SKY&TELESCOPEの記事の訳

反射望遠鏡における熱的影響について

                              ブライアン グリー(Bryan Greer)

◇ニュートン式望遠鏡における熱問題は、それらのは嬉しくない現実であり、考えたくないもんだいである。
我々の大部分は、室内と戸外の間にかなりの温度差異があり、夕暮れから夜明けまでの間に大きい温度差がある環境で暮らしている。

我々は、暖かい家の中から冷たい夜の空気の中に望遠鏡を持ち出した直後では、歯切れがよいイメージを得られないことを経験している。

スターテストは、ダンスし、歪められた星の回折パターン(熱による悪戯者仕事をしている秘密のサイン)を、示してくれる。

望遠鏡ユーザーとして、我々は、これを簡単に受け入れてしまっている、しかし、望遠鏡の鏡筒の内部で進行している現象を理解する事は、この熱問題を解決する最初のステップである。



◇「 反射望遠鏡キラー 」は?

 2、3 年前、私は、長焦点 ニュートン式望遠鏡を作るという教育的で、しかも謙虚にする経験をすることができた。

ゴールは、高品質の色収差のない屈折望遠鏡にせまるような非常に良像の得られる機器を作ることであった。

私の手製の 6 インチ f/10 鏡は、十分にテストされ、そして、全ての点において、それはほぼ完全であった。

長い焦点距離は、第2鏡支持金具の存在に起因するコントラストの損失を最小限にするために、小さい第2 鏡の使用を可能にし、そして、鏡筒、及び接眼装置は、周囲からの光を十分に、除去した。

この望遠鏡のファーストライト(最初に、見たもの)は、期待はずれであった。

イメージの質は、(多分 平均以上の)多くの検査によって精巧であるとされた。 しかし、高品質の屈折望遠鏡を使い慣れた私にとって微かな審美的品質には、欠けていた。

 ニュートン式望遠鏡の星像は、屈折望遠鏡のものと並べ比較したときに、屈折の星像ほど小さな点にならないとよく言われる。

暖かい6インチのパイレックス鏡のschlieren
(鏡の輪郭を点線で示した)


この画像は、優れた光学系であっても、熱の乱流による像への影響を明確に示している。
この画像の鏡と周囲の空気の温度差は、25Cであった。 境界層は、ほとんどの熱の転送の領域であり、波面ひずみを生ずる領域である。
これは極端な例であるかもしれないが、暖かい自動車や、家の中から取り出す場合、少しの間であってもこのような状態になることは容易に想像できる。


木星を最初に見た時は、像があまり安定していなかったが、惑星の円盤像は、私が期待していたより分散したイメージで、ソフトなエッジを持っている様に思えた。

スターテストの結果が私の鏡がかなり良く補正されていることが分かった、と同時に、同じ空の下の屈折望遠鏡と比較したとき、回折リングには、よりぎざぎざがあるように思われた。

高価な屈折望遠鏡のように機能するニュートン式反射望遠鏡を作るという私の夢は、実現しなかった。

私は、光が反射されるか、あるいは、屈折させられるかによる違いを気にするべきでないと考えた。

どうすれば私は完全な光学系を作ることができるのであろうか ?

私は、この望遠鏡(通常、屈折望遠鏡の右隣に置かれた)によって観察し続けた。その結果、私は、興味深い事実に注目した。

単に今までと同じ状態で、私のニュートン式望遠鏡は、本質的に屈折望遠鏡のものと同じ像を見せることがあった。

注意深いスターテストの結果、最終的に屈折望遠鏡が一般に示すのと同じ滑らかな回折リングを見ることができた。

私のニュートン式望遠鏡は、明らかにすばらしい像を見せることが可能であった、しかし、その理由はよく分からなかった ?

