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GRFさんの音


レポーター:kks(2006.7.18更新)

Kitagawaさんの不思議の部屋を御暇したあと、再びGRFさんの車に。少し琵琶湖に近 づき限定20食のネギラーメンをご馳走になりました。ネギが山になっています。九条 ネギかなあ。緑の細切り。スープに浸すと綺麗に細麺の上に絨毯のように変身。ほの かな甘味がでています。チャーシューでなく煮豚が繊細さに彩りを加えます。文字通 りのアゴアシ付き、ごちそうさまでした。

食事が終わると豪雨も一段落。連休初日で午前中は大渋滞だったそうですが、夕方は 名神・東海北陸自動車道の一宮ジャンクション一ヶ所を除きとてもスムーズ。車の中 ではいろいろな話がつきません。飛鳥との関りを伺う時はもうドキドキでした。日本 でただ一機だけ作った(機体は二機作って一つは荷重試験で壊しちゃうはず)エンジン から全て自作の特別のジェット機の事です。まだ時間が必要なのかもしれませんが、 淡々とお話いただきました。詳しくはGRFさんのブログでお読み下さい。

 http://inakagrf.at.webry.info/200607/article_14.html

二度目の木曽川を渡る頃には夕暮れ。ちょうど前線の切れ間で東は黒い雲、西は雲の 切れ間から蒼穹がのぞけます。濃尾平野の広さを感じさせる空のドラマ。各務原の飛 行場でグライダーが土日に飛んでいることもミサイル基地があることも初めて教えて 頂きました。そして、県営のホッケー場もありナイターで試合をしている脇を通り GRFさんのお宅に着きました。ドアを開けた瞬間、懐かしい草のにおい。関東に移る までず〜っと慣れ親しんだ感触です。

帰宅後、こんな日記を見つけました。

 http://blog.so-net.ne.jp/glider-pilot/

沢山の写真のなかのどこかにGRFさんのお宅が写っているかもしれません。

オーディオルームは別棟です。GRFが鎮座している部屋だけで12畳。他にバックヤー ドとなる部分を考えると音の抜けていく(一室に溜まらない)よさの理由が12畳を大き く超える実質的な広さにあるのでしょう。また、リスニングポイントが後方の壁から 離れ部屋の2/3に位置していることもいい音を予感させます。

アンプが温まるまで、しばらく室内探検をさせて頂きました。Hi-Deeアンプのシャー シがとても綺麗です。サイドのRは芸術的かつちょっとエロティック。多くの真空管 アンプのシャーシで鉄の切断面が見えるのとは大違い。これまで、表面は塗りと思い 込んでいました。深めのアルマイト加工とは... 陽極酸化の後に硫酸ニッケル溶液で 処理なのでしょうか、実験室で遊ぶのとは異なり綺麗なことこの上なし。出力ターミ ナルにもほれぼれ。入力のRCAが削り出しテフロンベース... 伺うことが多すぎま す。

GRF(敬称略の時はタンノイのスピーカーです。お間違いなきよう _o_)は相対的に薄 めに見える玉石ベースの上にほんの少しだけ気持ち内向きに振られています。ピンク のケーブルがアクセントかなあ(^^/

211を意識して聴くのは今回が初めてです。私の常用のEL34が子供というよりも、赤 ん坊に見える位の存在感。なお、GRFは学生時代に浸るように聴かせてもらっていま す。その経験とは違う音楽が奏でられた夜です。

始めはGRFさんのプログラムに従ってCD。ベームの田園(DGG 1971年)からです。コン トラバスの大きさというか縦にでてくる様子が見えるのです。いいなあ。

すごくビックリしたのはGRFさんのお父さんのスイカ。甘い。これまで食べた中で一 番甘い。甘いといっても砂糖の甘味ではないのです。口にした瞬間ではなく舌にふれ るとジワーッと広がっていくのです。上手く言えないけど、小さい時にスイカに少し 塩を振って食べたことありませんか。一瞬塩の味がしてから甘くなる。その塩味がな くて甘さだけが気持ちよくゆっくりと広がるのです。二口目も、三口目もそれが味わ える。そして、口の周りが気持ちよく果汁に満たされいます。羨ましい位の贅沢。本 当の食べどきなのでしょう。

GRFさんと奥様はお茶かわりとスイカを勧めてくださいました。正直に言います。ス イカを食べている時は音も音楽も覚えていません。再度の御馳走様。

さて、スイカタイムの後はサラ・ボーン、ジェーン・モンハイト、ノラ・ジョーンズ と女性ボーカルへ。リアリティはやっぱりサラです。録音が良くてもルックスが良く ても心が熱いかどうかなのかなあ。

GRFさんのピアノではアルフレッド・ブレンデルが登場。モーツァルトK475とバッ ハ・イタリア組曲。私にとってブレンデルのバッハでの左手が抑え気味すぎることと 右手のスタカートが強過ぎる演奏なのでついつい口走ってしまいました。申し訳な い。音ではありません。好みです。ついでに告白してしまうとフリードリヒ・グルダ のイタリア組曲がピタリとハマっているのです。

1990年代のブレンデルならば、シューベルトの21番のソナタD960を一度輸入盤でお確 かめ下さい。お勧めします(と、後知恵。当日はいろいろと考えることがあり、浮か んで来ませんでした _o_ ) グルダのアナログならアッバード/WPOでのモーツァルト ピアノ協奏曲20番、21番の重量盤がDGGで再発されているのを見たことがあります。 ベーゼンドルファーのキラッとした様子が空気の中に散乱します。グルダ40代の録 音。頭のどこかにメモして下さると幸いです。

