ホットチョコレート



隊舎の自室で指折り数え、戸魂界では見かけることはまず、ない代物と睨めっこしているのは、十番隊所属・だった。今日はある日の前日で、任務で現世に下りたのが10日前だったから、何度数えても明日がある日に間違いなかった。



「あぁ〜・・・でも、どうしたらいいんだろ〜」



銀紙に包まれ、紙パッケージが巻かれている長方形で、厚さは5ミリ程度の板状の塊。つまり、板チョコを手に、は悩んでいた。話は、10日前に遡る。それは偶然だった。任務で現世に行ったのだが、そこである話を聞いてしまったから



「ねぇー14日どうするの?」
「チョコは、買うつもりだけど・・・」
「買うだけなの?買うなら告白しちゃいなさいよ」
「えぇ!だ、だって」
「普通に告白できないなら、バレンタインを使わずしてどうする!そのための日でしょ!」
「・・・・・・」
「まだ日はあるから、覚悟決めなさいね」



偶然。偶然、聞いてしまっただけの話。14日はチョコを渡して告白できる日。その話が本当か嘘か、恋に悩む少女を見て、は自分を重ねてしまった。同じ思いをして、告白できる日があるのならそうしたいと



「そこで・・・・・・止めとけばよかった」



後悔先に立たず。頭を抱え、自分のとった愚かな行動を嘆いた。その場の勢いから、任務で来ていたにも関らず、合間を縫い、義骸まで使ってチョコを買いに行ったのだった。大それたことをしてしまったが、戸魂界と現世では違うことに今更ながら気付き、チョコを渡したところでわかってもらえないと悟る。



「意味ないかも・・・・・・」



それに、リスクとチョコがつり合ってないのも、を凹ませる要因の1つであった。板チョコを、このまま渡したところで怒らせるだけと、この際、なかったことには、苦労を思うとしたくない。気持ちが纏らないまま、時だけが過ぎていく。





十番隊執務室。



「ひ、日番谷隊長!どうぞ!」



甘い香りが執務室に充満していた。その原因と、おもしき小さな白いカップを日番谷の机に置いたは、足早に部屋を出て行った。



「おぃ!」



鼻を押さえ、眉間に皺を増やした日番谷はを呼び止めようとしたが間に合わず、湯気のあがるカップを凝視した。鼻を突く、甘ったるい臭いに顔を歪める。



「嫌がらせ、か・・・」
「ホットチョコレートですね」
「チョ、チョコレート?俺はガキじゃねぇー!」



横から覗くように、松本が甘い物体の正体を明かした。チョコレートと聞き、嫌がらせは確定?子供扱いされたことに怒りが込み上げる。がそう思っていたのかと、内心ショックも少しあった。



「聞いたことありません?好きな男の子にチョコレートをあげる風習」
「好きなっ・・・・・・」



日番谷の変化に気付いたのか、笑みを堪えて松本は要点を述べた。聞いたときの驚いた顔に、もう心配はないと離れ、あんな日番谷を見るのは初めてと、噴出しそうになるのを必死で堪え、状況を見守る。



「こんな原液飲めるか!たくっ、
紛らわしいことしやがって
「どこへ?」
、探してくる」
「どうぞごゆっくり」



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