七夕〜元就の場合〜
「どこに行ったのだ」
元就が忙しく城内を歩き回っていた。柄にもない行動だが、のこととなると別らしい。いつもなら部屋に来る時間なのに、今日はいつまで待っても来ず、他の者に聞いても知らぬと言う。こんなことは今までになかったので、心配・・・
「などはしていない!だが、何かあったのでは・・・」
悶々と悩む元就は、の行動範囲を予想しては外していた。行き詰まって庭を散策していると、開けた庭の真ん中にの姿があった。
「あんなところに・・・」
駆け寄りたい気持ちを抑え、元就はそっとに近付いた。
「!・・・元就様」
「何をしておる」
の後ろに立つと、ゆっくりと抱きしめる。驚いただったが、相手が元就だと気付くと、そのまま胸に収まった。背中に感じる元就の体温が、着物越しだが少し熱いような気がした。
「星を、見てました」
「星?」
「川が出来てるんです!」
空を見上げるに釣られ、元就も見上げる。指差した方に目を向けると、そこには眩い星の川が流れていた。時を忘れ、二人は暫し星空を見つめる。
「そういえば、探してくれてたんですか?」
「なんだいきなり」
「だって・・・元就様の身体、熱かったから」
星を見ていたかと思ったら、急に話を振られ元就は驚いた。振り向きざまに見上げられた頬が色付き、恥ずかしげに目を伏せたは、自分で言った言葉を後悔しているようだった。今の言葉の後だからか、腕の中のの体温が上がったのを感じることが出来た。
「ふふっ・・・の身体が熱くなったのは、なぜだ」
「えっ!」
「また、熱くなったか」
「あっ・・・ダメ、です・・・」
抱きしめている腕に力を込める。二人の密着度が増し、元就はの首に顔をうずめると、唇が触れるか触れないかの距離で這わせると喉の奥で笑った。
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