七夕
〜元親の場合〜



夕餉を終えると、突然、元親に船に乗せられ沖まで連れて来られた。訳がわからないまま、甲板に出ると・・・



「わぁ・・・すごい・・・」



夜の海は真っ暗で外に出るのが怖かったけど、今日の海は空に星の川が出来ていて、眩い光に照らされてとても幻想的だった。見たことのない光景に、は息を呑み、天上を見上げる。その様子を満足気に見つめていた元親は、ある用意を始めた。



!こっち来いよ」
「えっ?・・・いつの間に」



声を掛けられ振り向くと、そこには茣蓙が敷いてあり、酒の用意まで出来ていた。ドカッと腰を下ろし、酒を飲み始めている元親を見て、は笑うとその隣に座った。この星空を肴にするなんて、とっても贅沢なことをしてるとは笑みを深める。



「元親様らしいですね」
「ぅん?」
「この星空よりお酒なんて」
「初めて見るもんじゃねぇからな・・・一年に一度、見ることが出来るのさ。俺も偶然気付いたんだが、に見せてやりてぇと思ってな・・・好きだろ」
「・・・はい。ありがとうございます。一年に一度だけ・・・素敵ですね」



元親に酌をすると、は考え深げに星空を見上げた。一年に一度しか見れない星空を見せてくれた元親に、胸の奥が熱くなる。日本一の幸せ者かもしれないと、急に恥ずかしくなったは、両頬を押さえながら後ろに倒れた。



「大丈夫か?」



不可解な行動に、元親は心配そうにの顔を覗きこんだ。



?」



倒れたことで、星空と平行になったは、首の痛みを気にすることなく見続けることが出来ることに気付いてしまった。目の前に広がる星の川に、の瞳は捕らわれる。元親の言葉も耳に遠い。



!・・・聞いてねぇな・・・」



視線は元親を通り越した先に向けられていた。喜ばすつもりが裏目に出た気がして、の瞳はキラキラと輝くばかり。酒をクイッと飲み干すと、元親はに覆い被さった。



「・・・・・・も、元親様!」



視界を遮られ、夢から覚めたようにが元親に気付く。身体に掛かる重さに、自分の置かれている状況を知った。



「持って・・んん!」



次に言葉を遮られ、啄むように唇を何度も重ねられた。押し返そうと胸に手を付いたが、くすぐってぇと元親に払われてしまい、なす術なし。



「・・・んっ・・・はぁっ・・・」
「・・・、俺を見ろ。俺以外に夢中になんじゃなぇ」



解放された唇から甘い吐息が漏れる。の瞳には元親しか映っておらず、本日二度目の満足気な元親の顔が近付いて、優しく熱っぽい口付けに溺れていく。




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