れいめい塾 発 「25時」 2000年9月25日 背景が白の場合はまだ作業中ということで・・・。 アキラにターゲット1〜800のプリントを宅急便で送ったのは9月4日のこと。大学受験基本単語を完璧に覚えることが急務だった。しかしその後、オヤジがウチのHPのBBSに「AKIRA ふぬけ」と題してアキラの近況を知らせてきた。それによればアキラは学園祭の準備をクラスメートから頼まれ、引き受けたもののその楽しさにはまりこみ勉強どころではなくなり学園祭が終わった今も虚脱感が支配しているとのこと。オヤジは最後に「ネジまけるかな?」と俺に暗黙のプレゼンをしていたようだが、それはアキラの勝手だ。俺はひと夏を古い塾で過ごせたというキャリアだけでアキラと付き合うつもりだ。過大評価も過小評価もするつもりはねえ。ウチの生徒ならこうすべきだとの判断に基づいてこれからも宅急便の世話になるつもり。 今年の中3は男子ばっかり、そこへ亜沙美ちゃんが夏期講習から引き続き塾を続けることになった。ちなみに亜沙美ちゃんは中1から中2の1学期までウチにいた。基礎力は十分にある、中1当時は470点台を叩いていたくらいだ。課題は中2の後半からの理科&数学。志望は津西、夏期講習の前半では偏差値47あたり。しかし最終週に実施した過去全県模試では偏差値60あたりまでやってきた。つまりは津西を射程距離に捕らえた実感はある。ただ亜沙美ちゃん、男ばっかのなかでうまくやってくかな?との不安もある。 紘が三重選抜に選ばれ、なおかつ津高の志望を変えないことから中3の指導方針に多大なる変更を余儀なくされる。つまり最短距離で高校受験に臨む必要に迫られる。今までは無駄を良しとしてきた。回り道をしてもいいから自分で工夫してほしい。それをウチの塾生の望んだ。しかし今の紘にとって無駄な時間は極力避けなければならなかった。9月15日、福岡県入試問題英語を皮切りに入試問題に入り込んだ。当然内容を吟味して難易度の低い順に解いていく。続いて青森県入試問題、ここは理科と社会が全国で最も易しい。エネルギーや地層などの未履修範囲は予習として解説していく。最低限の理解事項は翌日までにプリントを作製、テストをした。数学は愛知県と青森県の入試問題を並行して解いていく。夏期講習で二次関数&三平方まで教えてあり、9月からは円を教えていたこともあり、意外と高得点を叩いている。確率や新傾向問題(数列系)も変に知識を入れることなく身近な問題としてナチュラルに解かせてみたかった。例年ならば冬休みあたりから中3をグループ分けして5教科担当を決め、全国入試問題を北海道から沖縄までリサーチさせる。そして三重県入試問題の傾向を調べさせて、三重県の傾向に合う都道府県の問題をピックアウトさせる。ウチの生徒たちはこの作業を全て自分たちでやっていく。そして自分たちで出題範囲を予想し各教科担当の責任者が発表する。この発表、鈴鹿英数学院がテレビで直前予想を行う日の昼に実施。夜になって鈴鹿英数の番組を見る。「俺たちの予想のほうがシビアだ・・・」とは去年の中3の発言。しかしこれが今年、3か月も前倒しになった。そして生徒たち主権ではなく俺の手が入ることになった。その意味では少々残念。だが仕方がない。果たしてこの速い展開、吉と出るのは凶と出るのか・・・。 塾の3階、中学生の教室の黒板に高校の文化祭の予定が書き込まれた。9月10日、津東高。15日、津高。23日、津西高。そして「行きたい高校へ行ってみよう! きっと新しい発見があるよ! by 14期生」とある。23日、俺は娘たちを連れて津高の文化祭へ足を運んだ。思えば上のレイ・メイは幼稚園に入る前から連れてきていた。しかし来年から中学、今年が最後となるだろう。大輔がお化け屋敷のプラカードを持って歩き回っていた。