リョーマとカルピン
リョーマ宅・リョーマの部屋。
飲み物を取りに行くと言ってリョーマは部屋を出ていき、残されたのは恋人・とリョーマの愛猫カルピンだけだった。何度も訪れ、何度も顔を合わしているが、カルピンと打ち解けられているのかは気になっていた。触らしてもくれるし、咽を鳴らすときもあるが、猫との信頼関係?愛情を知るにはどうしてもして欲しいことが1つある。
「カルピン!今日も可愛いね。ふかふかで気持ちいい〜」
「ホァラ〜!」
抱き上げたをじっと見て、カルピンも嬉しそうに返事を返す。顎を指先で撫でると瞳を細め、気持ちいいのかもっとしてと顎を上げて甘えてくる。それだけでも充分といえそうなのに、の求める愛情表現はこれではなかった。こちょこちょとじゃれてる間に、階段を上がる足音が近付いていた。
「リョーマ君が来たね」
「ホァラ〜」
カルピンから視線をドアへと向け、丁度廻されたドアノブからリョーマの姿がドア越しに覗く。手には器用にジュースの缶が2本持っていたが、飛び込んできた光景に思わず落としそうになった。
「あっ!カルピン・・・今のキス!」
「ホァラ〜!」
「嘘!ほんとに」
「ホァラ〜!」
の頬にちょんと鼻先が触れた。それにより、はリョーマからカルピンへと向き直り、瞳をパチクリさせて確認するようにカルピンと向き合う。信じられないと、もう一度顔を近付けるの頬をカルピンはペロペロと嘗めた。
「リョーマ君!今の見た!」
「見た・・・」
「カルピンにキスされたの初めてだよ!どうしよう、嬉しい!」
「ホァラ〜!」
「カルピン大好き!くすぐったいけど、幸せだよ」
これは確実に、カルピンがを信頼して愛している証拠。しかし、第三者の証言が欲しくて、ちょうど現れたリョーマに再度確認した。の喜びようにか、カルピンへの嫉妬か、リョーマはぶっきらぼうに呟くと、カルピンとのスキンシップに愛情全開で取り組むを瞳の端に残しながら、部屋の中へと足を進める。ぎゅっと抱きしめたり、頬をスリスリしたり、リョーマの猫だというのに可愛がり方は飼い主以上だった。
「ねぇ・・」
「なに?ん、あ!」
机にジュースを置いたリョーマは、足早にへと近付くとある行動に出た。上の空な返事を返したの視界から白い物体が連れ去られる。
「ちょ、リョーマ君!」
「カルピンはもうおしまい」
「えっ〜」
リョーマに抱えられ、少しぐずりはしたがカルピンは部屋の外へと出された。ドアをカリカリ掻く音が、の心に引っ掛かる。オモチャを取り上げられた子供のようには口を少し尖らせ、静かにドアノブから手を放したリョーマの背を見つめた。
「カルピンと遊びたい」
「そう。俺はと遊びたい」
「えっ!なに・・・」
俯きながら、の隣にリョーマは座った。じっと見ていたは、膨れた表情で不満を口にする。リョーマの家に来た目的がカルピンだとはいわないが、猫好きのにとってカルピンは理想を形にした完璧な猫であるわけで、そのカルピンから信頼を受けた今日は特別な日といっていいほどだった。しかし、リョーマとの温度差は開くばかりで、カルピンへの嫉妬返しはへと返ってくる。
「キスされると嬉しいんだよね」
「それは、カルピ・・・」
「恋人より猫とがいいわけ」
ふいに近付いたリョーマに、背を反らして逃れるだが限度があり、見つめられる瞳を泳がせた。リョーマとカルピンを天秤に掛けるなんて出来ないが、さっきまではカルピンのキスに浮かれていたのも事実で、リョーマの問いに答えが見付からず、縮まる距離に息を呑んだ。泳がしていた瞳にも、すでにリョーマ以外映ってはいない。
「・・・・・・・っ!」
「・・ぅ、どう?足りないなら、ペロペロもしてあげるけど」
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