三つ編み
護廷十三隊詰所どこかの廊下を、腰まである髪を三つ編みにし、十一番隊所属・はゆらりゆらりと歩いていた。三つ編みが揺れる背に、聞きなれた声が掛かった。
「!」
呼ばれたから、立ち止まり振り返る。一般的動作ではあるが、
ペシッ!
「あっ!」
「てめぇー…」
と三つ編みが見事顔面に直撃している同じ、十一番隊・阿散井恋次の2人には、特殊なことであった。ゆっくりと三つ編みが顔から落ちる。
「何度やりゃー気が済みやがる!」
「ご、ごめんなさい」
狼が兎に吠え掛かるような、今にも噛み付かん勢いで怒鳴った。この2人が顔を合わせれば、決まってこうなってしまう。肩を竦め、謝るの三つ編みを、縄でも引っ張るかのように掴むと引き寄せた。
「切っちまえって言ってるだろ」
「ぃっ…そんな、勝手です。恋次さんが避けないから」
「ほぅー、いつから俺にそんな口が利けるほど、お前は偉くなったんだ!」
髪の根元を押さえながら、微かな痛みに抗議を返す。が、気に喰わなかったのか、睨みを強め、の耳元でさらに怒鳴る。
「すみませんでした」
恋次の凄みに負け、涙目で謝るしかなかった。
「わかりゃいい。それにしても、引っ張るにはちょうどいいな」
「痛い!強く引っ張らないで下さい」
「悪かったよ」
気分を良くした恋次は、遊び半分で強く引っ張ってしまい、本当に痛がったに、慌てて手を離した。するりと落ちた髪に、名残惜しく手を軽く握る。戻った髪を撫でながら、は人質がいなくなった分、止めていたことを言うことにした。
「恋次さん。いつもわたしばっかり絡んで来ますよね」
「それが、なんだよ」
「もしかして……」
「な、なんだよ!」
俯き問うに、内心穏やかでない恋次は平静を装うも、さっきまでの張りが声から失われていた。近付くの核心に、隠しきれない焦りで手は汗ばみ、生唾を飲み構える。
「自分が三つ編み出来ないから、羨ましいんですね」
「はぁ?」
「だから絡んでたんでしょ?言ってくれれば、いつでも教えてあげますよ」
「・・……」
開いた口が塞がらない。あの流れで、この展開になることを、誰が予想できただろうか?ニッコリと勘違いしているに脱帽し、返す言葉のない恋次だった。それを見ていた同十一番隊・斑目一角と綾瀬川弓親。
「幼稚園児がいるね」
「阿散井…不憫だな」
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