久々のSaGa


エレノア「エレンじゃないの!?」
エレノアの声は辺りに大きく響いた。
エレンの耳にも当然届き、彼女は聞き覚えのある声の方を向く。
エレン「あっ・・・エレノアさん!?」
エレンも目を丸くする。
シュライクの酒場で会って以来の、久しぶりの再会であった。

エレノア「んでさ・・・何であなたが海賊のキャプテンなんぞになってるわけ?」
エレン「いや・・・そこん所は私にも良くわかんないんだぁ・・・ははっ。」
エレンはエレノアの酒癖の悪さを知っているため、酒場ではなく船の船長室に
案内した。
シェリルは船に弱いらしく、微弱な揺れで既に酔いを起こしている。
今はベッドの上で気持ち悪そうにうずくまっている。
マリア「この人、エレノアの知り合いなの?」
エレノア「うん。知り合ったのはこの世界じゃないけど・・・」
エレン「この人、別世界を信じてるの?」
エレノア「うん、まあ・・・理論はあながち外れてるわけでもないし・・・」
マリア「この人は、何処の世界にいたの?」
エレノア「私のもといた世界とも違う世界の・・・って、何で私ばっかり説明
     しなくちゃ行けないのさ。」
当然の義務である。
エレノアが二人の事を知っていて、二人は互いに面識が無いのだから。
エレノア「取り敢えず、あなたがどうしてここにいるのか教えてよ、エレン。」
海賊「姐さん、少しお話が・・・」
エレンがエレノアに促されて話をしようとすると、海賊の声がドア越しに聞こえ
る。エレンはちょっと待って、と視線で訴える。
エレン「何?あたし、今少し大切な話をしているのだけど。」
海賊「いえ・・・実は、エンリケ様が・・・」
どうにも向こうも深刻なようだ。
エレンも少し顔を顰めた。
エレン「・・・何?」
海賊「・・・実は、カンバーランドと全く手を切られたようです。」
マリア「!?」
エレンは話である程度世界情勢を知ったとはいえ、まだまだ身内の中では感覚に
疎い。エレノアは更に世情に疎い。
この世界に生きて、フォーファーに住んでいたマリアが、この事態を感じ取る
のに最も機であった。
マリア「カンバーランドが・・・フォーファーが、武装商船団と、手を切った
    ・・・ですって?」
フォーファーの権力者は自分の妹だ。
カンバーランドの決定は、ネラック、フォーファー、ダグラスのそれぞれの君主
たちが全員一致の態勢を取らなくては、重大指針を決定することは出来ないはず
だ。例え、新参者のアポロンが他の二つを抱えこんだとしても、自分の妹・・・
ソフィアだけは、姉である自分の言い付けを、忠実に守っているはずである。
それは即ち、「国にとって不利になることだけはしないこと」。
姉妹が引き離されてから、一度だけマリアは妹に接触する機会・・・
とはいえ、直接会ったわけではないが、彼女の心を伝える機会があった。
その時に、彼女は妹に君主たる上での心構えを託した。
そのうちの一つが、それである。
マリア「何で、こんなことを・・・」
考えられる事は一つだ。
妹ソフィアが、既に権力を失っているという事実。
エレン「・・・エンリケは?」
海賊「そろそろ、こちらへ戻ります。」
エレン「・・・コウメイはどうしてる?」
海賊「書斎で本を読みふけっていますけれど・・・」
エレン「ちょっと呼んで来て。エンリケが帰りしだい、少し会議を開くわ。」
海賊「アイアイサー!」
ともあれ、事態は急速に進み始めていた。
11/14/2001