『諸君!』2000・5月号より抜粋

三重教育界で何が起きているのか

新田均、松浦光修、浜田耕司、八木秀次



八木  それに関連して、最近起こった不可解な事件があります。鈴鹿国際大学(勝田吉太郎学長)の久保憲一教授が地元紙「三重タイムズ」での発言を「差別間題」とされて、学校法人享栄学園から懲戒処分として教授を解任され、事務職員を命じられました。久保教授側が地位保全の仮処分申請をするや今度は事務職員と教授との兼務を命ずるという、これまた奇妙な辞令が発せられたようですが、その問題の「差別発言」とは、県立の「人権センター」を訪れた感想を求められて、「想像以上にひどいものでした。人権センターといってもほとんどが部落問題で占められている。あとの二割ほどが反日自虐史ですね。どういう子供や日本人を育てようとしているのかと疑問に感じるような施設です。このセンターで真面目に勉強する子供がいたら、将来が本当に心配になります。このような施設を公費で建設したこと自体疑間ですね」というものでした。 大学側はこの発言をとらえたのです。懲戒理由として、「平成十一年十一月五日の三重タイムズ紙面で、鈴鹿国際大学教授の肩書において行った発言。これまでの講義方法等(東条英機に関する映画の鑑貫を強要するかのような指導等)。公的機関である三重県人権センターに対する誹講ともとられかねない発言などが、学園の名誉と品位を害し、生徒・学生の募集に悪影響を及ぼし、関係諸機関との信頼関係を著しく失墜させるものであった」と言っています。しかし、単純に考えてみて、これらが教授職解任に相当するほどの懲戒理由になるでしょうか。何れも個人の言論の自由、一大学教授としての学間の自由の範囲内のものです。

松浦  人権センターの展小物は同和問題が中心になっていますが、その中に二割ほど近現代史に関する展示があって、南京大虐殺のパネルに死者は二十万人から三十万人だったという時代錯誤の説明文があるので、久保教授はこちらにウエイトを置いていたように思います。当の人権センター内部では、教授の発言に一理あるとして話し合いが進んでいると報道されていたのに、どうしてこれが「解任」などという間題になるのか、まったくもって不思議でなりません。

八木 「三重タイムズ」(二月二十五日付)の記事によると、懲戒処分になる前に、大学問係者と教授の間で話し合いがあって、自主的な辞職を求めたといいます。その際、大学側は「三重県同和課の課長から先生の件で問い合わぜがあった」「たまたま三重県教職員組合(三教組)の役員に会った。そして久保先生のことを聞かれた」と、この間題が三教組や県同和課から指摘されたものだったと言っています。三教組は、大学側が自分たちの名前を出したことに対して、「まったく覚えがない。電話もしていないし、会ったこともない」と全面的に否定していますが、もし三教組側の言う通りだとしたら、これは大学当局の自作自演による同和問題への過剰反応と思われます。おそらく大学当局は、久保教授の発言が三教組や部落解放同盟を敵にまわし、それでなくても難しくなっている学生募集に影響があると考えて、大学の存続や関係者の保身のために、久保教授を人身御供にして解任したのでしょう。そこには何らかの外部の庄力があったのかもしれませんが、それにしても学長を含む大学当局の醜態ぶりは、これが報道されている通りだとするならぱ、あまりにもだらしない。これは戦前の滝川事件にも匹敵する、言論の自歯・学間の自由に対する大侵害事件です。

新田  実は、松浦先生と私のいる皇学館大学にも、このまま活動を続けると学生募集・教育実習・教員採用その他の就職に影響するぞという投書が送られてきました。しかし、それ以上に応援してくれる投書が多いのでまだまだ頑張るつもりですが……

松浦  まだ頑張るの?エライな(笑)私は早く静かな学究生活に戻りたいな。そうじゃないと「学究崩壌」しそうで・・・(笑)。

浜田  今までの三教組や学校現場の教員たちには子供が見えていなかったのではないでしょうか。本当に子供を中心に考えるならば、子供たちを指導する立場にある教師が、まず法律をきちんと守るように改革してから、現場がどうあるべきかという議論に入らなければいけないと思っています。


日本世論の会 三重県支部