噴水脇の視聴覚室の壁にもたれて150円の焼きそばを食べた。こんなまずい焼きそばを食べた覚えはない。文化祭というのを差し引いてもひどかった。紘は三重選抜の遠征があって来れない。しかし隠れ津高?のウチの生徒たちがポツポツ姿を見せていたようだ。 甚ちゃんが土曜日深夜、ブラッと姿を見せた時に俺は高2と高3相手に現代史の授業をしていた。夏休み中に通史をザッと終えていたこともあり問題演習に入っていた。早稲田・慶応・立教・関西学院・関西あたりの問題の解法が始まる。ここで高2のアキちゃんと中井が80%以上の得点を叩き出していく。ポロポロと落とす高3の今井と波多野と見比べ「どっちが高3かわからんわ!」と皮肉を言っちまう。授業が終わって甚ちゃんが言う。「今のうちからあれだけできたら来年何をやるかですよね、確かに高2にすりゃ上出来。来年の2月にも入試できるほどのデキ。しかし逆にそれが恐い。今からあれだけ出来たら来年の展開が読めない・・・」 「そやな、今考えてるんは『東京裁判』とか柳田龍雄著の『重臣達の昭和史』とか、そんな類の本を読ませようかと思ってるんやけどな」 「・・・なるほど」 9月18日、高1ターゲット試験が午後9時から始まる。高2は黒田君の英語の授業のため午後11時からスタート。午後10時半に電話・・・アキラの声だ。「ボス、おる?」 「オマエな、ひと夏お世話になった人の声も忘れたんかい!」 「いや、電話では声が変わるな」 懐かしい福井弁の響きだ。「どやった?」 「あのな、2日前にプレテストをやってみたんや。そやったらミスが500からあってな、そやって必死になったわ。今日のミスは145。まあ、自分じゃ頑張ったなって思うぞ」 「まあ俺が予想したミスの数はもう黒板に書いてあるぜ、ミス128や」 「おおっ」 「しぶいやろ。でも、こんなんじゃアカンわい」 「うん、来週にでもまたやってみるつもりや」 「そうか、じゃあ、ウチも誰かをさせたるわ。まあ、頑張れよ」 「はい」 ターゲット1〜800試験結果 1055問 ミスの数 高2 中井 77 砂山 69 村瀬 10 アキちゃん 44 隆哉 764 仁志 膨大 高1 佑輔 218 あすか 254 大輔 569 健太 331 橋本 858 恵 536 允 142 卓 817 佳子 633 花衣 697 中1のスピーチが予想以上に加熱ぎみ。努力した生徒にはプレゼントをあげていることも関係しているのか?とにかく廊下の踊り場で延々とスピーチの練習をやっている。去年までには見られなかった風景・・・。高校生や中3が怪訝そうな顔で教室に入ってくる。この熱心さはうれしいが、なぜか今年の中1、毎日のように塾に来る。9月以降一日も休まずに来ている生徒が数人いる。中1から塾に毎日来るなんて・・・俺は複雑な気分で眺めている。ただ、この中1の熱気を利用して中2にもスピーチを導入した。下級生がやってるから、というセコさ見え見えのアプローチ。中2も最近塾の雰囲気が変わってきているのを感じていたようでそれほどの抵抗もなく第一回を実施。この時の脅しのセリフが「元気がなかったらカラオケ大会に連れて行くぞ」 やっぱり恫喝が効いたのか?ほとんど全員が無事に終了。高1の佳子と恵が審査員を務め、彼女たちのリクエストでやや元気がなかった明希と純菜がカラオケ大会に緊急参加決定。 村田君(三重大医学部5年)からメールが来た。「先生、腱しょう炎の具合はいいかがでしょうか??(すいません、しょうって漢字が分かりません。でも、いちおう医学生です) 来週は、学生時代の最後のバカンスのため、塾を休ませてもらいます。カラオケ大会には参加するつもりでおります。この前は不完全燃焼だったし、エンターテーナーの高橋も、きっと僕がいなければ寂しいでしょうから・・・。それではよろしくお願いします」 そして村田君はグアムへと旅だった。