気まぐれ日記

2006年3月


3月30日  目眩 
朝から猛烈な目眩に襲われた。
今までにも、何度も何度も目眩には悩まされている。
ここらできちんと耳鼻科で検査を受ける必要があるのではなかろうか。
そう思い、近所の耳鼻科を訪ねることにした。

目眩に襲われている真っ最中に車を運転するのはいかがなものかと思われたが、そんなことは言っていられない。
現在一人暮らしの身の上である。
行くしかあるまい。

ふらふらしながら車を走らせ始めたが、思いの外、運転に支障はない。
やはり緊張感と使命感で、目眩だって一時的におさえられるのだ。
なかなかやるじゃないか、自分。
この精神力は見直した。

さて、10人いたら10人全員が中止を叫ぶであろう、この危険極まりないドライブも終わりを迎えた。
目的地である耳鼻科に到着したのである。
駐車場に入ったのは良いが、不思議なことに、来院患者が一人もいないことに気がついた。
おかしなこともあるものだ。
この花粉症でにぎわいそうなこの時期に、患者が私一人とはなんだか申し訳ない。
ここはひとつ、ゆっくりと診察をしていただくとしよう。
そう思い、玄関を見るとひとつの表示が目に飛び込んできた。


本日休診


おいおいおい・・・。
よく考えたら、今日は木曜日である。
せっかくはるばるやってきたのに、これではどうしようもない。
休診とわかった途端、今までの緊張感も使命感もいっぺんに吹き飛んでしまったようで、すさまじい目眩が襲ってきた。
もう動けない。
もはや私には、携帯で実家の親父を呼ぶ力しか残されてはいなかった。


3月29日  お宮参り 
うちの子も、産まれてから111日目となった。
今日はお宮参り。
記念に写真屋さんへ行き、写真を撮った。
さすが写真屋さんはプロである。
ありとあらゆる小道具を使い、生後111日の赤ちゃんを笑わせようとする。

「オロロロロ・・・バァ」

・・・・・・うちの子は、その程度では笑わない。

「はぁい、こっち向いて〜」

・・・・・・うちの子は、その程度では向かない。

「お父さん、笑わせてみてください」

・・・・・・うちの子は、父の思い通りにはならぬのだ。

「えぇっと・・・・・・まぁいいです」


いいのか!?


3月19日  誘惑 
相棒とお買い物。
市内にあるデパートへ行った。
6階催事場に行くと、何やら催し物が。
「北海道大物産展」
まぁ、特に興味はないのだが、ちょっと覗いてみようと思い、足を運んでみた。

足を踏み入れると、いきなり目の前にソフトクリームが私をお出迎えしてくれている。
反射的に財布に手を伸ばしかけたが、ぐっと思いとどまった。
まぁ、特に興味はないのだから、このまま通り過ぎることに何の問題もない。

更に歩を進めると、おいしそうな焼きトウモロコシのにおいが私を誘う。
不覚にも腹が鳴ったが、大勢の人混みのおかげで誰にも聞こえなかったようである。
しかし、そんなことはどうでも良い。
まぁ、特に興味もないのだから。

会場を1周して帰ろうとしたとき、たこ焼きに似た「蝦夷焼き」なるものを発見した。
中には、ホタテやイカ、エビなどが入っている。
・・・・・・ま、まぁ、特に興味はないのだから、このまま立ち去ろうとしたその瞬間、売り場のおじさんに声をかけられた。