光学の理論は、夜毎に変わるものではない、にもかかわらず、この事実は、明らかに一時的なものであった。

私は、その原因を 1 つまで絞り込んだ。 :

それは、鏡筒内の熱的な不安定さだった。



熱力学 110番

何が鏡筒の中で進行しているかを理解するために、簡潔にいくつかの熱力学の基本を再検討する必要がある。

熱は、伝導、放射、及び、対流という 3 つのメカニズムのうちのどれによってでも伝達される。:

伝導は、物質を通過する熱エネルギー転送である。

あなたが金属スプーンの 一方の端を熱くするならば、熱がその長さに沿って流れるので、もう一方の端は、結局熱くなるであろう。

放射は、主として電磁波スペクトルの赤外線の部分における精力的な光によって移された熱である。

地球がこの方法において太陽からからのそのエネルギーの全てを得ている、こういった方が、直感的に最も分かりやすいメカニズムであるかもしれない 。

ニュートン式望遠鏡の場合、鏡は、主として対流によって冷える。

固体と動く流体の間での熱転送を除くと、対流は、伝導とほぼ同様である。

( 熱力学では、空気のようなガスは、流体であると考えられる。 )

ファンを使ったような強制的な気流なしでは、そのプロセスは、自然の対流と呼ばれる。

不幸なことに、自然の対流は、熱転送のための特に効果的なメカニズムではない。

あなたが、暖かい望遠鏡が冷える時間をいつも忍耐強く待ったならば、こういったことを議論する必要がない。

対流が起こるとき、常に鏡の表面と周囲の空気が接触するところに境界層が、いつでも存在する。

境界層は、どこで熱転送が行われるかということに関係し、それは、イメージ劣化の根源になる。

最も厳しい温度勾配は、そこに存在する。

鏡の温度が周囲の温度と異なるならば、境界層は、発生することになる。

暖かい空気は、冷たい空気よりその密度が濃密ではないので、光はより速く伝わる。 光は、異なった温度の空気の中を通過してくるので、入射光はその進路を変えさせられることになる。
望遠鏡をよく知らない人々は、少し暖かい空気 ( もしくは冷えた空気 ) が像の質へ大きな影響を与えることを知って驚く。これは、理解できる。結局、空気は目に見えない、そのためどの様にして、それがイメージに影響を及ぼすかである?

