風邪
「あれ?ラビじゃない」
「よっ!リナリー」
黒の教団に珍しい来客が、ブックマンの後継ぎ・ラビである。突然だったが、大槌子槌での登場でも、どっから入って来たんだの登場でもなく、普通に戻って来たようだったが、帰って来たわけではないらしい。
「いるか?」
「なら2日前から風邪で寝込んでるけど」
「やっぱな・・・」
科学班研究室に入って来たラビは、部屋を見回すことなくリナリーの元へ行き、いないのが分かっていたかのように話をした。はラビの恋人で、科学者として科学班に属している。そのため、遠距離恋愛なんて言葉に収まりきらない付き合いをしていた。2月に1回会えたら多いほうで、決まってラビの突然の訪問は、になにか合ったとき。リナリーの言葉に、ラビは意味ありげな顔で、確信が当たっても喜びきれなかった。
「もしかして、の見舞いに来た・・とか」
「・・・・・オレの予感は当るんさ!」
ラビが来たことで、リナリーはまさかを口にした。返った言葉は肯定だったが、複雑な笑みからいつものラビらしくない。寝込むほどのことが今までなかったから、ラビも様子見でここに来たのだと、リナリーは悟る。
「いつも通りでいいんじゃない。折角、会いに来たんだから、も喜ぶわよ」
「・・・そう・・そうさ!ありがと、リナリー」
「えっ・・・」
「ちょっくら行って来るさ!」
「う、うん」
顔を見に行くための背中押しだったのだが、どうやらリナリーの取り越し苦労だったようで、ラビが悩んでいたのは別なこと。調子を取り戻したラビは、リナリーに感謝し、手を振りながら行ってしまう。それを不安な面持ちで、ぎこちなく手を振り見送るリナリーであった。
「!」
部屋のドアがいきなり開いたと思ったら、久しく聞いてない声が煩く頭に響いた。乱暴にドアを閉め、ドカドカと騒音を撒き散らし、のベッドへ一直線に向かう。喧しいと、夢現から薄っすらと瞼を持ち上げたそこに、ボンヤリと映った姿は、夢と現実の区別が付かなかった。
「ら・・・び?」
「風邪引いたんだって、見舞いさ」
近付くにつれはっきりとラビの姿が分かり、おでこに置いてあったタオルのずれを直してくれた。それは夢で見ていたラビではない。目の前にちゃんと、心配そうな顔から笑みが見え、わざわざ見舞いに来てくれたことに、は笑顔を浮かべた。でも、夢じゃないから、心配もある。
「移るといけないから・・出てぃぅんっ!」
風邪が移ってはいけないと、ラビの心配は嬉しいが迷惑は掛けれないと思った矢先、こともあろうにキスされ、しかも、話の途中だったため、軽く開かれたそこから舌が入れられ、口腔内を舐め回っていた。
「ちょ・・・と、んぅ・・・・・ぁび」
「ぅう、なに・・・さ」
「なっ、ちょんぅ・・・・・はなぁうぅ!」
突然のことに、されるがままのだが、気だるい腕でラビを押し退け、顔を反らそうとするが逃げられない。話す隙もすぐに奪われ、熱で熱い口腔内はさらに熱を帯び、くらくらと目が回り、抵抗が出来なくなったとこでキスから解放された。
「んぅ・・・はぁ・・・ぁ」
苦しさから大きく息を吐き、熱で上気していた肌は色付きを増していた。が息を整えている間、ラビは覗いている僅かな首筋に目がくぎ付けとなり、次の行動はもちもん、お決まりのアレである。
「?・・・・・ラ、ラビ!」
「なにさ」
「いつ、布団の中に入った、の!」
違和感を感じ目を向ければ、目の前が大きく盛り上り、ラビと違う角度で目が合う。真正面だったのが真横に、気付かぬうちに布団の中へ侵入されていた。そして、ラビの手元はコソコソ動いてる。
「ラビ!お願いだから話を聞いて!」
「聞いてるさ」
「なら手を止めて」
パジャマのボタンに手を掛け外しているラビに、は慌ててお願いしたが、その間も進み、言い終わる前に全て外されてしまった。顔を見合わせ、ニッコリ笑うラビに、握った拳すら力が入らず、鈍い感覚の腕で開けないように胸の前でパジャマを押さえる。熱のため、うるうるした瞳で睨んでも効果は逆で、ラビを楽しませるだけだった。
「ラビ・・・・・病人なの。わかるよね」
「うん。だから」
「だからって、風邪が移るといけないでしょ!出てって」
「なんでさ」
「あのねぇ・・・・・・・」
状況の悪さはこの際、置いておいて、はラビとやっと会話らしい会話をした。今のの逃げ道は風邪だが、どうやらラビには通用しないようで、覆い被さったまま動く気配はない。だからといって、このままな訳にもいかず、風邪が悪化しそうと大きな溜め息を吐いた。
「もぉ・・だるい」
「・・・・・・」
「ちょ・・ラビ」
ベッドに体を深く沈めたの熱った頬に、ラビは口付けをし、いつタオルが落ちたのかもわからない空いたおでこに、おでこをくっ付ける。の熱い息が掛かり、錯覚を起しそうになるも堪えた。
「・・移せばいいさ。早く治るし」
「バカなこといわないっで」
「オレは本気さ」
本気だとしても、そんなことしたくないのに、間近で見たラビの瞳は真剣だった。瞳も逸らせず、返す言葉のないに、ラビは小さく笑って見せた。
「っ・・・・ん」
「・・すごく熱い・・・さ」
「・・ラ、ビ」
「火傷しそう・・でも、心地良いさ」
「・・・・ぁ、っ・・・!」
触れるキスをして、首筋へと下り鎖骨と唇を這わせ、先に進むべくの手を取ると、一瞬強張ったがすんなり外せた。口付けを落としながら上昇する体温に、ラビは満足げに微笑んだ。そっと肌に触れ、直に感じる熱さに、邪魔物はない。
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