2007年8月


8月18日  ねらい目 
私が寝ていると、突然我が子が泣き出した。
起きあがって
「あっち」
と例のポーズをとっている。
時計を見ると、明け方の5時。
休日の起床時間としては、私の中ではあり得ない時刻である。
しかし、泣いている我が子を前にしてそんなことは言っていられない。
眠い目をこすって我が子を抱っこし、家の中をウロウロと歩き回る。
しだいに我が子の要求はエスカレートし、「あっち」の指さす先は「外」となる。

ガチャリ

外に出てみた。
静かな朝である。
こんな時間に外に出ている人間など、なかなかお目にかかれない。
そんな中、ふと見ると、朝の光の中に立つ影があった。
梨園で働いているおじいちゃんである。
こんな朝早くから梨の収穫をしているのだ。
おじいちゃんの姿を我が子と二人でしばらくじ〜っとながめていた。
するとそのおじいちゃん、突然我々の方にやってきて、梨を2つ差し出した。

「これ、やるわ。」

「え、いいんですか?」

「ええよええよ、ちょっと虫に食われとるで売りモンにならんでな。」

見ても、虫に食われているところなどほんのわずかである。
私が虫ならば、これの5倍は食っていたことだろう。
これぐらいなら、虫に食われているなんてちっとも気にならない。
わたしたちは梨園のおじいちゃんにお礼を言って家の中へ戻った。
いつの間にか我が子の「あっち」もおさまっている。
私はいただいた梨を冷蔵庫に入れながらしみじみ思った。


我が子よ、泣くなら明日も5時に頼む。