れいめい塾のホームページ 三重県津市久居 学習塾 れいめい塾発『25時』

1990年 12月 28日号



とりあえずウチの塾の年末年始のお知らせから・・・。
12月31日と元旦は休みです。

慌しい年の暮れを送らせていただいている次第・・・全く、貧乏暇なしとはよくぞ言ったもので・・・。

塾をやり始めた年の大晦日は1期生とテレビで紅白を付けっぱなしにして勉強していた覚えがある。確か、酔っ払い子供ともども塾に乱入してきた山内が「こんな日に勉強やっても合格する奴はするし落ちる奴は落ちる」なんぞとクダを巻いていたものだ。
2年目の暮れは2期生がドッと塾に集まり年を越した。勉強はせず「人生ゲーム」やマージャンなどをして元旦を迎えた。尾崎の親父さんに車を運転してもらい、津の日本鋼管まで初日の出を見に行ったっけ。
3年目から普通の塾のように正月休みというものができた。理由は簡単、俺が結婚したからだ。

期末試験後、恒例の英語の書き写しが始まった。
今回の期末試験終了後に中1男子と中2女子の二人が塾を辞めた。

生徒が辞めていくと分かったとき、俺が思うことってのはいつも同じである・・・ああ、ついてないなあ・・・。
この「ついてない」というニュアンスを伝えることはかなり困難なように思われる。
決して塾を辞めた生徒が「ついてない」というのではなく、また俺が「ついてない」ということでもない。あえて言うとすれば、お互いの関係に対して「ついてない」のだ。
なんとなく、女の子にふられた時やら、別れた時の雰囲気に似ている感じがするのだが・・・。

中学3年から高校にかけて、かなりインパクトのある恋愛を経験した。結局はふられたわけだが、それ以後の女の子に対する接し方はガラッと、180度ほども変わってしまった。その恋愛をするまでは「好きや」の一言をいつ、どこで、どのように・・・なんぞと異常なほど過敏に、相手の女の子を意識していたものだ。ところがその失恋以降「ちょっとそこまで」のノリで女の子に声をかけ出した。
津新町のプラットホームで、津の街の雑踏のなかで、映画館で、喫茶店で、とにかく心の感情の襞が震えるままに声をかけるようになっていた。
このように変わっちまったのもインパクトの強い恋愛・・・まあ初恋なんてそんなもんなんだろうが、あの時の俺は全世界の人々の恥辱を全て背中にしょって歩いているような気がしていた。これがキッカケだったと思う。人からどう思われようといい、ただただ自分の心の赴くままに生きていきたい。むしろフラれた方が、好奇の視線に囲まれる方が、居心地が良さを感じるような哲人?のレベルになっていた。やたら鉄砲を撃ちまくり、やっかいことにそこそこ当たったりして収拾がつかなくなっては、その愁嘆場を楽しんでいた。でも、その局面、その局面では真剣に対処したつもりだったのだ。口の悪いダチからは、やたらめったら声をかけるゆえ、フラれたり別れたりする時に傷つかなくてええよな、なんぞと言われてはみても、それでも結構傷ついてはいたのだ。

「ああ、ついてないなあ」 肩をひるがえしては俺から去っていく女の子の背中を見やりながら、いつも俺はつぶやいていた。
深夜、最後の電車が出ていってプラットホームの灯が消えてしまう。何か頼りなく、物悲しい気分にそれは似ていた。

俺の大学の先輩でもあり、俺が塾をするキッカけとなってくれた鳥羽の先生(通称シン)は言う。「塾から生徒が辞めていくとき、俺は絶対に塾を辞めたことを後悔させてやろうと思う。それ以外の生徒の成績を上げて、絶対に見返してやろう! そう思うな」

このシンの台詞と、俺の「ついてない」・・・この大いなる相違が、塾経営者とチンピラとの間に横たわる闇である。
「もう少し頑張ったら伸びていたはずなのに」とか「才能があったのに惜しいなあ」なんぞという台詞を、塾を辞めていく生徒に吐くつもりは毛頭ない。ただ、俺はつぶやくのみ・・・「ついてないなあ」

22日に、横須賀から上野征希が帰省した。

征希は去年のちょうど今ごろ、つまりは2学期の期末間際に塾に密航してきた。ウチの塾に入る動機は、ケーキ投げ大会をしたかったから。実力はあった、しかしアラが多かった。ミス0を巡る攻防ではイージーミスが至るところに目立つ。時間さえあれば十分に勝負できるのに・・・これが俺の実感。そして2群勝負となり・・・落ちた。
征希は皇學館高校には特待生扱いで合格していた。順当に皇學館に進学すると思いきや、公立の合格発表から数日が経ち、お母さんと妹を従えて姿を見せた。「先生、お世話になりました。僕は横須賀工科学校に進学することにしました」「えっ! 皇學館は?」「2群以外の高校には進学しないと決めていましたから・・・」 征希の決意の強さは隣のお母さんの顔色を窺うと理解できた。ここ数日間、説得に説得を重ねたのだろう。お母さんの顔には憔悴感が色濃く出ていた。

