ふわふわ〜政宗の場合〜
ある晴れた日のこと
「ふぅ〜・・・ふかふかになった!」
敷布団を縁側の廊下に下ろすと、振り返り太陽を見上げた。手で陽射しを遮り、雲1つない空を見渡す。布団を干して正解とばかりに、は敷布団に目を移した。
「こんなにふかふかになるなんて・・・」
政宗様の布団だけはあると、納得した様子で敷布を整えるように伸ばした。日の光をいっぱい浴びた敷布団は、触っているだけでも気持ちがいい。ふわふわで温かい敷布団がを誘惑する。
「気持ちいいなぁ・・・寝たらもっと、駄目駄目!」
手のひらが離せなくなり、体を倒しそうになったところで思い留まった。首を振り、早く部屋も運んでしまおうと、は廊下に上がり敷布団を畳もうとしたのだが
「・・・政宗様の匂い・・・」
日の薫りに混じり、政宗の匂いが微かだがの鼻腔に届く。今日はお互いに忙しくて、ゆっくり会うことがないままだった。その途端、胸の奥に寂しさが募り、気付けば
「少しの間なら、いいよね・・・政宗様」
敷布団の真ん中で、丸まるように横になっていた。温かさの中で、政宗を思い出し、ふわふわの敷布団に擦り寄るように顔を埋める。柔らかく、包まれているような感覚に、そっと瞼を閉じる。
「ま、さ・・む・・・ねさまぁ」
起きなくてはいけないのは分かっているのだが、体が動かず、の意思とは逆に、意識は遠退いていった。午後の穏やかな日差しの中、は深い眠りへと落ちた。
足音が二つ。
一つは堂々と威厳に満ちており、もう一つは控えめに、だが力強く前の足音を追っていた。
「頼んだぞ。小十郎」
「お任せください。政宗様」
「それにしても、ゆあはどこに行ってんだ?」
「それが、見当たらないそうで・・・」
話しながら廊下を歩いていた政宗と小十郎は、角を曲がった所で立ち止まった。その先の光景に、二人の目尻が緩む。小十郎は一歩下がると、軽く会釈をして、くるりと踵を返し来た方へと歩き出した。そんな小十郎の心配りに、政宗はフッと息を吐くと小さくThanksと呟き、歩を進める。
「こんなとこで・・・無防備過ぎるだろ」
そっと歩きながら、敷かれた布団へと視線を落とす。そこには探していたが気持ち良さそうに寝ていて、政宗は口角を上げながらも不安を呟いた。
「城の中とは言え、いつ誰が来るとも限らねぇーんだぜ。俺以外の奴にこんな姿見せやがって・・・」
一緒にいた小十郎のことなのか、他の家臣達か、またはどこぞの忍びか、危機感0でいられるのも困ったものだと、溜息が漏れる。敷布団に腰を下ろすと、指の腹で頬を撫で、寝顔が見やすいようにこちらを向かせた。すると、肩に乗っていた長い髪がするすると首に落ちて、こそばゆそうにが身じろいだ。
「むにゅ・・・」
薄っすらと開いた唇に、政宗は一際、大きな溜息を吐いた。
「・・・わからせるしかねぇか?」
どこか楽しそうに、政宗は喉の奥で笑いを堪えると、の上に覆い被さるように体重をかけて伸し掛かった。そして、首に掛かった髪を払うと噛み付くかのように唇を押し当てる。
「・・んっ!ぅぅー」
「起きるきねぇのか・・・上等だぜ!」
体に起きてる異変に、は眉を顰めるも瞼は開かない。まだ、睡魔の方が勝っているようで、その様子に少しの理性で押し止めていたものが完全に外れ、政宗に火を付けてしまった。
「覚悟はいいか・・・」
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