ふわふわ〜元親の場合〜
ある晴れた日のこと
「ふぅ〜・・・ふかふかになった!」
敷布団を縁側の廊下に下ろすと、振り返り太陽を見上げた。手で陽射しを遮り、雲1つない空を見渡す。布団を干して正解とばかりに、は敷布団に目を移した。
「こんなにふかふかになるなんて・・・」
元親様の布団だけはあると、納得した様子で敷布を整えるように伸ばした。日の光をいっぱい浴びた敷布団は、触っているだけでも気持ちがいい。ふわふわで温かい敷布団がを誘惑する。
「気持ちいいなぁ・・・寝たらもっと、駄目駄目!」
手のひらが離せなくなり、体を倒しそうになったところで思い留まった。首を振り、早く部屋も運んでしまおうと、は廊下に上がり敷布団を畳もうとしたのだが
「・・・元親様の匂い・・・」
日の薫りに混じり、元親の匂いが微かだがの鼻腔に届く。今日はお互いに忙しくて、ゆっくり会うことがないままだった。その途端、胸の奥に寂しさが募り、気付けば
「少しの間なら、いいよね・・・元親様」
敷布団の真ん中で、丸まるように横になっていた。温かさの中で、元親を思い出し、ふわふわの敷布団に擦り寄るように顔を埋める。柔らかく、包まれているような感覚に、そっと瞼を閉じる。
「も、と・・ち・・・かさまぁ」
起きなくてはいけないのは分かっているのだが、体が動かず、の意思とは逆に、意識は遠退いていった。午後の穏やかな日差しの中、は深い眠りへと落ちた。
「いないと思ったら・・・寝てやがる」
敷布団の上で、猫のように丸かって寝ているを見て、こんなとこでよく寝られるなと元親は呆れた。しかし、その姿に自然と口角が上がる。
「まったく、可愛いことしやがるぜ」
頭を掻きつつ、足は音を立てないよう慎重に進めていた。こそこそする必要なんてないが、もう暫く、の寝顔を見ていたいと素直に思った。様子を窺いながら、自分の装飾品に気を使って腰を下ろしたのは始めてである。
「ふっ・・・なにしてんだかな」
普段の自分とは真逆な行動に、思わず笑みが零れる。の顔に掛かった髪を払ってやると、くすぐったそうに身じろいだ。起きたのかと、なぜか身構えた元親だったが、気持ち良さそうに寝たままだった。海風が二人を包み、平穏とはこういうことを言うのかもしれない。が、
「気にいらねぇ・・・」
微笑ましく見ていた元親だったが、眉間に皺を寄せ、表情を曇らせた。
「俺の腕ん中より、いい顔してねぇか?」
の顔を覗き込むようにまじまじと見つめ、知らない表情なんてないと思っていたのに、この寝顔は少しばかり違うようだった。この敷布団で一緒に寝てるのに、昼と夜で違うのか、昼のがいいのかと、元親の考えがよからぬ方へと向かう。
「っん!・・・はぁっ・・」
大きく息を吐くのと同時に、が目を覚ました。押し寄せる熱に頭がふわふわしてきたが、状況を理解しようと目をしっかりと開いたが、すぐに後悔することとなる。
「も、元親様!!」
「やっと、お目覚めか!」
元親と目が合い、自分の姿を見て恥ずかしさで目を閉じた。着物から露わになっている肌の多さに唇を噛み締める。見る見る紅くなるを見て、元親は満足そうに目を細めると、熱を帯びた声でそっと耳打した。
「これからが・・・お楽しみに時間だぜ!たっぷり愛してやるからな」
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