異る温度の気流は、鏡筒を通過する光の波面を変形させることによってそれらにダメージを与える。

完全な光学のシステムにおいては、全体の波面は、同じ瞬間に焦点面に届く。

しかしながら、暖かい空気は、その密度があまり濃密ではないので、光は、冷たい空気より僅かに速く暖かい空気の中を進む。

もし光が温度の異なる気団を通るならば、波面の異なる部分が、異なる時間に焦点面に届くであろう、-- 光は、屈折させられ、そして、波面は、歪められる。

摂氏の 1度の温度の増加は、光が1センチメートル進むごとに約 1/50 波長だけ波面を前進させるであろう。

これは、大したことがないように思われるかもしれない、しかし数度の温度勾配は自然においては一般的である。

その上、波面が鏡の表面で反射する場合、それは、2度境界面を通過することになり、これによる影響を2 倍にしている。

我々が見ることになる累積的な影響は、実に大きいかもしれない。

このプロセスの不明な部分は、その大部分が見えないことである。

スターテストは、手掛りを提供する、しかし、プロセスを現実的に視覚化することは、この方法ではできない。

望遠鏡の品質について、光学機器の表面の正確さについて論じることには多くの注意が必要である、実は、その熱行動に起因することの方が、大きいのである。

しかしながら、望遠鏡が熱均衡に達するためにかかる時間は、それを使用する上であるいは、その究極の性能にを発揮させる上でも大きい影響を与える。

Schlieren テストをする

◇鏡筒内の熱的影響を明らかにすることは、難しい。

schlierenテストの方法(schlieren は、ドイツ語の「筋」 )は、鏡面研磨者に既によく知られている フーコーテストによく似たものである。

明るい白い光は、大きい主鏡 へ向かう途中、細長いすきまを通過する、そして反射した光は、光源に返えってくる。

ナイフエッジは、戻ってくるビームの約 50 パーセントを封鎖するように、この反射した光の焦点に置かれる。

何も光を遮らないならば、テスト鏡は、一様に照らされる。

しかしながら、光の通過の妨害は、反射してくる光の強度を変化させる。

鏡が明るいか、暗くなるかどうかは、光がどちらにそれるかによって変わる。

schlieren テストは、非常に敏感である。

明るい光の経路に置かれた人間の手は、燃えているようにみえる、そして、 1 杯の熱いコーヒーは、 噴火している火山のようである !

あなたの目によって schlierenの影を見ることが十分に容易である、さらに、私は、次の研究のために動的な熱流を記録するためにディジタルビデオカメラを使った。

ディジタルの映像は、高品質の 1 つのフレームを抽出し、しかも、結果を定量化することが、容易である。

 (schlierenによる検査のフルモーションビデオを見ることは、望遠鏡筒の中で進行している現象を、直観的の明らかにするうえで有益である。

あなたは、私のホームページ(www .fpi-protostar.com/bgreer/)から私の schlierenテストの短いビデオクリップをダウンロードすることができる。 :

しかし、どの様に schlieren 影を解釈するかは、明白ではない。

どのような現象が関係して像の劣化として見えるのか ?

1に、schlieren検査とフーコー検査は、同様の感度であると認識されている、( 双方共1回の光の通過あるいは、一回反射された光円錐の光である) schlieren検査の単位は、鏡面の表面の誤差を測定するために使うものと単位である。

2つのテストの違いは、光源からの光にその本来の経路から分岐させていることにある。

フーコーテストは、それは、不完全な表面が可視光線を偏らすことを検査する。

この9枚のschlierenイメージは、6インチパイレックス鏡が冷える過程を示す。気流の特徴は、鏡の傾きに大きく影響される。望遠鏡が天頂(上の行の写真)に向けられるとき、混乱した気流が支配し、大部分の熱妨害は、高額経路の方向に留まる。地平線(下の行の写真)の近くに向ける場合は、より多くの層流を生み出す。外気が20℃冷たい環境鏡をおいてから、熱流は、最高3時間の間にわたって確認できた。

schlieren テストは、光が、温度勾配によって空中で屈折させられることを検査する。

どちらの方法でも、接眼レンズの像上の最終の影響は、同じである。

ガラスを磨くことによってできた欠陥によって引き起こされた影と同様な熱勾配に起因する影によって判断する事になる。

動く schlieren 影を進行中の一次的な像の揺れとして考えることは、正しい。

この写真は、2時間の間に写されたカラーschlierenテストの像です。冷却していく鏡の様々な段階の様子を示しています。色の違いは、光が境界層を通過する際に横方向に曲げられるずれの量に起因しています。赤い部分は、影響の少なかった部分、黄色及びグリーンの部分は、横方向への曲げられる程度が増加していることを示しています。横方向へのズレの情報から、部分的な(P-V)波面ひずみを計算することは、可能である。温度勾配(ΔT)が強い場合(上の列の画像)、一つの波の周辺のP-Vエラーは、黄色、そしてみどりの領域の近くで顕著である。鏡の温度が約1℃以内に冷えるまでの間に、一般的に1/2λから1/8λのひずみを生じる。最終のイメージは、鏡が平衡状態に近い状態まで冷えたことを示している。

影がほとんど完全に消滅した状態の時のみ、光学的に最大の性能を発揮することを保証できる。

時間の経過は、境界層を消去する様にはたらき、それが鏡の温度を均衡にするように変化するであろう。

鏡のサイズ、冷却ファンの使用、及び、ガラスと空気の間の最初の温度差異は、冷える時間に対して最も大きい影響を与えるファクタである。

 schlieren検査を実行するうえで知りたかったことは、小さな6インチパイレックス鏡で真の熱均衡に達するまでにどれくらい長くかかるかということである。

25C の温度差異の境界層を消滅するために、ほとんど2時間半の時間を要した !

