先行き不透明のSaGa


すったもんだの挙句、聖王廟に入る事は見送りとなった。
理由はサラによる。
サラ「何だか、天文学者の方が数日間非常に冷える事になりそうだから、
   君達は少しここから出たほうがいいといってましたけど。」
ランスのような北国の人間が「寒い」という感覚と、彼女らのような一般の
気候帯に住んでいるもの達が感じる「寒い」とはかなりかけ離れた感覚の違いが
ある。何しろ、ここに着て早々、モニカが「寒くて外には出られません」と言って、
コートを買いに行くのを見送ろうとしたときに、近くで「最近暖かいなぁ」
何て言う言葉が飛び出してきたのだ。
数日滞在していて、彼らはここの住んでいるもの達との感覚の差を嫌というほど思い知らされたのだ。
そんな彼らが「非常に冷える」など言うものだから、サラ達がここにとどまる理由はない。
ミカエル以前に、凍死してしまう。
実際、「この時期になると旅人が数人死んでいくんですよ」、などという余り
洒落にならないことを言われたりもした。
マミ「・・・聖王の指輪はもったいないけど・・・」
秘宝をみすみす逃がすのが彼女には心惜しかったが、仕方が無い。
ここにあると言う事を確認できただけで充分だ。
トーマス「・・・一度、フルブライト商会に戻って見ますか?」
サラとマミに、反対する理由はなかった。

フルブライト商会では、しかしその頃少しばかりマズイ自体に陥っていた。
ブライト「ああ、君達か・・・」
ユリアンとモニカには気が回っていないようだった。
ブライト「不味い所に来たな・・・」
フルブライトの顔は疲れ果てて憔悴していた。
トーマス「何があったのです?」
ブライト「ああ・・・我が栄光あるフルブライト商会が、ヤーマスのドフォーレ
     商会にのっとりを掛けられているのだ。」
トーマス「まさか・・・フルブライトは世界最高の商会でしょう?」
フルブライトの顔を見ている限り、嘘には見えない。
ブライト「・・・不覚を取った。
     奴らは、正攻法の手段で売買を進める集団じゃない。
     闇で得た金で、全てを勧めているのだ・・・」
トーマス「というと・・・」
ブライト「麻薬を始めとした、高額取引・・・
     それも、一般人だけじゃない。
     神王教団や、ピドナの貴族達、そして噂ではロアーヌの一部にまで
     出回っているという・・・」
神王教団という単語に、マミの目が鋭く光る。
そして、ロアーヌと言う単語にモニカは過敏に反応した。
モニカ「まさかっ!」
彼女は今は普通の町の人の姿をしているとはいえ、その容姿は通常の人のものでは無い。
フルブライトもその反応を見て、モニカが誰であるか人目で見ぬいた。
ブライト「・・・王女様、しかし、我々もいまは手詰まりなのです。」
モニカ「・・・わかっています・・・」
手が打てない状況下。
この様子ではロアーヌのほうからの手は心配はないが、それよりも・・・
トーマス「・・・わかりました。我々が何とかします。」
トーマスはフルブライトの心境を察した。
フルブライト商会は世界最高の商会だ。
その商会が表立って行動すれば、世界の財政事情が大きく変動してしまう。
ならば・・・
トーマス「我々が、新しい会社を立ち上げ、運営していきましょう。」
フルブライトの顔はまだ渋い顔だった。
ブライト「・・・奴らは中途半端な商才では太刀打ちできないぞ・・・」
トーマス「大丈夫です。」
ブライト「暴力にも訴えてくるぞ・・・」
トーマス「だから、我々がやるのです。」
ブライト「・・・はっきり言って、私は感心しないが・・・
     このまま手をこまねいている理由も無い。
     協力は出来ないが・・・やってみるがいい。」
トーマス「はい!」
そうして、トーマスは商売を始める事となった。
10/29/2001