Game.1 パラダイス・ロスト
ポーン……ポーン……
軟球の跳ねる心地よい音が静まり返ったコートに響く。
「いよいよか……」
俺達は今、超一流テニスプレイヤー養成機関「龍の穴」での特訓を終え、今始めて実戦の場に立っている。
この試合が最後の試練に当たるわけだ。
ギュッ
無意識の内にボールを握る手に力がこもる。
「落ち着いていけよ、相棒」
俺の相棒――前衛を任せている――の声で、何か吹っ切れた気がした。
このゲームは俺たちが先行、つまり後衛である俺のサーブからゲームが始まる。
「いける……俺達は勝てる……!」
自分に言い聞かせるように呟きながら、左手のボールをトス上げした。
ヒュッ
単調な鉛直投げ上げ運動を描くボールは、ひどくゆっくりに見えた。
「ハッ!」
バコン!
右手のラケットから放たれたボールは、コートの対角線上――相手チームの後衛の方向へ一直線に向かっている。
(よし、いいコースだ! このままいけば相手コートギリギリに……)
「甘いですよ」
「え?」
ドゴオ!
会心のサーブ――少なくとも俺はそう思っていた――はあっけなく弾き返された。
――To be continued
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