 夜間温度が絶えず低下している実際の状態の下では、それは、更に長くかかるであろう。

このことは、望遠鏡によるいくらかの最も満足のいく観測が夜半以降発生したことで、説明できるかもしれない。

熱流のパターンを観察することは、興味深い、そしてそれらがどの様にして乱れた状態を発生させるか。

10フィート離れたところからの熱流のあえぎは、鏡の周辺での層流を崩壊させることができた。

一般に屋外の条件は、私の室内での検査において観察されたものより確かに、境界層を混乱した状態にする。

ピクチャへ色を加えること

白色光による schlieren テストは、多くのことを教えている、しかし、それは、質的な意味のみである。

影のパターンによって示される波面の異常を数値で示すことは、不可能である。

幸いにも、生じる誤差の定量化を可能にする schlierenテスト(カラー schlieren)のいくつかの基本的な変
化のパターンがある。

ナイフエッジの代りに、放射状に相称的な七色に彩色したフィルタが、焦点面に置かれる。

その本来の光の経路から離れて屈折させられる光は、フィルタの異なる色の部分を通過することになる。

星像テストは、急速な冷却の後本当によく影響を与える境界層の存在を明らかにする。 外側の回折リングにあるスパイク(矢印)は、冷めたい鏡か、大気の激動のいずれかによって引き起こされる。 暖かい鏡によって引き起こされたスパイクは、回折リングの外側にゆっくりと移動し、一時的に数秒間ほぼ静止しているように思われるであろう。

測定の後で、 波面の部分的な領域から 山から谷までの誤差を決定することは、可能である。

これらのカラー schlierenの像は、冷えていく異なった段階における鏡の典型的なひずみを示している。

予期されたように、ほとんどの悪い影響は、境界層に、強い温度勾配が存在するときにあらわれる。

左下で示された鏡が周囲の空気より7゜cあるいは8゜Cより暖かかったとき、温度勾配が、ただ強かっただけでなく、境界層の構造に、典型的な乱流を発生させていた。

これらのコンディションの下で、 ある値以上の波長では、鏡筒内の波面誤差は、異常ではなかった !

幸いにも、鏡は、この間に大量の熱を出している、しかし、この状況は、比較的短命である。

1時間以上観測している間、摂氏2度と5度の違いを見つけることは容易である、光(可視光波長である550ナノメーターを使って)の1/8波長以下から1/2波長を越える値まで、波面の歪みが変化するからである。

波面の歪みの形状は、境界層が薄層から成るか、もしくは、混乱した状態あるかどうかによって変わる。

それは、混じり合って起こり得、わずかな動揺でも、薄層から成る境界層を、激しい混乱の状態に陥れる。

私は、境界層の繊細な性質が、他のタイプの望遠鏡よりシーングの状態に、大きく左右される構造のニュートン式の評判の原因となっていると思う。

2.3分の間薄層から成る乱流の層を繰り返し見た後で、これがどの様に悪いシーングとして見えているか理解することができた。

屈折望遠鏡 、及び、密封したカタデプトリック望遠鏡は、そのような劇的な熱変化をしないであろう。

熱的な平衡状態 (1゜C 差未満 )の下で、波面歪みは、この 6 インチ鏡に対して約 1/10 波長より少ない。

この状態では、境界層は、完全に薄層から成り、そして、イメージの質を落とす作用は、ほとんどない。

この鏡が、平衡状態に達することができた時間で、更に大きい鏡を同様にすることは無理かもしれない。

夜の間ずっと平衡状態にならなかった 17 インチドブソニアンの例が、ある。

この望遠鏡は、冷却ファン(明らかに必要と思われる)がなかった。



熱問題の野外でのテスト

幸いにも、 ニュートン式望遠鏡の熱状態を診断するには、特別なことをほとんど知る必要がない。

10〜15の回折リングが見える状態まで星像の焦点をはずすと、回折リングを横断してゆっくりと這うように動く影の模様を見ることができる。
シーイングがよほど悪くない限り、これらの模様は、はるかに速く変化する大気のひずみの影響と区別できることができる。


