三重タイムズ平成11年11月5日号より転載 歴史認識の見直し機運高まる 久保憲一鈴鹿国際大学教授に聞く 史観の押し付けが問題  先人の功罪を正しく評価 −日本世論の会三重県支部は十年ほど前に設立されたそうですが、会の活動として、 マスコミの偏向した報道や戦後の歴史認識などを正すことを目的にしていると聞いて いますが。 久保−戦争で日本が連合国に負けたのは事実だが、ほかの国ではすぐに自国の歴史を 取り戻しています。しかし日本では戦勝国の史観になっています。いわゆる日本は悪 くて、駄目だという自虐史観ですね。どこの国でもこれまで侵略したり、侵略された りという歴史があります。なぜ日本だけが自分たちの先人はすべて悪いという考えを 持たなくてはならないのかと思います。戦争というのはどちらが一方的にいい悪いと いうことではないと思います。 −先人の功罪を正しく見つめるということですか。 久保−まったくその通りですね。 −三重県での取り組みですが、三重県人権センターを調査されたようですがどのよう な問題点がありましたか。 久保−市民運動家の山野世志満さんらと行きましたが、想像以上にひどいものでし た。人権センターといってもほとんどが部落問題で占められている。あとの二割ほど が反日、自虐史ですね。どういう子どもや日本人を育てようとしているのかと疑問に 感じるような施設です。このセンターで真面目に勉強する子どもがいたら、将来が本 当に心配になります。このような施設を公費で建設したこと自体疑問ですね。 −東京都が計画している平和祈念館問題と何か共通するものを感じたということです か。 久保−ほとんどオーバーラップすると思います。東京都議会の土屋議員は大学で一年 後輩ですが、彼の尽力で計画を凍結させました。人権センター問題はこれから監査請 求とか情報公開などで実態を明らかにしていきたいと思います。 −一方的な歴史観の押し付けをやめてほしいということですか。 久保−日本でありながらまるでアメリカ史観、中国史観ですね。 −日本の場合は戦後あまりにも功罪の罪を強調しすぎたということでしょうか。 久保−ある意味では日本人のよさかも知れませんね。素直というか、すぐにゴメンナ サイということですね。しかしこれは国際政治にはまったく通用しません。歴史観が しっかりしないことには政治も語れないし、外交も語れないです。基本的なスタンス の問題ですから。 −教育の問題にも関わってきますか。 久保−少なくとも台湾レベルにはなってほしいですね。「認識台湾」という新しい歴 史教科書が発行されてますが、日本の植民地時代の功罪をはっきりと記述していま す。内容的にはむしろ日本の植民地政策を評価している点が多いように思います。日 本の歴史家や教科書編纂者はこういう事実を認めるべきです。西洋の植民地化は愚民 政策といって現地の人を無学文盲にして経済搾取する。これに対して日本は同化政策 です。植林や水道、道路、鉄道などのインフラ整備をし、学校を作ってますね。大変 な投資をしてます。いまだに台湾や韓国、中国の教育制度の基本になっていますね。 −久保さんらの活動について、右翼的な動きとして警戒する声もあります。 久保−右とか左ではなく人一倍愛国心をもっているということです。日本人は二言目 には国際化というが、日本人としてのアイデンティティを持っているのかと疑問に思 います。いまや日本人は無国籍人ではないかとさえ思います。 −国際化といいながら実態は根なし草ということですか。 久保−自分の国のことも語れないようでは、外国人に相手にされません。日本が一番 きらいな人たちは誰かというと日本人なんですね。こんな国は世界中探してもないで しょう。本当に悲劇だと思います。東南アジアの大部分の国では日本を高く評価して います。マスコミはきちんと報道してほしいですね。 −事実は事実として冷静に検証し、報道すべきだということですね。 久保−例えば南京の大虐殺でも、三十万人という数字はどこから出てきたのかという ことです。戦争ですからゲリラと民間人を間違えて殺したケースはあると思います。 しかし市民を意図的に虐殺したという事実はないわけです。こういう問題では政治的 な背景を考えるのが妥当だと思います。 −日本世論の会は政治的な活動をするのかという疑問があります。 久保−市民運動ですから政治的な組織を作るようなことはしません。会といっても個 人の単なる集合体です。例えば国歌、国旗についても本来なら慣習法でいいんです ね。なんでも法律化するのは自分の首を絞めることになると思っています。とにかく 先人に対する感謝がないことには、日本の明るい未来はないと私は考えています。 −ありがとうございました。