GRFさんはGRFの低音がボワッと残ることに注意しながら音作りを重ねられているので すね、きっと。15inchのもつ押し出しのトレードオフとして立ち下がりが悪くなるこ とを避けるために足下を固め、アンプの電源を固め、プリも排除しているように思い ました。そして、それが見事に結実しています。ちょっと聞きには極当たり前です。

でも、GRFを当たり前のように鳴らすって凄いことです。鳴らしているつもりで鳴ら させられていることが多いし、それに満足しちゃう場合が一般的ではないでしょう か?いわゆるタンノイではなく、BBCモニタの系譜につながるご先祖様に聴こえてきま した。

Hi-Deeアンプは大型のためか、実力を発揮するのに時間がかかるようにも感じまし た。ふつ〜の真空管アンプが20〜30分ならば、このアンプは1時間経ったあたりでジ ワ〜っと雰囲気が変わってくるのです。どこが違うか、それはボーカルが立っている かどうかあたりと見当をつけました。いいですねえ。シングル8Wという限界はまった く感じません。ppからfffまで滑らかだから自然なのでしょう。「オーディオです よ」っていう音でなくて音楽に入っていけるのです。爆音は求める世界が違います。 ナチュラルな余裕のある世界。スポットライトで浮き上がらせるのではなく、自然光 の柔らかな中でみる世界を感じました。

お約束のチェロ(もちろんデュプレ)をはさみ、シュバルツコップのシューベルト歌 曲、痛快なコープランド、カイルベルトのジークフリートの他にも沢山のCDをオー ディオ的に聴かせて頂きました。

今日の贅沢な体験からGRFさんの狙っているのが、オーケストラのコンサートホール 一階の中央通路のすぐ後ろの席で左右の真ん中ではないかと確信するようになりまし た。もちろん、その上に二階席があってはいけません。音楽が耳に入った後、体を通 り抜けていく快感がないとダメなのでしょう。指揮者の位置ではありません、間違い ない!! さて、折角のパイオニアP3は聴かせて頂けないのかなあ、と思う頃、メルトーンのピ ンプラグを差し替えブライヤー + ソフトン フォノイコライザーアンプ Model4(RCA の12AX7に変更済み )。

Kitagawaさんのところでも聴かせていただいたバイオリン協奏曲。弦の音は柔らかく なるし、ステージの奥行きと木管とくにオーボエのゾクッとする音が立ち昇るように なってきました。GRFさんはさほどおっしゃらないけど、僕はCDシステムよりもP3の アナログシステムの方がずっと気に入りました。もう少し細かい音が出ないかなあと 願っていると、30分を超えたあたりから変化の予兆。ソフトンのフォノイコライザー アンプは信号を入れた上でゆっくりと目覚め始めるタイプなのかもしれません。人間 なら遅刻してもゆっくりと足を踏みしめてグッグッと進んでいくような。ものの例え で目が覚めればすごく細かな音もスゥーっとでてきます。ピアニシシモで弾く時、演 奏家ははすごく緊張しています。弱いけどしっかりと、柔らかいけどはっきりとその 息遣いが伝わってきます。

圧巻はハチャトーリアンのバイオリン協奏曲(自作自演。メロディア盤で新世界レ コードの輸入。Vnはオイストラフ)。二人して「ハチャトーリアンの自作自演は別 物。例え小さなラジオでも伝わるものが違う」と意見一致。

クレンペラーのハイドン後期交響曲(DMMプレス)も聴かせてくださいました。アナロ グ全盛の頃にも輸入されず、私が入手したのは仏パテ盤だったはず。DMMはとても綺 麗です。ニッパー君もディスク中央で大きく印刷されていて豪華です。ここに天使が あるのは気に入りませんけどね(^^

GRFさんは、ネットワークが定まっていないことを気にされていました。確かにCDを 聞かせて頂いている時にはまだ煮詰まるまで何かがあるような予感がしました。で も、アナログなら私には満足です。SACDのプレーヤーとディスクに投資する分をLP購 入にまわした方が豊かな音楽のある生活が楽しめるのではないでしょうか。SACDの ディスクよりも、例え海外からのエイヤッという玉手箱的な購入であっても信頼でき る相手がいるならば、絶対にLPですよ。今のシステムなら。これで、ネットワークに 手が入ったらゾクゾクするような段階に入るのではないでしょうか。そのためにも ディスク集め。なんかKitagawaさんが乗移ってきたみたいですね。時間が経てば経つ ほどこのことは思いつきから確信に変わってきました。お節介な言葉かもしれませ ん。でも、心底そう思っております。参考の一つにして下されば幸いです。

さてさて、楽しい時間は駆け足で過ぎるものです。気がつけばシンデレラの門限間 近。24時門限の一泊5200円のホテルまで再び車で送って頂きました。ホテルのおばさ んは気さくですし、部屋はツインで広く気持ちよく眠ることができました。

GRFさん、丸一日おつきあい頂き本当にありがとうございました。これからも宜しく お願いします。Kitagawaさん、GRFさん、今度は私のところの音のチェックをお願い します。不遜にも頭に浮かんできたことは受け入れて下さる我が家の音のこと。
KitagawaさんがRogers LS-3/5a、GRFさんはHarbeth Monitor30かなって...

我が家のシステム、やっとオムツがとれた程度です。二階席の最前列中央を目指して おりますが道はまだまだ続きます(^^/

長々とお読みいただきありがとうございました。