はじめてのチュウ
忍者学校での、前代未聞の事件が起きてから数時間。ナルトはラーメン一楽で自棄酒ならぬ、自棄ラーメンを決め込んでいた。クラス中の女子を敵に回し、散々な目に合った挙句、思い出したくない記憶がまだ、頭の隅っこにこびり付いていた。
「おっちゃん!どんどんラーメンだってばよ!」
「はいよ」
忘れるためにずるずるラーメンを啜るが、お腹は満腹感になっても、気持ちは晴れることなく鈍よりと、霞みが張っていた。カウンターに置かれた丼に手をかけるも、食が進まない。これが6杯目。だからではなく、深層心理で色濃く残り、鮮明に甦るから食べるに食べずらく、美味しいはずなのに味が全くなかった。
「食べても、食べても・・・」
「・・ぁ!」
麺を箸で持ち上げ、首を傾げる。絶妙に麺と汁が絡まり、くせになるあの味を忘れたことはないのに、口に入れると全てが味気ない。そんなナルトの背後から近付く影が、店主と愛娘に、しぃーっと仕草で告げる。
「すぅー・・・ナルト!」
「わあああぁ!ちゃん?」
息を吸い込むと、大声と共に後ろから抱き付いた。驚いたナルトは箸を落とし、聞き覚えのある声に顔を反らして、相手を確認する。思った通り、脅かしてきたのはで、年上ながら悪戯っ子な笑みになにも言えないナルトであった。するりと隣の席に着いたは、いきなり
「聞いたよ!サスケとしちゃったんだって」
「ぶほぉぉぉぉぉぉぉ!な、ななななんで知ってんだってばよ!」
「忍者学校生の子達の話が聞こえてきて、で、どうだった?」
「ちゃん」
「なに?」
「楽しんでない」
「少し」
触れられたくない傷を掘り返され、噴出すものなんてないのに大そうなリアクションをしてしまったから、言われたことが肯定であると自ら認めていた。しかし、話の流れが良すぎて、ふと冷静になれたナルトは思ったままを口にすることが出来た。その結果、楽しそうな笑顔に見事、ナルトは玉砕され、意識が遠退く思いだった。
「もういいってばよ・・・・なんとでも言って・・・」
「ナルトー?」
遊ばれてることに諦めがついたのか、投げ遣りにカウンターへ肘を付くと、唇を尖らせ拗ねた。しかし、触れられたくなかったことに、耳は少し紅かった。へそを曲げたナルトに、からかい過ぎたと反省しながら、ふと、昔の記憶が頭に浮かんだ。
「オレのはじめてのキスは・・・」
「キスは、わたしでした」
「へっ?」
吹っ切るつもりで出た言葉に、驚くようなオプションが付いてきた。開いた口は塞がらず、思わぬ発言にを見るも、真っ直ぐ前を向いたまま話し始めた。
「実はね。寝てるナルトにキスしたことがあるの、ごめんね。中忍試験の前の日だったかな・・なんとなく・・・・・ごめん」
「じゃ、オレの・・・・・・」
「ほんとにごめん!わたしもはじめてだったから・・・、寝てるのにって思ったんだけど、ごめんなさい。緊張してたから、ぐっすり眠ってるナルトが羨ましかったというか・分けてもらえたらなんて・・バカなっ・・・」
照れもあるが、悪い気持ちもある。寝てる相手の唇を、サスケでショックを受けているから、さらに傷付けてしまうかもと謝ることしか出来ない。でも、軽い気持ちからじゃないし、ナルトだからって気持ちもあった。今更なに言っても言い訳だけど、その途中、口と頭が噛み合わず、少しパニクってるの唇をナルトがそっと塞いだ。椅子から下り、正面に回り込むと少し背伸びをして
「あまい・・・」
「・・甘栗甘で、栗あんみつ食べたから・・かな」
「オレからの、はじめて・・・・のキ、スだ・・・ってばよ」
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