魔力炉のSaGa


マリア「部屋は、何時もきれいにしてるの。」
そう言って招き入れた部屋は非常に清潔感のある好ましい内装の部屋だった。
まるで、エレノアの部屋とは大違いである。
エレノア「うっ・・・」
マリアの住んでいる場所はフォーファーの外れにある、しかし一等地だ。
高級住宅街・・・ニュータウンのような物なのだろう。
シェリル「ここに、一人で?」
マリア「うん。住んでいるのは一人。でも、一応私大学の主席格だし、お金なら
    あるから・・・お手伝いさんとか雇ってはいるよ。」
エレノア「・・・地下に、何かあるわね・・・」
エレノアが感じたのは、地下から流れる何かの波動。
この波動は、恐らく魔力的なものだ。
マリア「さすが、良く気が付いたね。そう、この家の地下には大きな魔力炉が
    あるのよ。ちょっと用途表沙汰にはできない事の一つ。」
恐らく、この世界においてはこの技術は過ぎた物なのだろう。
エレノア「・・・今、戦争中なんだって?」
マリア「・・・だから、よ。」
魔力炉というのはエレノアも樹海においてそれらしいものを見たことがある。
現実のレベルで使われれば、彼女一人の力でフィニー王家に喧嘩を吹っかけても
らくらく制圧できるだろう兵器を作り出す出力は確保できる。
それが、彼女の研究の結論だった。
それ以上は、人知を超えた範疇は気がして。
シェリル「近い将来、でも、きっとこの装置をめぐって争いが起きるわ。
     その時・・・あなたは如何するの?」
シェリルの確信めいた言葉を、マリアはあっさりと肯定した。
マリア「そうだね。でもさ、あたしにとっては今、この装置が如何しても必要
    なんだよ。この装置は、あたしの、唯一の・・・」
慌てて、マリアは口を閉ざす。
マリア「う、ううん、何でもない!とりあえず、こっち来てよ!」
2人は、深く追求する事を止めた。


フォーファーの城において、現在会議が行われていた。
内容は、当然のごとく、戦争のこと。
会議に出席しているのはフォーファーの領主ソフィア、大学の学長、副学長、
その他研究機関のもろもろのブレイン達。
フォーファーの領主ソフィアは聡明で知識も豊富だったが、まだ若く、そして
お世辞にも美女とは言えない女性であった。代代フォーファーの領主を務める
ホーリーオーダーは美しさと行動力が伴っているのだが、彼女は少々そのどちらも
欠けていると言わざるを得なかった。
実質的に、発言力は大学の学長や大臣クラスの方が上なのだ。
大臣「で、いいですかな?ソフィア様。」
ソフィア「え、ええ・・・」
ソフィアは争い事が嫌いだった。戦争など、不本意なのだ。
大学での知識にしても、こんな人を殺し合うための研究などしたくないし、させたくない、
利用もされたくないのだ。
しかし、彼女が一番悔いたのは自分自身だ。
自分は、この会議において発言力がない。いや、そもそも資質がない。
確かに、知識は優れている自信はある。しかし、それだけだ。
ソフィア(・・・姉様・・・)
腹違いの姉の事を思い、彼女は心で哭いた。
08/07/2001