ビリヤード

★ B級が知っていること A スロウ篇(2) ★

 前回、手球と的球の摩擦による変化(スロウ)について書きました。今回はその第二弾。手球のヒネリにより生じるスロウについてです。ヒネリはどうしても必要な技術、そのヒネリによって生じるスロウを理解しているといないとでは大きな違いです。

手球のヒネリによるスロウ

<図1> <図2>
 図1は的球に対して芯撞きで厚み100%に当てた瞬間の図です。前回紹介したスロウはこの場合生じ得ません。的球は矢印の方向に真っ直ぐ飛んでいきます。図2は左右のヒネリを加えたときの図です。手球に右ヒネリを加えたとき、的球は矢印Rの方向に飛びます。また、左ヒネリを加えたときは矢印Lの方向に飛んでいきます(手球のヒネリにより的球はズレて飛んでいきます)。

<図3>
 今度は的球の飛ばす方向を固定して考えてみましょう。少し見づらいですが、図3を見てください。手球を矢印の方向に飛ばしたい時、芯撞きであれば点線の場所に点線の方向から当てれば良いことは誰もが分かると思います。手球にヒネリが加わっているときは、図2の様に的球はズレて飛んでいきます。これから逆算して考えると、右ヒネリの時はRの場所に、左ヒネリの時はLの場所に当てれば、的球は矢印の方向に飛んでいくことが分かると思います(的球を飛ばす方向が同じでも、ヒネる方向によって当てる場所は違います)。

<図4>
 それでは具体例を見てみましょう。図4を見てください。ありがちな配置にありがちな出しですよね。逆押し(左上ヒネリ)で矢印Lのラインで手球を走らせる場合、芯押しでの厚みよりもやや薄目に狙う必要があります。そして、順引き(右下ヒネリ)で矢印R1orR2の様に手球を走らせる場合、芯押しの厚みよりもやや厚めに当てる必要があります。

 また、ヒネリの大きさによっても当てる位置はズレてきます。矢印R1とR2とを比べてみると、R2の方がより大きくヒネっているというのはお分かりかと思いますが、この時の方がより厚めに狙う必要があります(大きくヒネるときほどスロウは大きく生じます)。

<図5>
 図5はヒネリによるスロウを用いた入れの具体例です。2番が邪魔をして1番が入る厚みに当てることができません。芯撞きで点線のように当てるとコーナーの角に引っかかってしまいますが、このとき左をヒネっているとスロウで1番が矢印のように右に飛び、見事ポケットする事ができます。すなわち、厚みがない球もスロウを用いることにより無理矢理入れられる場合があるのです。もしもの時に覚えておきましょう。

<図6>
 図6の配置を見てください。ネキミスです。困りました。8番はコーナーポケットにごくわずかの振りがあるだけ。芯で押すと矢印Fのようになり、芯で引くと矢印Dの様なコースをたどります。これではどんな力加減で撞いても9番をポケットするのに都合の良いポジションへは持っていけません。「それならヒネリを加えて長クッションに入れて、反対側の短クッションに近づければ良いじゃん!」と思うでしょ? 実はその通りなんです。

 この場合、順押し(右上ヒネリ)と逆引き(左下ヒネリ)の2パターンが考えられるのは分かるかと思います。ここで手球のコースをイメージしてみましょう。ヒネリを知らないビギナーの人は別として、ヒネリ始めたC級の人やヒネリ慣れてないB級の人の中には、順押し(右上ヒネリ)で矢印FRのように進み、逆引き(左下ヒネリ)で矢印DLのように進むと考えている人がいるかも知れません。・・・が、これは間違いです。このコースを手球が走るとき、きっと8番はポケットされていません。

<図7> <図8>
 それでは8番がポケットされるようにヒネった場合、手球はどのように進むのでしょうか? その前にまず手球が8番に当たった瞬間を思い描いてみましょう。図3で説明したこと考慮すると図7のようになることが分かると思います。すなわち、順押し(右上ヒネリ)のときは赤色で示したイメージボール、逆引き(左下ヒネリ)のときは青色で示したイメージボールとなります。

 ここで注目して欲しいのは、ヒネる方向によって振りの大きさが変わっているということです。一般的に逆ヒネリの場合、薄目に狙わなくてはいけない=振りが大きくなります。逆に順ヒネリの時は振りが小さくなるため、例えば今回のシチュエーションでは手球もスクラッチしてしまう(or 角に引っかかる)ことになります。振りが小さくて困っている場合は、逆をヒネることによってより手球を走らせることができるのです(ヒネリによるスロウを用いて、ネキのためにない振りを無理矢理作ることもできます)。

 結局、今回の場合は図8のような手球の動きとなり、逆引き(左下ヒネリ)が正解だったと分かります。


★まとめ
 1.手球のヒネリにより的球はズレて飛んでいきます(スロウが生じます)
 2.的球を飛ばす方向が同じでも、ヒネる方向によって当てる場所(厚み)は変わってきます
 3.大きくヒネればヒネるほど、スロウはより大きく生じます
 4.ヒネリによるスロウを用いて、入れの厚みのない球を無理矢理入れることもできます
 5.ヒネリによるスロウを用いて、ネキのためにない振りを無理矢理作ることもできます


 ヒネリはネキストのために必要な技術です。しかし、それはクッションでの手球のコントロールのみに有用なのではなく、的球に対する影響(スロウ)を利用して、的球を入れたり、振りを作ったりすることもできます。すなわち、ヒネリによるスロウを理解していないということは、ヒネリを半分しか使えていないということでもあります。

 スロウを十分に理解することは、ビリヤードの上達の近道であることは間違いないと思います。がんばりましょう。


back
home