この旅行が終われば1年半後の医師国家試験を睨む日々が始まることになる。 小田君が言う。「先生、何か読む本ないですか?」 医学部の3年生、毎年のようにこの時期になると暇になるのか本を借りにくる。立花隆の「宇宙・地球・生命・脳」あたりを水を向けても敬遠ぎみ。やはりエンターテイメントがらみとなる。その意味では高橋君はウチの塾で村上龍を堪能し、今も熱中している。小田君のリクエストは司馬遼太郎。「『龍馬がいく』はありますか?」 誰かが持っていったのだろう、昔は全巻揃っていたが今は1冊もなし。「あれは長いからさ、何がいいかな。そや、花神がいいわ」 「どんな内容ですか?」 「あのな、昔の長州、今の山口県に全然はやらん医者がおったんや。村人がな、風邪ひいてやって来ても『しばらくほおっておけば治る』って無愛想に言い捨て、診察せんわけや。その医者は大阪に出て緒方洪庵の適塾に入り、塾頭を務めるるほどに語学、オランダ語やな、オランダ語に精通するんや。こいつの頭は書物の中の内容を頭のなかにビジュアル的に浮かび上がらせる才能がある。戦術の内容の書かれた本を読んで頭の中で戦闘シーンを構築できるんやな。そしていつしかこの技量を買われて宇和島藩お抱えの武士に取り立てられ、さらに長州藩の陸軍の責任者になっちまった。驚いたのは村の人達や、あんな無愛想な村医者が長州藩の陸軍の総指揮官になったってね。しかし、この総指揮官、村医者やったから兵馬の素養がない。馬に乗れへんからいつも軍隊の後から着いていくんや。そしてこの男が幕府軍を壊滅的に叩き潰すんや。どや?おもろそうやろ」 ここまで言っちまうと読む気が失せるんじゃないかと思ったが、小田君「花神」を借りるという。しかし上中下の3冊が、中巻は2冊あって上巻がない。俺は小田君に千円札を渡して頼む。「すまんけど、どっかの本屋で上巻買ってよ」 橋本(高田U類1年)のお母さんから電話をいただいた。それによると橋本が高2で生物を選択するかどうか悩んでいるとのこと。意外な気がした。橋本は理系のスペッシャリストたりえる可能性を秘めている。BBS上で展開しているノッチン(大阪工業大学教授)からの「円錐はなぜ3で割るか」という質問にも高校生でただ一人果敢に挑戦している。物理は村田君の薫陶を受け、化学は小田君に叱咤されつつも楽しそうにやっている。橋本の物理&化学で勝負に出るというプランは俺のなかで揺るぎないものであった。そんなところへのお母さんからの電話。「実は先生、あの子は小学校に入学した当初から、図書館で借りてくるのは図鑑ばっかり。山の中でいろんな昆虫を捕ってきては図鑑で調べて遊んでいるような子だったんですよ」 そんなことは初耳だった。「で、最近話していたら高2になって生物も勉強したいな・・・と言うんですよ」 橋本が典型的な理系というのは万人が認めるところ。物理・化学を武器に東工大を想定していた俺にすればアテがはずれた格好となった。でも生物でも本人が臨むなら・・・とお母さんに一つの提案をした。「ウチの塾内で生物を選択するかどうか悩む生徒には一冊の本を渡します。生物の権威の大学教授が生物を一切知らない南伸坊という小説家に講義をして、それを書き留めた本です。正直僕なんかは高校時代は生物が大嫌いだったんですが、今この本を読んでみるとこれがなかなか面白い。字を読むのが嫌いだとは思いますが、本人さんに渡して反応を見てみます」 北陸を旅行していて目立ったのはブック・オフ・・・つまり売り買いする古本屋の多さだった。特に金沢周辺の8号線では採算が取れるんかな?と頭をひねりたくなるような数、1kmで2,3軒の店が延々とシノギを削っている。北陸はすごかったよと高校生に言うと、サンバレー沿いもスゴイよとのこと。ブラリと寄ってみた。