戦国オーディオ 著者:ぶるくな10番!
「じぃ、なんじゃこの箱は、大きなマナコが付いておるぞよ。」
「殿、これは今はやりの電蓄が進化して機能が分化したものと思われる代物」
「昨日が文化?」
「機能が分化でございまする」
「最初からそうもうせ!」
「最初からそう申しておりまする」
「むむむ、ものども出会えーっ、打ち首じゃー!!じぃが謀反をたくらんでおるーっ」
「最初からはそう申しておりませんでした・・・・」
「そうであろう。素直に非を認めればよいのじゃ。殿は心が広いのじゃ」
「ははっ恐悦至極に存じまする」
「で、なんじゃこれは?」
「音声発信機、拡声器でございまする」
「嘘を申せ、これが喋るというのか」
「喋りまする」
「もし偽りであったら打ち首でよいか?」
「よいでございまする」
「それでは喋らせてみせよ」
「それにはアンプと呼ばれる増幅器とマイクと呼ばれる送話器が必要でございます」
「そうであったか、ではそれを用意せよ」
「それも舶来のものでございますゆえ・・・なにぶん・・・」
「ものどもーっ、出会えーっ」
「わかりました殿。しかしエレキテルな装置ゆえこの城の中ではどうやっても動きませぬ」
「どうするのじゃ?」
「我々が赴くのでございまする」
「いずこへ?」
「ささ、こちらでございます」
「なんじゃこの怪しげな洞窟は?まさかじぃ、殿をこのような場所に連れてきて何かよからぬことを考えているのではないじゃろうな?」
「なにをおっしゃいますか殿。実は例の喋る箱もココで手に入れたのでございます」
「なんと!土の層より出土したと申すのか?」
「さようでございます。ともに発見されました古門書によりますれば、『時は西暦2004年に世界規模の戦が勃発。街や村を瞬く間に焼き尽くす大砲玉が数十発も使われ、その後世界は白くなった』と記されておりまする。」
「世の中が白くなるというのは意味がわからんな、じぃ。」
「は、意味が分かりませぬ」
「しかしその時代のものがココに眠っておったと、そこで時間が止まったと、そう申すのじゃな?」
「さすがは殿、なんとも機転のきく御聡明さには感服いたしまする。」
「世辞はよい、ここに来れば例の箱が鳴るのじゃろう?」
「さようでございます。一足先にあちらに御用意しておきましたゆえ。ずいっと奥へ」
「おおっなんじゃこの、カラクリ達は。例の箱の大きな型のものまであるのじゃな。ん、なんとよむのじゃ W・E・S・T・M・I・N・S・T・E・R・R・O・Y・A・L・・・・・むむ、何が書いてあるのか分からぬな。じぃ、エレキテルはどこから取るのじゃ?」
「これでございまする」
「なんじゃ手で回すと申すのか?」
「さようでございまする。我らが増田家のカラクリ技術の粋を結集して作り出したエレキテル発生装置、ガリ電君一号(改)でございますぞ!それーっ」
「おおっ、エレキテル球に灯がともった。これは増幅器か。U・E・S・G・Iと記されておるが読めぬな」
「ささ殿、送話器に向かって何か御言葉を」
「あ、オホン、本日は晴天なり。おーっ、われの声があの箱から聴こえてくるぞよ」
「いかがでございますか殿、喋る箱の塩梅は?」
「よい、よい。これはよいものだ。この感動が下々の者まで味わえるように小型化と量産を急がせよ」
このあと、わずか10万石大名の小さな城下町に空前のカラオケブームが巻き起こったが、歴史上の事実としてはあまり知られなかった。
<おわり>
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