[戻る]
超短編三編
著者:ぶるくな10番!

 

夢の永久循環


「やりましたね、博士。」

「君のおかげだよ。学会から追放された私の実験によくここまで付き合ってくれた。感謝する。」

「なにを言ってるんですか博士。これで人類の食料難が回避できるんですよ。」

西暦2100年、世界の各地で大地震が立て続けに起り、地球規模での未曾有の食糧難が続いていた。
二人の研究は体内から排泄された老廃物を、再加工して栄養分を取りだし、もう一度体内に取り入れるという、まさに夢の永久循環装置の開発であった。

「あとは、永久ポンプを口と肛門に直結させれば完成だ。」

「はい。」

「それでは君、早速取り付けなさい。」

「いや、博士からどうぞ。」

「なにをいう、今まで頑張ってくれた君から使いたまえ。」

「この、世紀の大発明を私などが…博士から」

「君だ。」

「博士です。」

二人の勇気では世界を救うことができなかった。

おわり 

 

俺を見るな


「お…俺をそんな目で見るな。見るなっ!!」

無惨に切り裂かれた遺体の眼球に、叫ぶ男が映し出されていた。

「抵抗するから、おとなしくしていないから…俺のせいじゃない、 お前が悪いんだ。こうするしかなかったんだ。俺は…・俺は…」

震える手におさめられた鋭利な刃物からは、鮮血がしたたり落ちている。

誰かが後ろに居る気配がした。

「ん?なんだコラ、また刺身失敗してるじゃないか。いいわけしてる暇があったら早くかたずけろ、見習い。」

「はい…」

もうこれで、10回は惨殺した。

おわり 

 

発表会


「だめだめ、そんなことでは。審査員の目は年々厳しくなっているのよ。」

「だって、お母さんもう無理よ。私これ以上、立っていられない。 背中が痛いわ。」

「最後にそこに美しく立つ姿が重要なのよ。シャンとなさい。」

「もういい。モデルになんか、なれなくたっていいよ。」

「何を言っているの。お母さんと二代続く親子モデルになって、世間をあっと言わせるのよ。」

「もうやだ。」

「しょうがない子、わかったわ。ちょっと休憩しましょう。あそこの座布団の下に昨日、私が隠しておいた骨があるから、かじっていらっしゃい。」

「うん。」

ジャパン・ケンネル・クラブのドッグショウまで、あと1カ月を切っていた。

おわり