おかえりと×××
黒の教団に帰って来た時の神田の行動は、大抵、修錬場にいることが多かった。今も、日々の鍛錬を怠ることなく、精進していた。
「ふぅー・・・・・」
「ユーウ!」
「(ピキッ!)」
六幻を構え、精神を統一させたその時、明るい透る声が後ろからしたと思ったら背中に重みが圧し掛かった。綺麗な神田の顔が一気に歪み、額には青筋が幾つも浮んでいた。
「!」
背中の圧し掛かりは、・。同じ黒の教団ではあるが、エクソシストである神田とは正反対の科学班に属しており、若いが優秀な人材である。そのが、神田の背中におぶさるかのように飛び付いたため、神田の機嫌は急降下した。
「さっさと下りろ。重苦しい!」
「帰って来てるなら教えてって、いつも言ってるのに」
「離せ!なんで俺がいちいちお前に」
首に廻った手を掴み離そうとするが、もただでは離さず、左右に体を振る神田の背で言い返す。我慢比べではないが、嫌がるだけの神田より、にはそれだけの理由があった。必死のしがみ付きにも限界がきて、足を着いて1歩下がる。顔に掛かった髪を両手でぱっぱと払い、不機嫌が滲み出ている神田と向き合い。
「心配してるのに・・・」
「迷惑だ!」
どっか行けオーラをバシバシ受けつつ、は口を尖らせ、細々と気持ちを言った。しかし、神田には伝わらないのか、肩眉をピクリと上に上げ出た言葉は冷たくて、お前が行かないなら俺が出て行くと、振り去って行こうとした。
「うむーん。おかえりなさい」
去ろうとした神田のコートをギュッと掴み、引き止めた。冷たくされるのも構わない。迷った結果、この言葉しかなかった。そのために来たんだから
「これだけは・・迷惑でも言わせてね」
俯いたはそっと手を離し、悲しそう、でも、満足気だった。本当は一番に言いたい。けど、そうもいかないから、神田が来てくれればなんて、都合のいいことを言っていた。これでもいい。順番なんて関係ない。神田に直接、言えたらそれで
「お邪魔しました!」
クルッと90℃回転し、作り笑顔ならまだ良かったのに、ぎこちない笑顔を見せてしまって恥ずかしい。兎に角、この場から去ろうと足を大きく1歩だし、前に進めと自分に言い聞かせながら歩いていこうとした。
「っ!」
「・・・ただいま。聞かずに行くつもりか」
「なっ・・・」
まだ数歩しか歩いてないを、予想に反し、伸びてきた神田の腕が捕らえた。後ろから抱きしめられ、倒れ掛かるように神田の胸に落ち着く。耳に息が掛かる距離で神田の声がし、何がどうなっているのか、驚いたは目をパチクリさせた。しかし、神田は止まらず
「それと」
「ぅん・・・ぅ」
廻した腕はの顎を捕らえ、強引に後ろを向かせた。薄く開いた唇を塞ぐように、神田は自らのを押し当てる。驚き離れようとしたが、それは許されず、熱くて甘い時間が流れた。
離すタイミングを逃がした神田は、を抱き寄せたまま、立ち尽くしていた。すると、じっと珍しいものでも見るかのような目を向けられ、こっぱずかしさから腹が立ち。
「なんだ」
「天邪鬼って知ってる?」
「はぁ!」
「な、なんでもない」
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