★ HOYTのFORMULAについて   
 
 HOYTのフォーミュラについては、先日来、画伯が入手しその性能からか、あるいはたまたまチューニングがぴったりあったのか、いままで「パラドックス」だと思っていた矢飛びが「まっすぐ」飛ぶようになって、その恩恵を十分に受けておられます。この点は大いに評価したいと思います。
 
 リム付け根の支点間距離を長くして、リムのパフォーマンスの向上を狙ったとされるこのモデル、この伸びた支点間がどの程度しなっているのか、どの程度矢飛びに貢献しているのか、見た目には全くわかりません。YAMAHAも以前は、この支点間のしなりを売り物にしていましたが、残念ながらハンドルのリムポケットの中(ブラックボックス)だったので、このしなりを確認することはできませんでした。
 
 仮に百歩譲って「しなっている」としましょう。ここがしなるということは、ハンドル側の先端部が摺動するということです。この摺動部の挙動がリムの精度の根幹になってしまいます。また、この支点間にあろうことかスタビライザー用のネジ穴のブッシングが入れてあるではありませんか。ここへスタビを装着すると「リムセーバー」の代わりになるという発想なのでしょうか。でも、リムが重くなるので、リムのパフォーマンスが落ちるのではないかと。そもそも素人目に見ても、しなる場所の中間点に穴をあけてブッシュを入れてリムの強度は大丈夫なの?・・・etc
 と、いうことは、この部分はしなっていない(しなってはいけない)のではないでしょうか。
 
 この弓の開発に当たっての問題点は、おそらく「ハンドルを軽量化するためにどこを削ろうか」という命題に対し、一番削れない部分がリムの接合部だったのではないかと。接合部は一番荷重がかかるためおいそれとは削れない。昔Avalonで失敗しているからなおさらです。
 これを大胆に敢行したのはPSEのX-Factorでした。これこそ接合部分でのテコの原理による荷重に対し極限まで削った状態なのでしょう。
 じゃ、HOYTが新しいモデルを開発するにあたり、強度を保ちつつ軽量化を図るための接合部の形状はどうしたらよいか?テコの支点と力点との距離を伸ばしてしまえば、この部分にかかる荷重を軽減することができるわけです。ということは「リムの接合形状ごと変えちゃえば簡単に解決できる。」のですが、そうすると事実上の世界規格の「ユニバーサル接合方式」を捨てなければならないのです。ところがHOYTは、自ら開発したユニバーサル接合方式を他社に互換を許したために、予想外に韓国製が台頭してしまったた現状があります。再び客の囲い込みを図るためには、「新規格」をつくることが簡便であることから、それもあいまって「ユニバーサル接合方式」を捨てる決断ができたのでしょう。
 
 このことから、「ハンドルの軽量化のために、リムの接合部の形状が変わりリムの不稼働部が長くなったが、既存モデルと互換性がなくなったため、客の囲い込みもできる。」とういことが、このモデルのコンセプトといったところでしょうか。
 
ところで・・・・
 先端技術の集大成のはずのアーチェリーで、その性能を表すのに抽象的な表現がよく使われます。今回のフォーミュラにしても、設計概念が語られているだけで、本質的なものが何も伝わってきません。
 各社の宣伝やユーザーレポートを見ていると「リムを引く堅さが、奥が柔らかい」「超高速リム」「サイトが上がる」「不良振動が・・・」だとか。ひどいのになると、単に「日本人に向いている」「高性能」「コストパフォーマンス」を連呼しているだけとか。よく健康食品の効能を宣伝するときの「ユーザーの体験談」的な表現も見られます。確かに最後はアーチャーのフィーリングなんでしょうけど。
 
 メーカーには、その性能を数値と映像で示してほしいものです。現代の技術を駆使すれば、精密な計測やハイスピードカメラを用いての撮影は簡単なはずです。それができないのは、新素材、新発想を謳った割に思ったような結果が得られないからではないでしょうか。それとも手詰まりを隠すための販売戦略なのかな。
 
 以上、いつも「チガウ!」と完全否定され続けているアーチャーの独り言でした。