未来オーディオ 著者:ぶるくな10番!
しかし30年後のオーディオはどうなっちゃてるんでしょう。
実は昨日月極駐車場に停めて置いたタイムマシンでそっと覗いてきました。
内緒ですけどね。あまり乗ると酔っちゃうし、近所の人に知られると何かと厄介
ですから・・・。
まずCDは当たり前のようにないです。
そしてSACDもなかった。
つまり音楽や映像をディスクメディアで売り買いするという発想自体がないんです。
あらゆる音楽ならびに映像はネットでダウンロードされていました。
なんだ今とあんまり変っていないなと思ったんですが、パソコンはなくなっているし、
テレビもない!一体どうなっているのか?
あらゆるメディアは携帯端末(今でいう携帯電話)に淘汰されているようでした。
30年後には時計のように腕に巻けるほど小型化していましたが、それももう古い
型らしいです。今のはやりは指輪携帯だと現在はまだ生まれていない若い携帯ショップ
の従業員が。
さらに35年後には人間の目にコンタクトをはめるように装着するナノ端末が研究開発中
だとか。音はどうするのか。これもピアスより小さなスピーカーシートを耳たぶに装着。
無線でナノ端末から耳たぶシートへ伝達されるようです。
透過性にすぐれていてスタートアップしなければ端末を眼球につけたまま普通に日常生活
を送れるとか。街ゆく人達がなにげにサイバーな日常を送っています。
画面のスクロールは眼球網膜と連動して焦点移動を高速で演算しているということでしたが
もうめちゃくちゃなハイテク。ここまで行くと本当に35年後かと疑ってしまうほどです。
さて話はもどりますが、何故この携帯端末がパソコンやテレビにとって変るのか?
実はモニターは今のモニターという概念ではなく、小型の映写機(端末)が何も無い空間
に立体映像を投射するというもの。マウスもキーボードもなく全て音声認識。
街の人の声をボイスレコーダーで拾ってきました。
「スタートアップ!」
「インターネット!」
「タンノイ スペース 古美術」
「あの・・・・」
「は?」
「タンノイ、古美術って・・・」
「あぁ昔、音楽を鳴らしていた家庭用の箱型スピーカーのことですよ」
「え、タンノイってもうないんですか?」
「ありますよ。ほら映像が出てきた。」
「あぁこれはヨークミンスター!」
「ほぅ詳しいですね。こんなに古いスピーカーを。」
「古い・・・」
「オーディオという趣味を持っている人達がいまして。再生アートとか言って音を鳴らして
いるんですよ。もっとも、もう年寄りしかいないんですけどねそんな人達は。今はこんな
大きな箱いりませんよ」
「・・・何故ですか」
「最先端のオーディオ愛好家はカプセルに入って体中に音を浴びるように聴くんですよ
うーん、体感すると言ったほうがいいのかな」
「はぁ絶句です・・・・あのアンプとかSACDとか昔ありましたよねそういうの・・・」
「あぁSACDはないです・・・・。でもアンプはありますよ。デジタルのものですけどね。
それも昔のヤツのように大きくはありませんよ。ほら」
「あ、端末からホログラフィ。シガレットケースですか・・・違う、これは・・・・」
「デジタルアンプです」
「小さっ」
「ほらこのスロットにダウンロードした音源入りのハードディスクを直接差し込むんです。
デジタルデータが圧縮されてますからね。そのまま再生すると音が粗雑なんです。
若者が聴くような流行の音楽はそれでもいいんですが、私のような音楽好きには
耐えられません。ソニーが開発した圧縮還元用の高音質DDコンバーターがアンプに
積んであるんですよ。ネットでダウンロードしたデジタル音源をさらに高音質にする
ための演算チップです」
「ソニー?」
「ロリンズじゃありませんよ。ははは」
「・・・・・」
「どうしました?」
「いや、とにかく安心しました。オーディオの灯火はまだ消えていなかったと。」
「何時の時代も趣味人は居なくはなりませんよ。これから100年経っても
居るんじゃないですか?私とかあなたのようなもの好きが」
「え、まさか?」
「その通り。あなたと同じこの時間軸の人間ではありません。今から200年後の
世界からきた者好きの一人ですよ」
<おわり>
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