に負けるはずがないという自負。そんだけ自信があるんですわ。圭亮きついな」

圭亮の口調は滑らか。「やっぱり早稲田に落とされた時はショックでしたけどね。そっからエンジンかかったかな。ターゲット1900を買ってきて必死で覚えましたよ。今度は大西さんの番やな、大西さんも英語やらんときついでしょ」 主客転倒、大西君の反撃いかに?

10月23日

夕刻になり大西君から電話。「今からそっちへ行きます」「何かあった? さては圭亮の下克上発言にお灸を据えてやろうってか」「圭亮? どうかしたんですか、あいつ。先生、それより恵(高田T類3年)や恵、あいつの京都女子の自己推薦書に手を入れたらなアカンねん」「大学の方はええの?」「なんとか済ませましたから、今日から塾に泊まり込みますからよろしくお願いします。今から衣笠を車で出ます。恵に新しい塾へ来るように言ってください!」

俺より熱心な講師達に恵まれ、俺は複雑な心境でキーボードを叩いている。

この日から某塾の先生がウチの塾に化学を習いに来ている。ネタを振られたのは久居農林高校の説明会の時のこと。
「高校生の数学と英語なら教えれるんですけどね、化学になるといけない。答えを見ながらああかこうかとやってやんですけどね、自宅で勉強していても自分に甘えが出ちゃえでしょ。だからここは心気一転、れいめいさんで大学生の学生さんに教えてもらおうかなと・・・」
熱心な先生である。真摯な姿勢に対して尊敬を覚える。
担当は横田、ウチには鬼より怖い小田君の推挙で密航してきた医学部の4年生。8時45分にこのN先生が見えて、少し送れて横田登場。N先生の計画では来年3月までに化学を一通り履修したいとのこと。後は二人で相談、さっそく1発目の授業に突入。
国家試験を受ける医学部の学生が高校生の間に埋もれて勉強する今までの光景に、新たに塾の先生が勉強する光景が受験の持つ色合いを増してくれる。できればウチの高校生、勉強したくなくなると「親が言うから大学に行ってやるんや」という逃げ道に迷い込む高校生たちに静謐な風を吹かせてほしい。

午後9時から大西君、恵の自己推薦書の指導を始めた。長い夜になりそうである。

10月24日

やたら元気な上野征希から電話。午前10時だ。征希、目覚まし時計顔負けの勢いで「今から行きます。いっしょに飯でも食いましょう!」 かんべんしてよ、泣きが入る。

大西君と二人で恵の自己推薦書の下書きに付き合っていた。一応メドが立ったのが午前5時、それから送って帰ってからベッドにもぐり込む。そして目覚まし時計のお出ましである。「なんや、この教室暑いな!」と大音響でまくしたて、窓という窓を次から次へと開けていく。机の上の計算用紙、桜の花びらのように飛び散らす。征希、オマエは歩く目覚まし時計やで。

久しぶりに奥さん呼び出し大西君、征希と4人で飯屋へ。場所は宮池近くの昔小僧寿しがあった店舗の並びの飲み屋『酔多話』。こんな店がランチやってたなんて今まで知らなかった。コーヒー付いて580円。安いなと感心してたら、横に日本酒・ビールが付いて880円とある。よもやと思っていたら征希、「日本酒頂戴!」 負けられへんわいと「俺も!」 塾の先生、教え子には絶対負けるもんか!ちゅう悲しい性やな。

昼食の時に皆が飯を吹き出しかけたネタを・・・。ウチのホームページで毎日日記を書いている山本愛の作文の話だ。「賞味期限の話あっただろ?」 皆が頷く。なにしろ俺の日記より面白いと評判である、クソッ。「あの賞味期限、ホンマは1週間やなくて二週間やったんやけどな」 これには皆、受けない・・・クソッ!教育の成果ってか。「でさ、愛なんやけど賞味期限の漢字間違いよってさ、これが消味期限。なんかが消えるていう字、それで消味期限! 味を消してどうするねん」 これには場がドッと沸いた。

午後2時に塾に戻ると大森弟(津西2年)が車から降りてくる。「なんや、こんな時間に」「試験中ですけど・・・」「そっか、津西は中間試験やったな。で、明日の試験は何や」「英語と古典」 俺は大西君と顔を見合す。大森の英語担当は俺で古典担当は大西君。「こいつ、俺達の食後の平和なひとときにまで仕事させよる気や」

午後8時、再び大西君は恵の自己推薦書と格闘を始める。

午後9時、高橋君が山のような教科書持参で登場、そしていつものように篭城を開始・・・。古い塾では塚崎が高3相手に数学VCを開始。

征希がやって来てはホームページ上で公約した福井の旅日記の下書きに勤しむ。俺の仕事が一段落ついたのを見計らうように、「じゃあ,先生」 週に1度の施術が始まる。「堅いな・・・この背中の堅さは僕の患者さんのなかで一番ですよ」「ヘンなことで誉めるなよ」

深夜1時、高橋君がやって来る。「先生、今日はこれで・・・」 俺は本棚から昨日買ったばかりのマンガ『ブラックジャックへよろしく』を手に取る。「高橋君、第3巻出たよ」「そうですか・・・借りていいですか」「ええよ」 高橋君、マンガを手に取りボソリとつぶやく。「実はね、明日は試験なんですよ」「ええんか」「ええ、・・・でもサッカーの朝練もあるんですよ」「そりゃ大変や」「ええ・・・でも、う〜ん・・・今夜はあまり眠れないかな」 ボソボソ言いながらドアの外へ出て行く。

                トップページに

れいめい塾のホームページ 三重県津市久居 学習塾れいめい塾のホームページ 三重県津市久居 学習塾リンク集 れいめい塾 三重県津市久居 学習塾一覧表:れいめい塾発『25時』 三重県津市久居 学習・進学塾『 HARD & LOOSE 』 れいめい塾 津市久居れいめい塾の日記(関係者ブログ集) 三重県津市久居広告一覧 れいめい塾 三重県津市久居 学習塾 進学塾サイトマップ|れいめい塾 三重県津市久居 進学塾&学習塾
当ホームページに掲載されているあらゆる内容の無許可転載・転用を禁止します。
れいめい塾のホームページ 三重県津市久居 学習塾Copyright(c) 2000-2009.reimei-juku. All rights reserved. Never reproduce or republicate without permission
ホームページ管理:橋本康志橋本クリニック|皮膚科(皮ふ科)|広島県呉市の皮膚科(皮ふ科) 日曜診療 ゆめタウン呉