津に初めて古本屋の大規模店ができた時にも覗いたが本の配列がてんでバラバラで買う気をなくした覚えがある。それがサンバレーの近くの1軒ではキチッとした陳列。そして文庫本が一冊100円なのに驚いた。赤川次郎の多いこと多いこと、やはりマニアックな俺の好みの本は少なかった。しかし司馬遼太郎の『花神』上中下巻、きれいな本が1組。ついつい買ってしまう。消費税込みで315円。「こんなことやったら小田君に千円札渡さんだらよかったな」と一人ごちる。 20日、アデレードでは日本対ブラジルが決勝リーグをかけて対戦する。メキシコオリンピックで日本がメキシコに勝って銅メダルに輝いたのは俺が小学6年生の時。マスメディアも32年ぶりのメダルを・・・加熱ぎみ。しかし塾はあるわけで・・・と思っていると、午後7時に突如紀平が「なんや!誰もおらんやんか!」と叫びながら登場。ブルーザー・ブロディを思い出したね。「まだこんな時間じゃ誰も来ねえよ」 「何はともあれテレビはないんか!」 「あるだろ! オマエ、ここでセンター速報見たじゃねえか」 「そうか、じゃあすぐつけよや」 「なんでや」 「アホ! サッカーに決まってるだろ」 入塾したばかりの中3が一人いたものの我関せず試合に見入る。俺もまた合間合間教えながら視線はテレビに釘付け。紀平のオヤジさんは津新町にあるJ’Z(ジェイズ)という塾の経営者、そして俺の高校(津高)の3年先輩にあたる。俺がメキシコオリンピックを見たのは小6、すると紀平のオヤジさんは中3の受験期に見たことになる。「オマエのオヤジさんの今回のサッカー、感慨あるだろな?」 「なんや、前の南アフリカ戦は授業を中断して全員で観戦したらしいぜ」 俺と紀平がテレビ桟敷で一喜一憂している間にも生徒が入ってくる。中1は廊下に出てスピーチの練習が始まる。 深夜になりエンターテイナー?高橋、登場。「今度のカラオケ大会は何を歌おうかなー」 岡田さんから電話。研究室の飲み会があり翌日のカラオケ大会には出席できないとのこと。岡田さんが教えてきた静香が2学期もウチの塾を続けることになっていた。半月ぶりに塾に復帰、さっそく青森県の理科&社会からスタート。ここは岡田さんにカラオケ大会に出席してほしかったが仕方ない。また、三重大医学部3年で最もカラオケが嫌いなのが田丸君、2番目が黒田君。ともにウチの講師、この2人はほぼ強制的に参加してもらうことに。そして塾にもカラオケ大嫌いの生徒がいる。高1の橋本と中3の拓也。橋本には電話、どうしても嫌だったら塾で中1の面倒を見るということで妥協案を提示するつもり。しかしお母さんの話では先輩から「歌わないにしても出席はしろ」と不参加だった前回の大会の後に言われたとか。それもあって今回は参加するとのこと。拓也は家が塾の前なので来なかったら家まで迎えに行けばいい。 カラオケ大会当日、中1の森と岡村が早くから塾に姿を見せたと思ったら、試験範囲が発表になったとのこと。「なんでや、一体いつから中間試験なんや」 「10月1日から」 「え! あと1週間しかないやん」 さっそく理科の濃度の計算に入る。グアムの土産を手に村田君が登場。そして伊藤友紀(皇学館大2年)が水泳の集中講義で疲れた疲れたと登場。カラオケ大会は塾から1kmほど離れたところのパラダイス。生徒を運ぶ足は中学生は車、高校2年は自転車。やはり拓也はやってこない。中3の紘と横山が迎えに行く。玄関に出てきたお母さん、奥に向かって一言。「拓也、お迎えよ!」 拓也、すごすごと出てくる。高橋君もやって来て車4台に中学生と高1を乗せて移動させることに。中3女子は坊の姉ちゃんと亜沙美ちゃんだけだったので、どさくさに紛れて中1の森と岡村、そして英語の音読をカラオケボックスのマイクを通して英語の音読をすると言って脅した中2の明希と純菜もパラダイスへ。 トップページに戻る |