スターテストは、最も微かな境界層の振る舞いの場合を除けば、他の全ての要素を確かめることは明らかである。

たいていの経験ある観察者は、( 強い温度勾配は、ゆっくりとひらひらするろうそく炎のように星の像を歪める、また、焦点内の惑星像が、像の一つの端から炎が発しているかのようにしばしば見えるなど)といったかなり暖かい鏡の影響による現象を知っている。

望遠鏡を暖かい環境から持ち出した場合、それはふつう約30 分程度で静まるけれども、場合によっては最高 1 時間続くこともあり得る。

言うまでもなく、そのようなコンディションの下で、あなたの望遠鏡は、その能力を発揮することはできない。

混乱した冷却の過程の後で、あなたの望遠鏡が熱的に均衡に達したと思わせることは、よくある。

しかしながら、境界層は、より判断するのが困難な薄層から成る構造を通常持つことが多い。

熱は、ガラスからまだ流れており、しかし、それは、整然とした形をとっている。

こういった擬似的な境界層の存在を検出することは、更に注意深い試験を必要とする。

あなたの望遠鏡の口径 ( インチで )の25x 〜50x の倍率での明るい星を使ったスターテストの結果、焦点がはずれるまでに約 5 つの回折リングを見ることができる。

鏡に明らかな量の球面収差があるならば、最もソフトな回折のリングの方に向かって 焦点がはずれるだろう。

周辺にゆっくりと移動するように思われる外側のリングにあるスパイクを捜しなさい。

それらは、2 、3 秒の間静止しているように思われるかもしれない。

大気の激動は、これらのスパイクを見るあなたの試みを挫折させるかもしれない、しかし、欠陥を引き起こした熱的なはるかに遅い運動は、それらの原因を究明する上でヒントになるだろう。

1秒の何分の1かの間大気の激動によって引き起こされたスパイクは、回折パターンの周辺にランダムに現れる。

いくらかの経験は、この点で助けとなる。

あなたがこの方法のスターテストを使う技術を身につけたならば、あなたは、すぐにあなたの望遠鏡が良い条件と悪い条件のどちらで使われているか知ることができるだろう。

もう一つの方法は、回折リングが10〜15見えるまで焦点をはずすことによって行う。

こういった現象による木星のシミュレート像は、いかにして熱的に引き起こされた波面の歪みがどうにどのように影響を及ぼすかを例証している。 山と谷が密接に隙間なく配置され小さなしわがよったのような波面(b)は、視野を横断して光をまき散らすであろう。 さらに広い幅のしわができたような激しく変化した波面(c)は、明るい対象の周辺で、炎のような輝きを見せる。全口径を横断してなめらかに変化する起伏をした波面(d)は、「クリーンな」像を生じさせるが、優れた細かい模様は、失われることになる。たいていの熱的な影響は、(c)と(d)のタイプであるが、ファンを回して温度差のある空気をかき混ぜれば、(b)のタイプに近づくだろう。 こういった効果を明らかにするために、これらのシミュレート像は、やや誇張されている。

