母親の憎しみのSaGa


思い返せば、なぜ自分がフォーファーの領主などやっているのか。
血筋でいけば、確かに自分に繰るのは順当に思える。
しかし、自分よりも更に適任の人物がいる。
それは、姉だ。腹違いの。
姉の名前は、マリア。
彼女はソフィアが知る限りでは、恐らく最もプライドが高く、最も知識に長け、
そして、最も彼女の事を愛してくれていた人物。
彼女には自分にはない魅力と美しさが合った。
自分は今でも思っている。自分の知識は、世界のブレインのトップと言われるフォーファーの領主・・・
つまり、実質世界トップではない。
自分の姉が、トップなのだ。
しかし、姉はホーリーオーダーにはなれなかった。
理由は、馬鹿らしい・・・そう、この地がフォーファーであるからこそ馬鹿らしい理由だった。
それは、姉があまりに異端的なほどの天才だった事。
誰も、親ですら彼女を理解してくれなかった。
自分以外には。
姉は自分を理解してくれ、自分の姉を深く理解していた。
ソフィアには領主の地位も名声も要らない。姉と幸せに過ごしていければ良かっただけだったのに。
しかし、血筋は無残にも在ってはいけない別れを強いた。
自分は領主として、姉は一学生としての身分にはっきりとディバイドされたのだ。
それぞれの母のせいで。
ソフィアはこの世で最も自分を産んだ母を軽蔑して、憎んですらいた。
そして、同じに姉を産んだ母の事も。
父は自分を残して逝った。そもそも、父親はホーリーオーダーの血を汚さないような存在でしかなく、
恐らくソフィアのなかでは母が父を殺したのだろうという思いが在る。
母は非常に狡猾で、しかし頭が良く、自分勝手だった。
外面と内面とうまく使い分けをする、ソフィアにとって最も嫌いな人物の姿。
異や違う。母親の人物像その物、彼女を形作っている全ての要素一つ一つに嫌悪している・・・
そう、嫌いな物の集大成が母なのではない。母が持つものがそのまま
彼女の嫌いな物と道義なのだ。
姉マリアの母親も、もはや帰らぬ人となっている。
いや。恐らく在れも自分の母が殺したのだろう。
姉の母親と自分の母親はホーリーオーダーの血筋において遠い親戚では在ったが
、どちらも直縁に近い位置を保っており、血としては濃かった。
兄弟とも言えるほどに。
ただ、実質的なオーダーは自分の母が領主として働いていたのだ。
姉のの方の母親は、確か大学のどこかの学部長だったのか。
・・・
ソフィアは考えてみる。
母親は以前の領主だ。しかし、ホーリーオーダーはその血筋において最も優秀なものを
領主として祭り、担ぎ上げる。
前領主と直接の血筋である事は少ないわけではないが、それが常ではない。
母は、しかし、なぜ父と契りを結んだのか・・・?
08/08/2001