「そこのお兄さん、ひとつ試食しないかい?」

いただこう。
特に興味はないのだが・・・うん・・・うまいね、こりゃ。

「1パック500円だよ」

と、特に興味はないのだが・・・えぇと・・・その・・・北海道との友好の架け橋となるためにも、一ついただくとするか。


3月10日  どうにもならない 
自宅に戻ってきている赤ちゃんを抱っこしていた。
さっきまではベッドに寝かせていたのだが、泣き出したので抱っこしているのだ。

抱っこをしながら部屋の中をグルグル歩いていると、赤ちゃんも泣きやんでくる。
時折笑顔を見せたりもするので、もうこれで安心と思いベッドに寝かそうとすると、突然泣き出してしまう。
それはもう精密機械のごとく、ベッドに触れるか触れないかの距離で、火がついたかのように泣くのだ。
仕方がないのでまた抱っこして、グルグルと散歩をする。
しばらくすると泣きやんでくるので寝かそうとすると泣く。
また抱っこしてグルグル。
また寝かそうとすると泣く。
また抱っこしてグルグル。
また寝かそうとすると泣く。
これが半永久機関のごとく繰り返されるのだ。
私の手から赤ちゃんが手放されることはない。
ずーっと抱きっぱなしとなるのである。
普段ならばそれで良い。
しかし、今日だけはマズかった。
着ていたパジャマのズボンのゴムがゆるかったのだ。
グルグルと歩き回っているウチに、ズルズルとズボンがずり下がってくるのがわかる。
直したいのだが、私の手には赤ちゃんがいる。
手放すと泣く赤ちゃんが、である。
これでは手が使えない。
部屋の中をグルグル歩くと、私のズボンがズルズル下がっていく。
グルグル、ズルズル、グルグル、ズルズル・・・・・・。
これではまるで赤ちゃんを抱いた変質者である。
お願いだから、泣きやんで(T_T)


3月9日  とっさの一言 
英会話に通ってもう何年たつのだろうか。
考えるのもイヤになるぐらい上達しない。
今日も外国人講師さんが何やら流暢な英語で説明している。
同じレッスンを受けている仲間がウンウンとうなづいている。
遠い。
その仲間が遠く感じる。
あまりにも寂しいので、私も適当にウンウンとうなづいていると
「○○さん」
と突然その講師さんが私にふってきた。
予期せぬ出来事である。
私にふられても、今から何をすればいいのかさっぱりわかっていないのだ。
豆鉄砲を食らっている鳩を見たことはないが、もしそんな鳩がいたならばきっと今の私のような顔をしているに違いない。
しかしである。
さっきまで、うんうんと、わかったような顔をしてうなづいていたわけで、ここで「わかりません」などとは口が裂けても言えない。
言えば日本の恥である。
ここはひとつ、堂々と答えようではないか。

「Um・・・,Uh・・・,It’s a ・・・」

「ちがう!」

・・・ちっとも堂々ではなかった上に、一言のもとに否定されてしまった。
しかも日本語で。
言っても日本の恥になるのならば、潔く「わかりません」と言えば良かったと後悔しても後の祭りであった。
英会話教室で、英会話以外のことを学ぶ機会が多い今日この頃である。


3月3日  得意技 
赤ちゃんと相棒が家に泊まりに来た。
相棒の里から、週末だけこうやって泊まりに来るのである。
ふだんはあまり接する時間が長くないので、ここぞとばかりにスキンシップを図ろうとする私がいる。
抱いて抱いて抱きまくるのだ。
抱きぐせなんてなんのそのである。

最近、赤ちゃんは縦抱きがご希望である。
横抱きにすると、横抱きは時代遅れよと言わんばかりの勢いで泣くのだ。
よって縦抱きにしている時間が多くなっている。
しかし、ずっと縦抱きにしていると、赤ちゃんは良くても、こちらが飽きてくることがある。
そこで、赤ちゃんを縦に抱いたままちょっと仰け反らせ、一言。

「イナバウアー」

これが我が家のちょっとしたブームになっている。


3月2日  異文化コミュニケーション 
英会話は毎週木曜日である。
しかし、なぜか木曜日になると仕事が忙しくなり、欠席ということが多くなる。
今週もやはり会議が7時過ぎまであり、7時10分からのレッスンにはどう頑張っても間に合わないことになった。
非常に残念ではあるが、電話でレッスンの欠席を伝えねばならない。

数秒間、呼び出し音が鳴り、ガチャッと受話器を取る音が聞こえた。

「ハイ、モシモシ、コチラ、エイカイワノ○○デス」

受話器の向こうからは、たどたどしい日本語聞こえる。
どうやらマネージャーが不在で、外国人講師が電話に出た模様だ。
きっと向こうも日本語での電話応対にドキドキしているに違いない。
ここは英語で話しかけるにかぎる。

「Hello! This is ○○.」

「オォ、○○サン」

「Sorry,I’m very busy. Today,I can’t come ○○.」

「オシゴト、タイヘンネ。ガンバッテクダサイ」

「Next week, I try to go」

「ハイ、ワカリマシタ、サヨウナラ」

「See you」

こうして電話を切ったのだが、切った後でふと気づいた。
なぜ日本人である私が怪しい英語で会話をし、
なぜアメリカ人の彼が怪しい日本語で会話をせねばならぬのか。
きわめて不自然である。
これが異文化コミュニケーションなのか。
奥が深いゼ。