横須賀工科学校は自衛官を養成する目的で作られた高校である。卒業後、ほとんどは自衛隊に入隊するが、一部の成績優秀者は防衛大学に進学する。

これで俺のリベンジはなくなった。それよりも、俺は申し訳なくてお母さんに深々と頭を下げた。「先生、俺の代わりといっちゃ何ですが、妹をお願いします」と、征希は自分の後ろに隠れていた妹を俺の前に押しやった。「俺に代わって、2群勝負でお願いします」 これで絶対に勝たねばならない勝負がひとつ増えちまったわけだ。

強引な高1、征希の帰省に合わせ、その当日の22日に「2階のお披露目パーティ&征希帰省焼肉大会」をやろうと俺に有無を言わさず決定。そして前日には高校を自主休学したのか、高1の買出し部隊が塾の出入りを繰り返す。俺に出来ること・・・22日の授業は「危険だから」という理由で中2の授業を違う日にシフト、慣れている中3を22日にあてがう。理由は、慣れているから・・・つまり、俺が酒を飲んで暴れまくることに慣れている。確かに千佳子なんぞは素早くなった。瞬時に繰り出す平手打ちも的確にガードしてみせる、見事なお手並みである。

当日の夜、1階では中3が勉強しているなかを高1のドグサレ共が続々と塾に集まる。その数や、18名! ここに2階で勉強している熱田(兄)を含め、2階の3部屋に別れて焼肉パーティが開始。
森下と横山が家から定番のホットプレートを持ち込む。塾の前の中華料理「巽」の息子だけあって、井島(兄)は七輪を持ち込み、「やっぱり焼肉は炭焼きが最高なんや」とのたまう。
3グループに別れたものの、俺は邦博と横山のグループに密着する。なにしろ焼肉の買出し担当がこ奴らなのだ。肉を3グループに分けるにせよ、邦博や横山が均等に分けるタマじゃねえ。案の定、他のグループは早々と肉がなくなり、いっぽう俺たちは有り余るほどの肉をヒーヒー言いながら食い続けている。森下が横を通りながら「いいなあ、まだ肉が余っていて」と未練たらたらつぶやく。
俺は一人ごちる・・・イカサマは引っかかる奴が悪いのだ。

夜も更け、邦博が余った肉をコーヒーカップに入れ「菊さんにやろう」と階段を下りて行く。二つある和室の部屋の片方では辻本と聖ちゃんがプロレスごっこをしてたわむれている。もう一つの部屋では熱田と井島が「世界の終焉」について論じている。その横では浩一ちゃん、高いびき。喧騒がそれなりに沈静化した頃、征希が俺に「先生、これお土産」 精密な日本陸軍74式戦車のライター。俺はびっくりして尋ねる。「こんなもん、今まで見たことがない。一体どこで買ったんや」「防衛庁共済組合です。ここで買うと少しですけど値引きしてくれます」 防衛庁に共済組合があるってのは初耳、思わず笑っちまった。

この日のパーティ開催が決まったのは2日前のこと、さすが「鉄の結束」を誇る去年の中3、瞬く間にこれだけの面子が顔を揃えた。

翌23日は2期生の同窓会、場所は「車力」。
この学年は今、それぞれの人生の岐路を迎えている。
中橋と脇上は就職が決まった。中橋なんぞ、津工業から中京コカコーラという、こ奴の性格同様にやっかいな就職先である。しかし、決まっただけでも良しとべきか。
西村と推薦入試に落ちて一般入試を目指して勉強中、でもこのままじゃ浪人生活が待っている。西村以外にも尾崎や藤田も一般入試に向け勉強中だとか。
推薦で大学進学を決めたのが東と山村の二人、おめでとう。
池村と田中の二人はあと2年間、鈴鹿高専で過ごすことになる。
そしてこの学年のコード番号1、野浪正義は高1の時に高校を中退し現在ではまっとうな社会人? 今日もこれから会社関係の忘年会があるとかで1時間ほどで席を立った。

「車力」の後はカラオケでも行こうかと誘ってみたが、新しくできた塾の2階が見たいとかで全員で塾に戻る。
この日は中2の授業で、スキーツアーの費用をなんとか捻出しようと横山が中2を教えている。2階では辻本・坂倉が中3相手に個別授業の真っ最中。そんななかへノッシノッシと2期生が入っていく。塾にあって普段は「鬼より怖い」と形容される高1が、2年先輩となる2期生の登場を見るや蜘蛛の巣を散らすように逃げ始める。こんな光景に中2の笑い声が教室中に響く。

山村が辻本を捕まえる。「うわ!先輩、何するの」「辻本、オマエ農林のボクシング部へ入ったんやて? 思いっきり俺の胸にパンチを叩き込んでこい!」「えっ・・・いいの」「オマエのパンチなんか平気や。さあ農林の看板しょって死ぬ気で殴ってこい!」
辻本が構える。山村は胸を前に突き出す。サウスポースタイルから辻本の足が一歩前に出る。辻本の拳が一閃、山村の胸に吸い込まれる。不適に笑う山村、「あかんあかん、辻本。そんなヘナチョコなパンチでは相手を倒すことできへんぞ! ほら、もう一丁!」 俺はニヤニヤしながら2階へ上がる。和室では勝手にマージャンが始まっている。面子は西村・池村・田中・中橋。早い巡目で西村にリーチがかかる。中橋が西村の捨て牌をにらみながら吐き捨てる。「彼女ができた途端に強気になりやがって」

昨日の高1やら、今夜の高3を眺めながら俺は心底思うのだ・・・本当に塾をやり続けていて良かった。



To be continued.

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