確認
「はぁー・・・」
半兵衛の重い溜息が部屋に広がる。半兵衛の前には正座をし頭を下げている女中が一人。半年程前から下働きとして豊臣家に仕えており、名をと言う。
「申し訳ありません」
「君ね。謝れば総てが済むと思ってない」
「そんなことは・・・」
「今回だけじゃないんだ。わかってるよね」
「・・・はい」
半兵衛の言葉に、より一層頭を下げた。言われている通り、こうして半兵衛の元に謝りに来たのは初めてではない。指折り数えられる失敗の多さに、半兵衛は呆れ顔で頭を抱える。可愛いものから笑えないものまで、女中の顔など覚えることはないに、後姿でだと分かるようになっていた。
「・・・君はナニだったら出来るんだい?」
名を呼ばれて、は思わず顔を上げた。しかし、すぐに後悔した。半兵衛の冷やかな視線に、空耳だったのかもしれないと耐えられずに顔を伏せる。ドジっ子の自覚がないは、それさえ除けは一通りのことは出来るので、改めて、なにがと問われても答えに困った。
「確認した方がいいかな」
「えっ!」
「君が、本当に女性かどうかを」
が口篭っていると、半兵衛が目の前まで来ていた。顎に手を当てて、品定めでもするかのようにを見下ろす。半兵衛の突拍子もない言葉に、は驚いて半兵衛を見上げた。不敵な笑みに、嫌な汗が背中を流れる。
「ま、待ってください!」
「君に拒否権はないよ」
突っぱねようとした手を簡単に捕らえられ、半兵衛との距離が一気に縮まる。膝を付き、逃げ腰なの背に片方の手を廻すと、グッと息が触れそうな程、近付いた。突然過ぎる出来事に、は目を大きく見開き、目の前の耽美な顔を揺れる瞳に映す。半兵衛の目が細められた瞬間・・・
「んっ!」
薄く開いていたの唇を半兵衛が塞いだ。強引に息つく暇もなく、その口付けは深いものへと変わっていく。強張っていたの体から次第に力が抜けていき、半兵衛の支えなしには上体を保てなかった。の意思とは別のところで、熱い刺激に身体が支配されていく。
「・・・ふっ、ぁはあ・・・」
「ふ〜ん・・・反応はいいね」
漸く、唇を解放され、苦しさとは違う溜息がの艶めいた唇から漏れた。それを満足気に見つめながら、半兵衛はの頬に手を滑らせる。紅く上気した肌が指に吸い付いてくるようで、顎まで来ると下へと這わせた。
「でも、中を見るまでは判断できない」
整っていない呼吸がまた速くなり、心臓が痛いほど激しく高鳴った。覆い被さる影に、の鼓動が直接、伝わる。
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