空が不安定な状態ならば、あなたは、乱流のストリームが回折パターン ( 「コンベアーベルト 」と時折評される ) を横断して突進しているのを明瞭に見るであろう。

全体のパターンを研究し、そして、静止、もしくは、非常にゆっくり動くように思われる持続的なまだらになったパターンを捜しなさい。

上の方向、または、鏡筒の方向に漂うパターンに気付くであろう。

こういった影が多いパターンを見ることになるならば、鏡がまだ周囲の空気よりいくらか暖かいことの確実なサインである。

望遠鏡の主鏡の後ろにファンが付いているならば、星の焦点をはずしている間に、ファンを回したり止めたりしてみなさい。

スターテストの像が、ファンのオン、オフによって変わらないならば、これは、望遠鏡は真の平衡状態に達したという、良い兆候である。

特に、外の回折リングのサイズ及びスパイクの数に注意しなさい。

大きいニュートン式にとって、このテストは、ファンが空気を底の外側に導くより、ミラーの後ろに空気を直接導いている方が、最もよく機能するように思われる。

時折、ファンを回すことは、回折パターンが回転する「メリーゴーランド」のような運動を生み出すことになるであろう。

これは、鏡が熱をまだ出しているという確実なサインである。

温度勾配がなければ、空気の動きを目で見ることはないということを記憶していなさい。


像の品質への影響

数度の温度差による熱効果は、全ての望遠鏡に影響を及ぼす、しかし、ある種の光学系は、他のものより悪影響を受けやすい性質がある。

ニュートン式望遠鏡は、これらの問題に対して働くいくつかの要素を持っている。

反射望遠鏡における光波は、 主鏡から反射する前とその後の2度境界層を経て進む。

この往復旅行は、あらゆる 熱的に引き起こされる悪い影響を効果的に2 倍にする。

屈折望遠鏡の場合、光は、最も悪いエリアをほんの1度通過するだけである。

対物レンズの内側の表面に境界層が存在するであろう、しかし、それは、非常に静かな、安定した状態で存在する。

浮力は、この層をレンズの表面につり下げ続け、それをより均一にそして薄い状態に保ち続けるであろう。

大部分のニュートン式望遠鏡は、外界に開放されている。

それらは、一方が開いた堅固な筒、または、完全なオープントラス構造をしている。

このことは、気流が望遠鏡の周辺の微風として、または人々から直接筒に入ることができることを意味する。

体の熱が光の通過路に浮動しているならば、観察者の位置が、見ることに有害な効果を持たらす。

schlierenテストは、本当に微かな動揺した熱流がいかに容易に境界層を妨害し得るかを示している。

このように、ニュートン式は、いくらかの条件の下でよりさまざまなシーングの出現を経験する事になる。

屈折望遠鏡の好感を持てる他の要素は、光の円錐が屈折望遠鏡の対物レンズを離れるとすぐ、狭くなり始めることである。

熱妨害は、管壁に沿って集まる傾向がある。

暖かい空気は、上の筒壁に上昇し、そして、比較的冷たい空気は、底でたまる。

このように、屈折望遠鏡の中の光の経路は、大部分の熱的に混乱したエリアをさけることになる。


ファンを使うと望遠鏡が平衡状態に達するまでにどれくらいの時間が必要か。そして、その時間には、外気の温度が、夜の間にどのように変化するかが、大きく影響する。 
温度が2℃低下していたよく晴れた夜空の下に置かれた望遠鏡での温度変化の表である。 ファンで冷やされた鏡は、より速く冷えるばかりではなく注意深い測定時間の間中、周囲の温度と同じように変化した。


ニュートン式、及び、 catadioptric式望遠鏡の場合、鏡は筒の底に位置しており、そして、入射光の経路は、筒の壁と平行である。

光学の理論が予測するように、これらの 要素は、ニュートン式が機能することを妨げる方向に働く。

きまり文句「口径こそ勝因」(aperture wins)は、真であるべきであるが、それにも拘らず、温度が急速に低下している状態で、屈折望遠鏡が更に大きい反射望遠鏡を凌ぐ像を見せている事実を発見することは、珍しくない。

