真夏の我慢大会

1997年夏、九州一周の旅をした。

昨年行った四国を「暑い」と表現するならば

今年の九州は「さらに暑い」と表現せねばならぬだろう。

南に行けば行くほど、繁っている植物まで南国の香りがする。

ホントに暑いのだ。

このクソ暑いのに、私は指宿で「砂風呂」に埋まってきた。

よく浜辺で首だけ出して埋まっている、浜辺の罰ゲームのようなアレである。

あれは血行が良くなり、とても気持ちが良いという噂であった。

が!! 「噂を信じちゃいけないよ」と歌った歌手はえらかった。

スコップで砂を一杯かけられた瞬間から、真夏の我慢大会の幕開けである。

たしかに血行が良くなっていることは手に取るように分かるのだが

こんな無理をして果たして体に良いのだろうかという不安がよぎる。

だいたい10分くらい埋まっているものだと聞かされていたので、時計とにらめっこして頑張っていたのだが

もはや気持ちが良いとか何とかいう次元の問題ではなくなってきた。

5分を過ぎたあたりで、私の限界が訪れた。

ガバッと起きあがる元気もなく、のそ〜っと起きあがった私は、シャワーを浴び、普通のお風呂に入った。

するとどうだろう。

何だか妙に気持ちが良い。

ひょっとしたら、これが砂風呂効果なのかもしれない。


ところで、私はこの指宿で二人の大学生に出会った。

すっかり意気投合して一緒に出かけた近所の盆踊り大会の会場で、彼らは将来の夢を熱く語りながら、たばこをプカプカふかしていた。

私は、彼らがそのたばこを地面にでも捨てて帰るのだろうと思っていた。

ところが、彼らは地面にこすりつけてたばこの火を消し

吸い殻を自分のポケットに入れて帰ったのである。

そういえば、彼らはスイカを食べた後も、タネをそのへんにまき散らさずに、ちゃんと手にとって、後でゴミ箱に捨てていた。

こういう人たちとの出会いは、自分を見直すきっかけを与えてくれる。

旅は、こうした出会いがあるからやめられないのである。