ひとりぼっちのクリスマス



12月24日。
クリスマスイブ。

黒の教団において、季節のイベントなど無関係な世界だった。しかし、鬼の室長コムイも、可愛いリナリーにせがまれては首を横に振れず、1日だけのクリスマスパーティーが盛大に行われていた。食堂は大賑わいで、城内に滞在している皆が、日頃のしがらみを忘れ楽しんでいた。



「はぁー・・・」



そんな中、1人浮かない顔でぼんやりと、盛り上がる仲間を影からは見ていた。クリスマスをこうして過ごせるのは嬉しいが、クリスマスだからこそ、一緒にいたい誰かがいないのは寂しい。そっと食堂を抜け、続く廊下は別世界へでも繋がっていそうなほど静かで、心細さを堪え足を進めた。



「さっきまでの賑わいが嘘みたい」



冷たい廊下を、ひっそりと照らすか灯りだけを頼りに歩き、遠くで微かに聞こえていた声も届かなくなっていた。通りなれた場所なのに、緊張感が漂うのはなぜか?いろいろ思っているうちに目的地に着いた。



「研究室がこんなに静かなのも不気味ね」



必要最低限の灯り以外点いてない研究室も珍しいと、いつもと雰囲気の違う職場を見渡しつつ、はあるデスクへと向かった。城壁のように四方を本などで囲まれ、僅かながらの隙間から漏れる光が怪しさをかもし出していた。近付けばカタカタ・カリカリと、そこだけいつも通りの研究室といった様子だった。



「リーバー班長!」
「ぉう!か・・・パーティーはどうした?」



回り込んだ先にいたのは、科学班班長のリーバー。皆がクリスマスパーテーと浮かれている中、どうしても仕上げたい仕事があるとリーバーだけ残っていた。



「抜けてきました。班長がいないと楽しくないです」
「フッ・・・来いよ」
「あ!」



誰も戻っては来ないし、パーティーを楽しんでいると思っていたのに、恋人だからだろうか、素直な反応にリーバーは喜びを喉の奥で止めた。照れもなく、少し緩んだ表情になったを見て、リーバーは手を取ると引き寄せる。いきなりだったのでなすがまま、気付けばリーバーの膝の上にちょこんと座っていた。そして、ギュッと抱きしめられた。



「誰もいないのもいいもんだな」
「変な考えは起こさないでください」
「いてっ!今日はクリスマスだぜ」
「・・・残念ながら、プレゼントはありません」



研究室でいちゃつくなんて、普段の2人にはないことだし、しようものなら周りから・・・。いつもと違うシチュエーションに、リーバーの手が背中から腰へとずれた。でも、つり上がった目とともに、が頬っぺたを抓った。顔を顰めつつ、リーバーは頬っぺたを擦り、いじけた子供のように項垂れる。そこへ追い討ちを掛けるようで気が引けたが、正直、クリスマスということをコムイに発表されるまで忘れていた。



「・・・あるだろ」



の顔を自分の方に向けると、リーバーは唇を重ねた。甘く長い口付けに、気持ちまで流れそうになったが、ふと現実を思い出した。



「ほんとにプレゼントが欲しかったら、仕事終わらせてください」
「へいへいって、実は終わってたりして」
「班長!」
「じゃ、続きを頂くとしましょうか」


back