<会報くまの より>

 反射望遠鏡の能力をフルに発揮するには!


                                       畑中明利

☆ 初めに

 熱による影響については、田阪氏からよく聴かされ分かっているつもりだった。 というのも、肉眼で 観察して いる段階では1時間もドームをあけて放置しておけば十分であると思われた。
 事実よく見えた。しかし、CCDなどを使って、惑星写真を撮るようになっていろいろなことが分かってきた。
 2年前の3月頃、冷却CCD(ST−7)を使い、フォーカスモードで月の連続撮影していた時の ことだった、ピ  ントが合わないので苦労したあげく、なかば諦め、ピントの合っていない画像を眺めて いた、すると十数コマ に1コマくらい良くピントのあった画像が混じってくるのである。

 何もしないのに、1コマごとにピントが激しく変化するのである、ピント合わせに苦労していただけに、こ の事 実は驚きであった。 目で見る場合は連続的に光を蓄積しているが、写真やCCD(ビデオも含め て)などの 場合、断片的な 瞬間の連続である。
 写真やビデオの場合シーングの影響が大きいということである。
 肉眼の場合、画像を平均化して認識するこ とになるようである、(良きにつけ悪しきににつけ平均した画 像になる?)

  ☆ 疑 問

 それにしても、池村さんや宮崎さんの画像からはシーングがあまり感じられない、沖縄はシーングが良い ん  だ。という風に理解して納得していた。名古屋も都市であり、しかも平地だからあまり空気の動きがない のだ ろうなどと考えたりした。
 この分だと冬場など、まともな写真は撮れないことになるのだが、実際良い写真を撮っている。いったいこれ  は何?… 以前、池村さんが彗星(池村・ムルコス彗星)を見に来たときに、高倍率で恒星を見たとき、ピント があったときに見える十字の光のスポークの幅が真の星像の大きさであると言ったことがある。
 理論的にはそうだろうぐらいにしか考えていなかった。 ST−7を使った惑星のカラー画像をとろうとする場合 は、RGBの三種類のフィルターを使って得られた3種類の画像から合成することになるが、良いピントの画像 を選んでいるうちにどんどん時間が経ってしまい、短時間に3種類を撮影することが難しく、その間に木星など の場合自転してしまい、困難であると判断しビデオの映像から画像を合成する方法を考えてきた。

☆ビデオカメラを使って

 そして、この夏、PC98AS2が壊れ、新パソコン(ソーテック・PS−M260DV)を購入、デジタルビデオの映  像から1フレームずつ読み込み合成するという作業が可能になり早速やってみた。
 木星をSONYのデジタルビデオDCR−TRV9で撮影、その中から良く写っている部分(約1分)をキャプチャ  ーし(約120MB)、1フレームづつディスプレイ上で確認して良いものだけ静止画として取り込み合成した。
 まず困ったのが、ビデオモニターに比べ、コンピュータに取り込むと画像が暗いのである。 その為、かなり明 るく撮影し、コンピュータに取り込んだ画像の中から良い画像を探しているとき、気になったのは、フレームを  進めるたびに、木星の表面がグニャグニャになって波打つのである。
 これでは、どのフレームが模様の正確な位置を示しているのか分からないような状況であり、細かい画像を得 られるとはとても考えられないような状況でした。

☆S&T紙の記事の翻訳

 話はさかのぼるが、7月末“SKY&TELESCOPE”の九月号が届きパラパラ捲っていて、ある記事に目が止 まった。というのもゆがんだ星像テストの写真や見事な星像テストの写真、そしてシーングの違いによる木星 の見え方を示すような写真があったからである。
 といっても英文を読んですぐ解るはずもなく、全部で9ページにも及ぶ文章をどうするか考えたあげく、スキャ  ナー、OCRソフト、翻訳ソフトを使ってみた。 EPSONのスキャナーで読み、この画像を、読んでココというソ フトで文字に変換、EJマネージャというシャープのノートに付いていた翻訳ソフトで日本語に翻訳した。
 一番手こずったのは、画像から文字に変換する段階で、英文のスペースを、詰めて読んでしまったこと、そし  て、aとoとeを読み分けられない、thをmと読み間違えるなどといった現象のため、そのために、この修正に多 くの時間を要した。夏休み中だからできたことであると思う、といっても盆も暇さえあればコンピュータに向かっ ていた。翻訳も、短い文はほぼ完全に訳していたが、長く文章の複雑なものは、ほとんど訳になっていなかっ た。
 ちょうど、木星の撮影を始めた8月中旬頃、翻訳も核心的な部分になり、木星のクリヤーな像を得る上で の参考になった。

☆大きなヒント

 オハイオ州のアマチュア天文家ブライアン・グリーさんの記事には、
 ・ 鏡面の精度より、温度の影響の方が大きい。
 ・ 温度差のない空気の動きは、像に影響を与えない。
 ・ 17インチのドブソニアンは、一晩中熱的に平衡状態に達しなかった。
 ・ 鏡が冷える過程で、擬似的な平衡状態になる。
 ・ 真の平衡状態では、回折リングは、完全に静止する。

 といった内容が書かれていた。そして、大型望遠鏡には、冷却ファンが是非とも必要であると書かれていた。 実際、一晩中ドームをあけた状態にしておいても、恒星を使って星像テストをして見ると回折リングは不安定  な像をしていた。どうも木星像がグニャグニャ動く原因はこの熱的な影響らしい。

☆望遠鏡の改善

 そこで、記事にある通り主鏡セルの裏側に冷却ファンを装着した。そして、8月27日 夕方からドームを開け  っ放しにし、ファンを回した。この段階ではまだ回折リングは安定していなかったが、明け方3時30分ころ、再 びテストしてみると回折リングは、完全に安定していた。こんな像は、初めてで、早速、土星と木星を視野に入 れたが、その像は全く見事だった。
 特に肉眼で見るより、ビデオの画像によりその効果が現れていた。  ビデオ撮影のあと、アイピースをOr25 mmから、Or12.5mmにかえてみた、ややコントラストは落ちるが見え味は変わらない。  「ええい、まま  よ」とOr7mmを付ける、これで857倍、やはりクリアに見え、ピントはしっかりしている。ここまで来れば、行く とこまで行けという気持ちでOr4mmを付けた、これで1500倍、顕微鏡並の倍率、この倍率でも、依然として ピントはしっかりし、土星のカッシニは、全周に渡ってハッキリと見えていた。まるで目から鱗が落ちたようなも のだ。
 残念ながら、その後天候に恵まれず、九月の中旬までその後の観測ができていない。
 今後、冬に向かって、どれ位性能を発揮できるか、である。現在はファンを一つしか着けていないが、もう一つ 着ける必要があるかもしれない、用意だけはできているのですが・・・・・。

                            

    リポートページに戻る