もちろん、屈折望遠鏡は、それら自身の熱問題を持っている。

アマチュア‐サイズの屈折望遠鏡の場合、冷却の最も一般の徴候は、「correction」の変化、または、球面収差である。

像が、整然としてきれいに見えるように思われるけれども、この収差は、非常に優れた像に悪い影響を及ぼす。

ここに望遠鏡の主鏡の周辺に少なくとも1インチのスペースを取ることが賢明であるということを示す証拠がある。
この左の例は、鏡筒が主鏡の端からわずか3/8インチに位置する場合である。上昇する熱流が光学経路に留まることが確認できる。
右の図の主鏡の上に置かれた鏡筒窓は、最初の冷却周期の間に乱れた熱妨害を除去するのに役立つ。 しかしながら、鏡筒窓は鏡が周囲の空気温度より2〜3℃程度の差であるときは、閉じるべきである。 それを開いたままにしておくことは、外部の微風及び他の原因により、イメージ劣化の増加になりうる境界層を形成させる原因になりうるからである。


非常に暖かい屈折望遠鏡は、対物レンズの前で荒れ狂う境界層を作り出す、しかし、それは、迅速に静まるだろう。

Catadioptric望遠鏡 ( シュミカセ 、マクストフ 等 )は、 密封した鏡筒という大きな差異があるが、ニュートン式と同じ弱さを持っている。

密封された鏡筒は、ほとんど影響を受けない薄い境界層を保持する。

密封した鏡筒の1 つの欠点は、一般的に、熱がゆっくりと鏡筒から逃れるので、均衡状態に達するのにより長い時間がかかることである。

境界層の構造に応じて、熱問題は、異なる過程で像の質に影響を及ぼす。

優れたディテイルをほとんど完全な状態に保存している光は、全体のフィールドを横断している間に、くしゃくしゃにされシートのような波面となり、光をまき散らす。

この種類のコントラスト損失は、強烈な光をおおい隠すことの特別な名前を与えられる。

全口径に達するような波面の歪みは、エッジを持ち、優しく曲げられ、かすんだ一枚の紙のようで、惑星の表面を低コントラストにする。

これらの極端な波面の歪みは、明るい星、及び、惑星のボケとしてあらわれる。

( もちろん、最も明瞭な空の下でさえも、ある量の明るい目標の周辺のかすみは、避けることができない。

それは、あなたの不完全な目の中へ四散することの結果である )

熱流は、ほとんどこれらのスケールで波面を歪める。

全口径を横断する厚さ、または、温度が滑らかに変わる薄い境界層は、最も優れた惑星のディテイルを生み出すであろう。

これは、最良のシーングのもとでしか見られないであろう。

荒れ狂う境界層は、その光路から離れた光のいくらかも歪め、焦点に導くであろう。

その結果、光は、視野を横断してまき散らされるあろう。


多くの療法以外の回復なし No cure, but many remedies 


ニュートン式 望遠鏡の所有者は、これらの調査結果によって過度に苦むべきでない。

実際、興奮している理由がある。

結局、問題を確認し、そして、理解することは、それを解決するうえで必要な最初のステップである。

境界層を完全に根絶することが不可能であるかもしれないが、有害な影響を最小限にする方法がある。

あなたがファンを使うならば、大きい改善は、可能である。

ファンは、大きいニュートン式望遠鏡にはありふれたものである、しかし、小さい反射望遠鏡であってそれらを使うことを考えるべきである。

ファンなしで、このテストに使われる 6 インチ鏡は、テストの2 時間以上後でも、まだ十分に冷えていない。

◇折り重なりながら何度も繰り返される熱の転移における強制的な対流は、鏡をより速く均衡状態にさせる。

空気の温度はたいてい夜の間切れ目なく低下しているので、観測している間( 特に大口径の望遠鏡の場合 )ずっとファンを切れ目なく動かすことは、望ましい。

これは、鏡、及び、空気の間の温度差を最小限に留めるためである。

ファンを着けた後で、ファンの振動によって振動問題がないか確かめるには、高い拡大で星の焦点の内外像を調査しなさい。

望遠鏡メーカーの間では、主鏡のエッジと筒の間に少なくとも1インチの余裕を作るように筒を設計することがよい、という信念がある。

例えば、 8 インチ反射望遠鏡の場合、 少なくとも10インチ鏡筒を使うべきである。

これは、堅実なアドバイスである。

冷却の初期の間、鏡から発する混乱した流れは、鏡筒の上側の壁にそって集まり、光の経路に部分的に流失する。

左の写真の例において、望遠鏡筒は、鏡のエッジからわずか 10ミリメートルである、よって、光の経路の外に、混乱した熱流を保持するためには、明らかに不十分なスペースである。

