不安のSaGa


兄の苦労など素知らぬモニカではあったが、知ったところで別に彼女が今の状況を
打破できるわけでもない。
つまり、完全な待ち状態である。

マミはついに暇を持て余したらしく、どこかに冒険に出かけたいなどと言い張り始めた。
サラ「ダメです。トーマスががんばっているのに、肝心なときに私たちがいない
   と、どうすればいいの?」
マミ「でも、トーマスだってかなり戦えるじゃん。」
魔王殿が近くにあり、そこへ行ってみたらどうだというユリアンの提案は、あっさ
りモニカに却下された。
モニカ「魔王殿は、怖いんです・・・」
どうやら、四人で行動するのは無理らしい。
仕方がないので、駄々をこねるマミと、サラが二人で魔王殿迄行ってくることになった。
かなりサラは渋い顔をしていたが、ユリアンはいざというときにモニカのおもりを
しなくては行けないし、サラ自身も何となく暇をつぶしたい気分になっていたのだ。
サラ「じゃあ、けがをしない程度に行ってきます・・・」
マミは得意満面の笑みを浮かべていた。

魔王殿は今は魔物の巣窟と化してはいるが、実際は大して強い魔物は生息していない。
何故なら、まだ若干日の光が射す所には、闇を糧として生きる魔物は生息できない
からである。
だから、魔王伝の比較的浅い階層にある宝はあらかた冒険者達が吸い尽くしてしまってはいるが、
奥の方にはまだまだ宝が眠っているように思われる。
確信はないが。
マミは、サラの言うことも聞かずに奥底まで進むつもりではあった。
とりあえず浅い階層に出るモンスター達は彼女にとっては相手にするのも煩わしい
ほど矮小な存在で、これなら部屋で寝ている方がいくらも暇つぶしになっているか
らであった。
しかし、ある瞬間に彼女は何かしらのテレパシーを感じた。
エスパーであるが故の感応波。
マミ「・・・サラ・・・」
サラは大分奥まで来ていることに気がついていたが、最早マミに関してはあきらめ
ていた。
こうなったら死なない程度につき合うか、という覚悟もしていた。
その矢先。
マミ「帰ろう。ここは、あたしたちが来るところじゃない。」
これには多少なりともサラもびっくりした。
はっきり言って大分奥とは言え、別にモンスターに苦戦しているわけでもないし、
道が解らなくなったというわけでもない。
マミ「まだ・・・あたし達は、ここに来ても仕方がないみたい・・・」
理由は後で話すから、と一言呟いたきり、マミは黙りこくってしまう。
サラはそんなマミの様子に一抹の不安を感じつつも、引き返した。
帰りの間、マミは一言も、喋らなかった。
マミ(・・・たしかに、あそこには何か強大なモノがある・・・)
漠然とした不安が、彼女を取り巻いていた。
11/07/2001