オープンセル設計は、明らかにメリットがある。

schlieren イメージは、ある程度の熱転送が一次鏡の後部で行われることを示す。

実際、鏡が垂直な時 ( すなわち望遠鏡が地平線に向けられている状態 ) 、全ての熱の転移の 2 分の 1 は、後部境界層で行われる。

しかしながら、鏡の後ろの面が周囲の空気にさらされている状態におかれている時にのみ、これは、起こることができる。

鏡を木の堅固なディスクに接着することは、クールダウンの時間をさらに長くする結果になる、そして、周囲の温度が低下している間、温度差がより静的(擬似的な)な状態になるであろう。

もちろん、冷える時間は、鏡の質量に関係するであろう。

薄い鏡は、重みを十二分軽くする -- また、それらは、著しく速く冷える。

薄い鏡を生産し、サポートするのに必要な努力は、それなりに価値がある。

おそらく更に重要な事実は、薄い鏡は、低下している周囲の温度をよりに密接に追跡するであろう。

あなたがトラス構造の鏡筒、もしくは、 よりむき出し構造の望遠鏡を持っているならば、あなたは、適当な覆いを設置して観察するべきである。

これは、あなた自身の体の熱が光の経路に侵入することを防止するのを助けるであろう。

あなたが、鏡筒の風下に体を置くことが出来るかということである。

これらの教訓は、あなたが寒い環境で観察するとき、とりわけ重要である。

これらの対策として着けられたドワや鏡筒の窓は、あれば役に立つ、しかし、結果は、これらの効果がミックスされる。

鏡が平衡から離れた状態にあり、そして、急速に冷えているとき、鏡筒窓は、管の内側から暖かい空気を放出するのに役立つであろう。

これは、鏡筒の上の壁に沿って蓄積され、光の経路に侵入する混乱した暖かい空気に対して、とりわけ効果的 である。

しかしながら、いったん、境界層が薄層の状態にまで冷えたならば、鏡筒窓は、それほど効果はない。(それは、イメージを実際に傷つけ得る)

この状態の間、鏡筒窓を開いた状態にしておくことは、望遠鏡の外からの気流により境界層に、より悪い影響を与える結果になる。

これについての最も良いアドバイスは、あなたがもしこれを使いたいならば、鏡筒窓を閉じられるように作ることである。

材料を選択し、そして、熱的な結果を考慮して、設置しなさい。

光学系の他の部分の望遠鏡の部品も、同様に熱を蓄える。

鏡筒の他の部分に大きい質量を配置しなさい、さもないと、光の経路に暖かい波を侵入させることになるかもしれない。

Dobsonians は、主鏡の近くに重い釣合いおもりやバッテリを頻繁に使う。

可能であるならば、これらを、鏡筒の外に、設置すべきである。

schlieren テストは、進行中であり、そして、将来の調査は、ここで示された問題を更に詳細に理解することである。

私の夢は、変わらない。

私は、屈折望遠鏡と同じ性能をもち、しかも安い口径利点を持ったニュートン式を開発したいと考えている。

おそらく、「屈折望遠鏡キラー」は、まだ死んでいない。

Bryan Greer は、オハイオ州ワシントン在住の機械技師であり、 アマチュアの望遠鏡製作者である。

彼とは、 bgreer@ fpi-protostar.com で連絡する事ができる。

筆者は、 William  Herbert 、及び、 H.R.Suiter の支援に感謝する。

 
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